携帯圏外エリアでの遠隔監視を可能にする「LPWA通信インフラ機器」に関する共同研究
公開日:2026年5月15日 最終更新日:2026年5月15日

都産技研と株式会社フォレストシーは、2021年度から2022年度にかけて、携帯圏外エリアでも遠隔監視が可能なLPWA通信インフラ機器の公募型共同研究を行いました。獣害対策や防災対策など、地域の様々な社会課題を解決する取り組みは、どのように進められたのでしょうか。株式会社フォレストシー代表取締役 時田 義明 氏と、同社IoT通信事業部 部長代理 藤本 晶史 氏、都産技研IoT通信技術グループの櫻庭 彬 主任研究員に話を聞きました。
携帯圏外の山間部で無線通信ができるインフラを構築
株式会社フォレストシーは、LPWA(Low-Power Wide-Area Network、低消費電力で広範囲の通信が可能な無線通信技術)を用いた独自のIoT通信規格「GEO-WAVE」を活用し、携帯電話網の圏外でも通信可能なネットワークインフラの構築や、監視システムなどのプロダクトを提供する企業です。
「日本の国土は約7割が森林であり、携帯圏外のエリアが多く存在します。私たちは、LPWAという長距離通信かつ低消費電力に秀でた無線方式を用いた通信インフラを構築し、林業の見守りや河川の監視など、携帯圏外エリアにおけるさまざまな課題解決に取り組んでいます」(時田氏)

同社が本格的に通信事業に参画したのは獣害対策がきっかけでした。鹿やイノシシといった野生動物の獣害対策として、山中に罠を仕掛けた場合、動物が罠にかかったかを担当者が目視で確認する必要があったのです。既存の捕獲通知機は通信距離が十分でなく、山間部のより広いエリアで罠の状態を常時遠隔監視する仕組みが求められていました。
「LPWA通信を用いて罠の遠隔監視装置を開発した際、こうした見守りの仕組みは幅広い分野で必要だと考えたのです。登山客や林業従事者、山間部で暮らす高齢者、防災関連など、携帯圏外での見守り需要は多岐にわたります。そこでこの仕組みを拡張し、LPWAによる通信インフラづくりに本格的に取り組むこととしました」(時田氏)
こうして開発された「GEO-WAVE」は、見通し最大200 kmまで通信でき、中継機を介して携帯圏内の親機まで通信することで、山間部でのIoT通信を可能にしました。
共同研究により、通信機器の汎用性と拡張性を高める
同社は、獣害対策向けに開発した捕獲通知機に続く製品として、カメラを用いて獣害対策や防災対策に活用するLPWA通信対応の遠隔監視装置の開発に取り組んでいました。初期の試作機では、カメラユニットと通信ユニットが一体となり、ネットワークを通じて撮影画像を送信できる仕組みになっていました。しかし、これを獣害対策だけでなく防災などの用途に拡張するには、2つのユニットを分離させる必要があったといいます。

「たとえば河川の水位を監視する場合、初期の試作機は河川に向けてカメラを斜めに傾けると、アンテナも一緒に傾いてしまい、電波を送受信しにくい状態になっていました。また、通信強度を保つためには、なるべく高いところにアンテナを構えたいこともあり、カメラと通信のユニットを分離したいと考えたのです」(時田氏)
そこで、東京都の「中小企業の5G・IoT・ロボット普及促進事業」の公募型共同研究に応募し、2021年7月から1年間にわたり共同研究を行いました。
「さらに汎用性と拡張性を高めるべく、通信機側には各種センサーを接続できるようにしたいと考えました。単純にユニットを分離するのではなく、ほぼゼロから作り直しです。都産技研からは技術的な支援だけでなく、センサーの規格や市場ニーズなどもアドバイスいただきました」(藤本氏)

開発当時はコロナ禍による行動制限のため、都産技研が屋外での性能評価に立ち会えず、ビデオ通話でその様子を共有したこともあったといいます。
「どのような試験でLPWAの通信品質を評価するべきかわからなかったので、考え方や試験方法を助言いただいて非常に助かりました。都外にある工場の敷地内で試験をしたときは、櫻庭さんの提案をもとに、あえてアンテナの一部を外し、通信環境を悪化させて長距離通信の環境を模擬したこともありましたね。その後実地試験を行い、性能を満たすことを確かめました」(藤本氏)
防災や高齢者への見守りなど、地域の共通課題を解決したい
こうして汎用通信機器「GeoConnect」と遠隔監視用カメラ「GeoCam」が完成しました。


「GeoConnect」はカメラをはじめ、水位や土砂崩落といったセンサー類を有線接続することで、各種情報をLPWAで長距離送信します。これによって携帯圏外エリアで常時遠隔監視が可能になり、見回り負荷の軽減にも貢献します。
「共同研究終了後も、継続的な関係を維持するため、月1回のペースでフォローアップの機会を設けています。その中で、製品開発の進捗や売上などの状況について定期的に情報共有を行っています」(櫻庭)

今後の展望について時田氏は「『GeoConnect』と『GeoCam』を用いて、GEO-WAVEを防災や高齢者への見守りなどの地域の共通課題に活用したい」と話します。
「これまで山間部をカバーしていた3G回線は、2026年3月末までに終了しました。各携帯キャリアはエリアをカバーする手段として衛星通信を位置づけていますが、衛星通信は消費電力やコストの面から常時監視の用途に向いていないと考えています。自治体職員の人手不足を補う意味でも、高齢者見守りやアウトドアレジャーの安全確保などに、共同研究成果である「GeoConnect」と「GeoCam」を用いて、GEO-WAVEの活用範囲を広げられたらと考えています」(時田氏)
「弊社には、スマートフォンの専用アプリと連動して、携帯圏外でもテキストや位置情報など送受信できるGeoChatという端末があります。さらなる社会実装に結び付けるためにも、GeoChatのバージョンアップを図りたいと考えていますので、また機会があれば、再び都産技研の皆さんと共同研究でご一緒できればと思います」(藤本氏)

株式会社フォレストシー
代表取締役 時田 義明 氏
株式会社フォレストシー
IoT通信事業部 部長代理 藤本 晶史 氏
IoT通信技術グループ
主任研究員 櫻庭 彬
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