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海の中を「見える化」し海洋産業の課題解決に貢献する―製品開発支援ラボ入居企業 株式会社MizLinx様

公開日:2026年5月1日 最終更新日:2026年5月1日

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東京都立産業技術研究センター(以下、都産技研)では、入居企業が実験室・試験室として利用できる賃貸スペース「製品開発支援ラボ」を提供しています。化学実験室などの共有施設や都産技研の技術支援により、製品開発をスピードアップさせることが可能です。その活用例として、2025年に入居した株式会社MizLinxの野城 菜帆 代表取締役 CEOに、製品開発支援ラボでの活動やそのメリットについて話を聞きました。

「水中の監視カメラ」で海洋の課題を明らかにする

株式会社MizLinxは、「海洋×IoT」の分野で2021年に創業したベンチャー企業です。海中の状況をリアルタイムに把握するIoTシステムを開発し、得られたデータを水産業の効率化などに活かしています。

「当社が開発した海洋モニタリングシステム『MizLinx Monitor』は、筐体にカメラと各種センサーを搭載しています。海上に浮かべるだけで、水温や塩分濃度などのデータを取得するほか、カメラ映像をリアルタイムでクラウドに送信し、陸上から海中の様子を確認できます。電源は太陽光パネルから取得しており、数ヵ月にわたる安定稼働が可能です」(野城氏)
 

株式会社MizLinx 代表取締役 CEO 野城 菜帆 氏

これまで、監視カメラのようなもので海中の様子を確認することは技術的に難しく、漁業者や養殖事業者は長年の経験と勘から海中の課題に対応せざるを得ませんでした。MizLinx社では、カメラ映像とセンサーから得たデータを分析し、「海の中で何が起こっているか」を明らかにすることで、エビデンスに基づいた課題解決を可能にしています。

MizLinx Monitor

 

「よくご相談を受けるものに、海藻が消失して魚の住処が失われる『磯焼け』という現象があります。これまで原因究明が難しかったのですが、海中にカメラを設置すると海藻を食べ尽くしている魚などが映るんですね。海中の様子がわかれば、漁師さんも長年の経験を基に、次の一手を打つことができます。ただカメラを設置して終わりなのではなく、地域や事業者の方々と連携しながら、二人三脚で海洋の課題解決に取り組んでいます」(野城氏)

都産技研と自律型水中ロボットの共同研究を進める

MizLinx社は荒川区に本社を置き、2025年1月より都産技研の製品開発支援ラボを「開発拠点」として活用されています。

「東京都が運営するベンチャー向け施設の情報を収集するなかで、製品開発支援ラボの存在を知りました。当社はハードウェアとソフトウェアの双方を扱うため、一般的なオフィスを開発拠点とするのは難しく、機材搬入や機器利用のしやすさから製品開発支援ラボを選びました」(野城氏)

2025年9月には「クラウドと連携した5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業」に採択され、都産技研との共同研究も始まりました。

「共同研究では、狭い環境で使用する自律型水中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle、以下AUV)の開発をテーマとしています。岸壁に停泊した船の船底をAUVで検査し、フジツボなど付着生物の有無を、AIによる画像解析で明らかにすることを目的としたものです。生物の付着は、燃費悪化やCO2排出量増加を引き起こすだけでなく、外来種の持ち込みにもつながりますので、検査によって未然に防ぐことが重要になります」(野城氏)
 

AUVの試作品

共同研究はハードウェアの開発などをMizLinx社が、画像認識やデータ分析に関する支援を都産技研側が行い、システムの全体的な設計を議論しながら進めているといいます。

「水中では電波が通らないため、通信は音波で行います。岸壁付近のような狭い環境では音波が反射しやすく、通信の制御が難しいのです。水の流れも複雑になるため、機体の制御も困難になります。スラスター(モーター)やセンサーをどのように配置するか、制御プログラムをどのように作るかなど、都産技研と議論しながら進めています」(野城氏)

この共同研究について、取材後日に担当研究員にも話を聞きました。
「AUVの開発については、学ぶことが多い取り組みであると感じています。本開発は国際的な需要に加え、特に海洋国家である日本で展開が期待できる分野であり、その一翼を担えることに大きな可能性を感じています」(ロボット技術グループ 萩原 颯人 副主任研究員)

日本発の技術で世界中の海を豊かに

野城氏は、「ラボに入居することで都産技研との距離が近くなった」と話します。共同研究の打合せがスムーズに進められるほか、振動試験や環境試験といった試験の設計についても相談しやすいといいます。

「海上は日光をさえぎるものがないため、夏場は機器内部の温度が60度近くまで上昇します。また、寒冷地はバッテリーの性能が低下するほか、温度変化による結露も不具合の原因になりかねません。こうした厳しい環境に耐えうる機器をどう設計し、どう試験すべきなのか、相談がしやすいのは非常にありがたいですね。他にも、EMC(Electromagnetic Compatibility)試験に関するセミナーを受講するなど、製品化に向けた知見を得られる点もメリットに感じています」(野城氏)

「MizLinx Monitor」は既に静岡県やいわき市などに導入されています。また昨年12月には、野城氏が内閣府の日本成長戦略会議 海洋ワーキンググループの構成員に選任されており、海洋産業への取り組みをさらに加速させています。

MizLinx Monitor導入の様子

 

「日本は四方を海に囲まれた海洋国家です。にもかかわらず、水産業や洋上風力発電といった海洋産業は厳しい状況にあります。MizLinxの技術で日本の海洋産業を盛り上げ、ひいては世界中の海を豊かにするようなソリューションを展開できればと考えています。『海といえばMizLinx』と呼ばれるようなポジションを目指しています」(野城氏)
 


 

 

株式会社MizLinx
代表取締役 CEO 野城 菜帆

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