眼科手術用顕微鏡の開発で世界の眼科医療をリードする―製品開発支援ラボ入居企業 株式会社タカギセイコー様
公開日:2026年6月1日 最終更新日:2026年6月1日

東京都立産業技術研究センター(以下、都産技研)では、入居企業が実験室・試験室として利用できる賃貸スペース「製品開発支援ラボ」を提供しています。化学実験室などの共有施設をはじめ、都産技研の技術支援により、製品開発をスピードアップさせることが可能です。その活用例として、2024年に入居した株式会社タカギセイコー開発部次長 兼 手術システム開発課課長 矢花 佑介氏に、製品開発支援ラボでの活動やそのメリットについて話を聞きました。
長野から東京へ。競争力強化に向けて開発拠点を新設
株式会社タカギセイコーは、1955年に創業した眼科医療機器の専門メーカーです。手術用顕微鏡をはじめ、検査機器や視力検査表、診察用のテーブルなどを主力製品としており、世界80ヶ国以上の医療機関で導入されています。本社は長野県にあり、企画・設計から製造、販売、アフターサービスに至るまで、すべて自社で行う一貫体制を強みとしています。
同社は2024年6月に製品開発支援ラボへ入居しました。長野県外に開発拠点を置くのは初の試みであり、その背景には「競争力の強化」があったと矢花氏は話します。
「本社では、生産維持活動など開発以外の業務も日々発生します。そうした業務に開発者のリソースが割かれてしまうケースもあり、開発に特化した拠点を外部に設けることにしました。製品開発支援ラボなら、都内の企業や研究機関との技術創出もしやすく、試験設備の活用による開発スピード向上も期待できると考えました」(矢花氏)

また、首都圏での開発者人材確保も目的のひとつだったといいます。
「当社は長野県中野市に本社を置いています。2年ほど前から中途採用や新卒採用を強化しているのですが、地理的条件もあって現地採用が厳しい状況でした。製品開発支援ラボへの入居後はこちらで開発者を2名採用し、現在は長野からの単身赴任者も含め6名体制で開発にあたっています」(矢花氏)
手術用顕微鏡の開発に、技術相談や依頼試験をフル活用
同社は、製品開発支援ラボで新たな手術用顕微鏡の開発を行っています。近年、日本では高齢化の影響から眼科手術の難易度が高まっており、手術用顕微鏡に求められる機能も高度化しているといいます。また、医療従事者や患者の負担軽減も課題のひとつです。
「白内障の手術は15分程度で完了するため、症例数が多い施設では1日に30件近く手術を担当する眼科医もいます。一つ一つの手術をストレスなく終えるためにも、手術用顕微鏡には視野や操作性の品質向上が常に求められています。加えて、各国の医療法規も遵守しなければなりません。高機能化による付加価値の創出と、安全性や信頼性の担保との両立が、手術用顕微鏡開発の鍵となります」(矢花氏)

手術用顕微鏡には機械、電気、光学、ソフトウェアなどさまざまな分野の技術が内包されています。製品開発支援ラボに設けた開発拠点では、都産技研の複数部署に技術相談を行いながら開発を進めています。
「製品強度解析やモーター音の静音化についてご相談しました。 また、手術中の様子を4K映像や三次元映像で記録したいというニーズに応えるため、情報システム技術部で通信機器や放送機器の企業をご紹介いただきました」(矢花氏)
さらにEMC(Electromagnetic Compatibility)試験や非破壊検査などの依頼試験の利用も行っているといいます。
「これまでは、長野県や群馬県の工業試験場まで製品を持ち込んで試験をしていました。こちらのラボではそうした手間が省けますし、試験結果を踏まえて研究員の方々と設計や検証など、今後のことを相談できるので、非常に助かりますね。試験設備が身近にあることで、設計と検証のサイクルが早まり、品質向上にもつながっています」(矢花氏)
製品開発支援ラボから、世界の眼科医療の発展に貢献する
製品開発支援ラボへの入居は、情報収集の面でもメリットがあったと矢花氏は話します。都産技研が開催する技術セミナーや講習会の受講のほか、展示会での情報収集も積極的に行っています。
「産業交流展への継続的な参加を通じて、技術交流の機会を得ているほか、東京ビッグサイトや幕張メッセなどで開催される展示会にも頻繁に足を運んでいます。長野にいたころ、関東で開催される展示会への出張は1日仕事でしたが、入居後はフットワーク軽く情報収集ができるようになりましたね。現在は月1回程度長野本社に戻り、ノウハウや情報の共有を行っています」(矢花氏)
現在開発中の手術用顕微鏡は、各技術分野を専門とするメンバーがそれぞれ設計を担当しており、まもなく試作品の検証フェーズに入ります。引き続き、都産技研の設備や技術シーズを活用しながら、製品化に向けて開発を進めていく予定です。

「都内に開発拠点を置くことで、眼科医の先生や研究機関、企業とのアクセスも良くなり、顧客ニーズの発掘などもしやすくなりました。今後は試作品に対するフィードバックを反映しながら、さらに機能性や品質を高めた手術用顕微鏡を提供できればと考えています。眼科医療のインフラをつくる信頼のパートナーとして、世界の眼科医療の発展に貢献してまいります」(矢花氏)

株式会社タカギセイコー
開発部次長 兼 手術システム開発課課長
矢花 佑介 氏
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