支援事例紹介 本部, 生活工学センター(本部)

「動作音は自社従来品の半分以下」―ラウドネス評価が証明した電動鼻吸い器の静音性

公開日:2026年7月1日 最終更新日:2026年7月1日

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企業の課題

コンビ株式会社は、新たに開発したミスト付き電動鼻吸い器の動作音を、従来品より大幅に下げることには成功しましたが、「どれだけ静かであるか」を消費者へ客観的に伝える手段がありませんでした。また、自社の簡易騒音計は環境音に左右されるために精度不足でした。さらに、音圧レベルを表す単位「デシベル」(dB)では一般消費者に直感的に伝わらない印象がありました。

都産技研の支援


都産技研は、依頼試験において無響室を使った動作音測定を実施した際、研究員が「ラウドネス」(単位:sone)という心理音響評価量による評価を示した上で、実際の使用環境を想定した測定方法を提案し、デシベルとラウドネスの両方を取得しました。

成果


「動作音は自社従来品の半分以下」という裏付けのある表現を企業ウェブサイト・製品パッケージへ掲載しました。販売現場におけるお客さまとの体感の一致が受け入れを生み、初年度販売は好調です。また、静音評価の社内標準として定着しつつあります。

コンビ株式会社(以下、「コンビ」)はミスト付き電動鼻吸い器「NS13JP」(以下「本製品」)の動作音の軽減効果を消費者に客観的に示すため、都産技研の依頼試験を活用しました。今回は、コンビ株式会社マーケティング部企画室プロフェッショナルスタッフの池田 新氏、グローバルR&Dセンタージャパン主査の内田 武秀氏、都産技研生活工学センターの中村 史香研究員に、経緯と成果を聞きました。
なお、2026年4月に、都産技研は墨田支所と本部の光音技術部門を統合して、新たに「生活工学センター」を設置しました。生活工学センターは、視覚・聴覚・触覚・嗅覚など感覚の相互作用を活用し、人のウェルビーイング(心身の快適性)を実現する製品開発を多角的に支援します。

赤ちゃんを驚かせない—静音×吸引力を両立したコンビのミスト付き電動鼻吸い器

コンビは「育児をする人を支える、もうひとつの手」という製品づくりのコンセプトを掲げ、ベビーカーやチャイルドシートにとどまらず、赤ちゃんのケアをする用品(ケアカテゴリー)の開発・販売を続けてきました。ミスト付き電動鼻吸い器もそのひとつです。

ミスト付き電動鼻吸い器「NS13JP」

本製品は、赤ちゃんの鼻水を吸い取るための管理医療機器であり、ハンディ型の鼻吸い器です。製造先の技術力を活かしつつ、静音性と吸引力のバランスを高度に満たし、安全性にも最大限配慮された製品であると言います。 さらに、鼻水が固まって取りにくい状態に対応するため、ミストで鼻腔を湿らせてから吸引できる機構も搭載されています。

コンビには、以前から市場調査やモニター調査を通じて把握してきた課題がありました。「鼻吸い器の音が大きくて赤ちゃんが驚いてしまう」、という声です。2017年に発売した前機種でも静音性に注力していましたが、より進化をさせるため、本製品の企画開発に着手しました。

依頼試験で「ラウドネス」を測定—感覚的な静かさを数値で示す

コンビは、本製品が「静かになった」という手応えがあったものの、その違いを消費者に直感的に伝えることができる、わかりやすいデータがなかったと言います。

コンビ株式会社 マーケティング部企画室 プロフェッショナルスタッフ 池田 新 氏

「パッケージやウェブサイトで、従来品よりずっと静かになったことを強調して伝えたかったのです。お客さまに対して誠実であるためにも、コンプライアンスの観点からも、きちんとしたエビデンスが必要でした」(池田氏)

コンビ株式会社 グローバルR&Dセンタージャパン 主査 内田 武秀 氏

「自社の簡易騒音計で計測しても、本製品は動作音が非常に小さいため、周囲の環境音に大きく左右されてしまい、精度の高い測定ができませんでした」(内田氏)

さらに、別の問題もありました。音の大きさを示す指標としては「デシベル」(dB)を使うことが一般的ですが、コンビは、デシベルでは一般消費者に直感的に伝わらないと考えていました。

「例えば『静かな図書館と同じ大きさの音(デシベル)』という表現が消費者の心に本当に響くのか、社内でも長く議論になっていました。製品固有の公的な測定方法が設定されていないなか、どのように動作音を測ればいいのか、評価方法から相談できる機関が必要でした」(池田氏)

コンビは、かつて別製品で都産技研に相談した経緯もあり、「無響室」を持ち、試験方法の相談もできる都産技研に依頼試験を申し込みました。担当した生活工学センターの中村研究員は、まず、測定時の使用環境の整理から取り組みました。

生活工学センター 研究員 中村 史香

「本製品はハンディタイプで電池駆動し、手を伸ばして使うという製品特性を確認した上で、それに合った距離と複数の方向から測定することを提案しました。手で握ると音の値が変わってしまうため、クランプで固定し、モーター音に直接影響しない位置で挟むことで、使用時の実際の動作音が正確に測れるよう工夫しました。その上で、外部からの音の影響を極力排除し、壁面が音を吸収する構造を持つ無響室において、低ノイズマイクロフォンを用いて本製品の動作音を測定しました」(中村)

外部からの音を遮断し、室内壁面が音を吸収する構造となっている都産技研の無響室内部

そして今回の依頼試験の核心が、中村研究員が提案した「ラウドネス」(単位:sone)という、音の大きさを数値で表す心理音響評価量のひとつを使うことです。

「一般的な音の評価指標である『デシベル』は、基準値に対する比率を対数で表す単位のため、単純に割り算で『何%減った』と表現することができません。また、引き算で何デシベル減った、という表現は可能ですが、それが表す差は直感的ではありません。一方、『ラウドネス』は人が感じる音の大きさを表す指標であり、割合として直感的に比較できます」(中村)

つまりラウドネスは、値が半分になれば「音が半分になった」と正確に表現することが可能です。また、ラウドネスは国際規格(ISO 532-1:2017)に基づく計算方法が定められており、エビデンスとしての信頼性が高い指標です。

測定の結果、本製品の動作音をラウドネスで評価すると、従来品に対して「ほぼ半分程度」の値となりました。

「ラウドネスという指標を紹介された時に、これはインパクトが大きいと思いました。『従来品より音が半分になりました』と明確に表現できると聞いて、『これだ』という手応えを感じました」(池田氏)

「絶対値として比較できる点も魅力でした。後から再測定しても同じ基準で比較できますし、継続的な改善に使える指標だとも感じました」(内田氏)

こうして「動作音は自社従来品の半分以下」という表現が、コンビのウェブサイトと製品パッケージに掲載されることとなりました。
 

従来品と本製品(NS13JP)のラウドネス値(sone)を比較した棒グラフで、本製品の動作音は従来品の約半分であることを示している。
ラウドネス測定の結果グラフ

静音評価の新基準へ—ラウドネス評価を活用するコンビの展望

「動作音は自社従来品の半分以下」という客観的なデータを手に入れたことで、販売店さまやお客さまへの説明が変わりました。

「販売現場からは、お客さまに商品の音を聞いていただいた時に、『本当に半分ぐらいになっている』とおっしゃっていただけるようになったと聞いています。体感と数字が近いため、いっそう受け入れていただきやすいのだろうと考えています」(池田氏)

本製品は2025年3月に発売され、初年度の販売は好調でした。現在は販売店の拡大を進めています。

「ラウドネスという指標はまだ普及途上であり、知らない方も多いと感じています。コンビ様に実際にパッケージとウェブサイトで使っていただけたことは、ラウドネス評価の普及という観点からもありがたいことです。今後は、さらに多くの企業に取り入れていただければと思っています。新たに設置された生活工学センターとしても、こうした支援に注力していきたいと考えています」(中村)

池田氏は都産技研との連携についてこう語ります。

「専門的な知見と充実した設備に加えて、中村研究員に製品の特性をよく理解した上でアドバイスしていただけました。これは他の機関にはなかなかない価値です。依頼して良かったと思っています」

「動作音は半分以下」—その一言に込められた客観的なデータが、赤ちゃんを驚かせない製品への信頼を裏付けています。

 


プロフィール写真

 

コンビ株式会社
マーケティング部 企画室 プロフェッショナルスタッフ 池田 新 氏(中央)

コンビ株式会社
グローバルR&Dセンタージャパン 主査 内田 武秀 氏(右)

生活工学センター
研究員 中村 史香(左)

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