海外法規制情報の調べ方(EU編)
公開日:2024年7月15日 最終更新日:2024年11月12日
製品を海外に輸出するためには、各国の法規制に対応する必要があります。また、製品の輸出後も、法規制の制定や改定が行われますので、定期的に最新情報を確認しなければなりません。ここでは、目的に応じた法規制の調べ方を紹介します。
CEマーキング
製品のCEマーキングの大まかな流れを図1に示します。
大枠要求事項である指令または規則を選択し、その具体的検証ツールである整合規格を選択します。次に、モジュールと言われる適合性評価方式を決定し、適合性評価(試験実施のほか、リスクアセスメント等も必要)を行い、技術文書を作成します。これらを完了して、適合宣言書(DoC)を作成し、製品に「CE」のマークを貼り付けて出荷することができます。CEマーキングの制度は、製造者や輸入者が自ら適合を宣言して(自己宣言)、製品に「CE」マークを表示するものであって、第三者による認証ではありません。また、CEマーキングの対応後も、部品変更が生じた場合や規格の更新などにも対応する必要があります。
指令や規則の制定や改定(整合規格の変更を含む)は欧州官報(Official Journal of the European Union)で公示されます。また、整合規格リストは欧州委員会のHarmonised Standards(外部リンク)からサマリーを入手することができます。
1. 欧州官報を閲覧したい
EUR-Lex(外部リンク)は、欧州官報などが無料で公開されているEU法のデータベースです。 EUR-Lex(外部リンク)では、欧州官報の統合版だけでなく修正履歴も閲覧することができ、閲覧しているページが最新版であるかの確認は、図2の画面右側に表示されている日付で判断することができます。EUR-Lex(外部リンク)の各項目に関する説明は、国立国会図書館サーチ リサーチナビ(外部リンク)の解説を参考にしてください。
2. 整合規格リストを調べたい
欧州委員会のHarmonised Standards(外部リンク)で、整合規格リストのサマリー(Summary of reference of harmonized standards)のExcel版またはPDF版を入手することができます。また、Harmonised Standards(外部リンク)で、各指令や規則の欧州官報やガイダンス等も確認することができます。整合規格が改定された場合、適合性の確認が必要になる場合がありますので、CEマーキング対応後も整合規格を定期的に確認する必要があります。
MTEPの海外規格閲覧サービスで、すべてのBS EN規格をライブラリーサーバーで閲覧いただくことができます。また、一部の規格は邦訳版を所有していますので、是非ご利用ください。
参考情報:
- MTEP CEマーキングFAQ
Q23 規格の改定に気付きませんでした。どうすれば良いですか? - TIRI NEWS 2024年2月1日
CEマーキングで使用する整合規格(EN規格)の調べ方と規格番号が示す意味
3. CEマーキングの参考情報を入手したい
- CEマーキング他、海外法規制の解説テキストを公開しています。
海外の法規制に関する解説テキスト(MTEP) - CEマーキング43問、RoHS指令57問掲載しています。
海外の法規制に関するFAQ(MTEP) - CEマーキング実施の対策、手順、手続き、留意点などがまとめられています。
自己宣言のためのCEマーキング適合対策実務ガイドブック(EU)(外部リンク)(JETRO) - CEマーキングの概要が説明されています。
CEマーキングの概要:EU(外部リンク)(JETRO) - CEマーキングの製品規則の実施に関するガイドです。
Blue Guide 2022(外部リンク)(欧州委員会)
EU製品規則の実施に関する「ブルーガイド」2022(邦訳版)(外部リンク)(日本機械輸出組合) - RoHS指令のFAQはHarmonised Standards(外部リンク)のRestriction of the use of certain hazardous substances (RoHS)(外部リンク)のページではなく、下記のリンク先にあります。
Restriction of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment (RoHS)(外部リンク)(欧州委員会)
REACH規則
REACHとはRegistration(登録), Evaluation(評価), Authorisation(認可)and Restriction(制限)of Chemicals(化学物質)の頭文字をとった化学物質規制です。REACHは、化学品だけでなく、化学物質が含まれる可能性のあるさまざまな成形品にも適用されます。化学物質を安全に使用するためには、成形品の情報伝達が不可欠であるため、REACH規則に成形品中の物質に関する義務が規定されています。ここでは、成形品中の物質に関する義務への対応に関係する情報の調べ方を紹介します。
1. 成形品中の物質に関する義務
成形品中の物質に関する情報伝達:REACH規則33条
対象: 成形品の供給者
義務: CL物質(※1)が0.1重量%を超える量を含有する場合
→ 成形品の供給者への安全性に関する情報や物質名などの情報提供
成形品中の物質の通知:REACH規則7条(2)
対象:成形品の製造者、輸入業者
義務:CL物質が0.1重量%を超える量および1企業につき年間1トンを超える量を含む製品の場合
→ 欧州化学品庁(ECHA)に届出
また、廃棄物枠組み指令(WFD:Waste Framework Directive)に基づくSCIP(スキップ)登録 (※2)という義務もあります。
※1 Candidate List of substances of very high concern for Authorisationの略で「CLS」や「SVHC」とも呼ばれます。
※2 ECHAが策定するSVHC含有情報を登録するデータベースで、CL物質の濃度が0.1wt%を超える場合は、CL物質の含有情報を登録提供することが義務付けられています。
2. CL物質の調べ方
ECHA(外部リンク)のCandidate List of substances of very high concern for Authorisation(外部リンク)で最新のCL物質を調べることができます。
ECHA(外部リンク)のウェブサイト(トップページ)からは、「SEARCH FOR CHEMICALS」をマウスオーバーすると図3の画面が表示されますので、「Candidate List of substances of very high concern for Authorisation」を選択します。また、この画面から、認可物質リスト(Authorisation List)や制限物質(Substances Restricted under REACH)のページを開くことができます。
なお、CL物質は年2回(6月、12月頃)に追加されます。
また、NITE-CHRIP(外部リンク)(NITE化学物資総合情報提供システム)で、物質ごとの各国の法規制情報を調べることができます。日本語で検索できるので便利です。
3. chemSHERPA(外部リンク)(ケムシェルパ)
chemSHERPAは経済産業省主導で制作されたサプライチェーンにおける製品含有化学物質の情報伝達データ作成支援ツールです。chemSHERPAは化学物質規制の改正に伴ってアップデートされますので、自社の化学物質管理に大変有用なツールです。アーティクルマネージメント推進協議会(JAMP)(外部リンク)がFAQや各種ガイダンスを公開しています。
参考情報:
- chemSHERPA解説テキスト
chemSHERPAを使ってできること(MTEP)
4. REACH規則の参考情報を入手したい
- REACH規則の官報Regulation (EC) No 1907 / 2006
(欧州委員会の Harmonised Standard(外部リンク) のREACHから官報のページにリンクしています)
Harmonisd Standard- REACH(外部リンク) - REACH規則に関する各種ガイダンス(ECHA)
Guidance on REACH(外部リンク)
成形品に含まれる物質に関する要求事項のガイダンス Guidance on requirements for substances in articles(外部リンク) は、成形品中のCL物質の濃度計算などの解説があります。 - MTEP海外法規制に関する解説テキスト
海外法規制に関する解説テキスト:国別規格シリーズ「EU編」[PDF] - MTEP RoHS指令FAQ(RoHS指令との差異を中心に解説しています)
Q48 RoHS(II)指令の対象の電気・電子製品や部品などの成形品もREACH規則の対象になるのでしょうか?
Q49 RoHS(II)指令に対応した電気・電子機器は、 REACH規則にも対応しているといえるのでしょうか?
Q50 REACH規則もRoHS(II)指令のように、技術文書は必要ですか? - REACH規則の概要が詳しく述べられています。
REACH規則の基礎(外部リンク)(J-net21 中小企業ビジネス支援サイト) - REACH規則をはじめ、さまざまな海外法規制の情報や解説が公開されています。
環境関連情報(外部リンク)(一般社団法人日本バルブ工業会)
聞きたい 知りたい 世界のRoHS&REACH(外部リンク)(一般社団法人東京環境経営研究所)
化学物質管理(外部リンク)(一般社団法人日本電機工業会)
環境情報専門委員会(外部リンク)(一般社団法人日本半導体製造装置協会) - SCIPデータベースについて詳しく解説されています。
WFDに基づくSCIPデータベースとは(外部リンク)(一般社団法人日本バルブ工業会) - 化学物質管理関連情報のメールマガジンです。
NITEケミマガ(外部リンク)(独立行政法人製品評価技術基盤機構)
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免責事項
当解説は法規制に関する都産技研の見解等ではありません。関係機関発行の原文によりご判断ください。本解説の情報に基づいて行った行為により生じたいかなる結果に関しても、都産技研は責任を負いかねますのでご了承ください。
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