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太陽光パネル由来リサイクルガラスの板ガラス向け水平リサイクルを後押し

公開日:2026年8月3日 最終更新日:2026年8月3日

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企業の課題


太陽光パネルから回収したガラスは、表面に有機化合物が残存するため、板ガラスへの水平リサイクルが困難でした。株式会社浜田は、リサイクルガラス表面の残存有機化合物を大幅に削減する「ウォータージェット工法」を開発しましたが、その効果を客観的に確認できるデータと、試験を実施できる機関を必要としていました。

都産技研の支援


都産技研は、残存有機化合物量を評価するための強熱減量試験について技術相談を受け、ガラスに適した条件や方法を提案し、実施しました。JIS規格「JIS R 3420」の考え方を取り入れた試験方法を用いて測定し、客観的なデータを取得しました。

成果

 

残存有機化合物の量が20 ppm(重量の約0.002%)未満であることをデータで確認しました。このデータはガラスメーカーとの商談をはじめとして、板ガラスへの水平リサイクル拡大を後押ししています。
 

国内の太陽光発電の導入量は、2012年に導入された固定価格買取制度(FIT)(再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定めた価格で電力会社が一定期間買い取る制度)を契機に、年々増加しています。その結果太陽光パネルの廃棄物は、2030年代後半以降に顕著に増加し、排出量は年間最大50万トン程度に達すると見込まれています。(参考文献1)

産業廃棄物のリサイクルを手掛ける株式会社浜田(以下、浜田)は、2013年から太陽光パネルのリサイクルに取り組んできました。太陽光パネルからリサイクルを目的として回収されたガラス(以下、リサイクルガラス)の利用にあたっては、表面に残る有機化合物の除去が課題となっていました。そこで浜田は、有機化合物を除去するための「ウォータージェット工法」(高圧の水流でガラス表面に残る有機化合物を除去する技術)を開発しました。一方で、その効果を示すには、残存有機化合物の量を客観的に示すデータが必要でした。

その課題に対して、都産技研はガラスに適した強熱減量試験(加熱前後の重量差から、試料に含まれる燃焼性成分の量を評価する試験)の条件・方法を提案し、実施しました。その結果、「残存有機化合物の量は20 ppm未満」であることが確認されました。

今回は、株式会社浜田 技術開発部 部長の浪越 悠介 氏と、都産技研 材料技術グループ 宮宅 ゆみ子研究員に、お話を伺いました。

板ガラスへの水平リサイクル実現への課題―太陽光パネルから生まれた利人りひとガラス

浜田は創業以来、鉄スクラップのリサイクルを中心とした事業を行っており、1993年からは産業廃棄物処理へと事業を広げてきました。2013年からは、大量廃棄が見込まれる太陽光パネルのリサイクルの事業検討を行い、2015年には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト」に採択され、リサイクル技術の開発を進めてきました。

太陽光パネルのガラス分離工程の様子

浜田は、リサイクルガラスを板ガラス原料として再利用する水平リサイクル(使用済み製品を、同じ用途の製品原料として再利用すること)を目指していました。しかし、リサイクルガラスには、接着剤などの樹脂に由来する残存有機化合物が多く含まれてしまうという課題がありました。例えば一般社団法人板硝子協会(板ガラスに関する業界団体)では、ガラスカレット(リサイクルガラスを砕いて粒状・破片状にしたもの)における有機化合物の許容量について、「20 ppm未満」という基準を定めています(参考文献2)が、この基準を満たすことは容易ではなく、水平リサイクルの実現は難しい状況でした。そのため従来は、工業や園芸で使われるガラス砂、路盤材(道路の舗装の下に敷く基礎材料)、グラスウールなどへの活用が中心であり、用途の拡大が課題となっていました。
 

株式会社浜田 技術開発部 部長 浪越 悠介氏

「リサイクルガラスを手掛け始めた当初は、残存有機化合物の量はおよそ10,000から20,000 ppmほど含まれている状態であり、改善が進んだものでも4,000 ppm程度にとどまっていました。そのため、ガラスメーカーでの使用を検討してもらうのは難しい状況でした」(浪越氏)

残存有機化合物を取り除く際の課題は、表面の小さな溝に残ってしまうことでした。そこで浜田は、空港滑走路の清掃方法から着想を得て、水流で残存有機化合物を除去する「ウォータージェット工法」を開発しました。この工法を活用して、残存有機化合物の低減を図ったリサイクルガラスを製造し、「利人ガラス」(りひとガラス)と名付けました。

(左)ウォータージェット工法を行っていないリサイクルガラス
(右)利人ガラス

「残存有機化合物」を測る―JIS規格の考え方を取り入れた強熱減量試験

浜田は残存有機化合物が減少した利人ガラスを開発したものの、その効果を客観的に示すための評価が必要でした。

「『残存有機化合物が減少した』と感じていても、それを客観的に示せなければ、ガラスメーカーには『どんな評価方法なのか』と問われてしまいます」(浪越氏)

浜田は、評価を行うことができる試験機関を探す中で、2023年2月に都産技研へ相談を行いました。2023年4月からはオーダーメード型技術支援(現在は終了)を利用し、強熱減量試験を依頼しました。

都産技研で対応したのは、当時ガラス関連の技術支援を行っていた宮宅研究員でした。

材料技術グループ 研究員 宮宅 ゆみ子

「残存有機化合物の減少について客観性を示すために、JIS規格に応じた試験を実施することを検討しました。ただし、『板ガラスの強熱減量を評価すること』自体のJIS規格は存在しません(2026年8月公開時点)。そこでガラス繊維製品の試験方法を定めたJIS規格『JIS R 3420』のうち、強熱減量試験の考え方を取り入れました」(宮宅)

強熱減量試験を行う際は、リサイクルガラスの重量を計ったうえで、ガラス溶融電気炉で残存有機化合物が燃焼する温度まで加熱し、当初の重量と残った重量との差から、残存有機化合物の量を算出しました。宮宅研究員は測定の精度を高めるために、データに基づく検証を積み重ねたと振り返ります。 

ガラス溶融電気炉

「試験では、加熱や乾燥の後に計量する操作を繰り返して重量変化がなくなる『恒量』を見極める必要があります。ただし、室温や湿度のわずかな違いでも測定値は変動するため、恒量に達したかどうかの判断には慎重な確認が求められます。十分だと思われる段階からさらに確認を重ねるなど、根気のいる作業でした」(宮宅)

試験の結果、利人ガラスの残存有機化合物は20 ppm(重量の約0.002%)未満にまで除去されていることが確認できました。

ウォータージェット工法前のリサイクルガラスと、
ウォータージェット工法後(利人ガラス)の残存有機物量に関する測定グラフ

「強熱減量試験そのものは、専用の設備と知識を持つ担当者がいれば、実施ができると考えています。しかし重要なのは、その測定方法自体の信頼性です。第三者がJIS規格の考え方を取り入れた試験をしたことで、『どの機関がどのような方法で測定したか』が説明しやすくなりました」(浪越氏)

 

オーダーメード型技術支援

お客さまの開発段階(企画から販売促進まで)に応じて、技術的課題の解決をきめ細かく柔軟にサポートします。標準が存在しない品質評価など、定型の依頼試験では対応できない課題については、都産技研からお客さまへ支援内容を提案し、承諾を得た上で実施します。
オーダーメード型技術支援は2026年3月31日をもって終了しました。2026年度は、受託技術支援や課題解決型研修などの事業で同様の支援を行っています。

「利人ガラス」で板ガラスへの水平リサイクルを拡大

「残存有機化合物20 ppm未満」という客観的なデータは、ガラスメーカーとの商談を後押ししました。脱炭素への関心の高まりも追い風となり、利人ガラスを活用した板ガラスへの水平リサイクルが進行しています。

浜田は、より多くのリサイクルガラスを板ガラスへの水平リサイクルすることを見据えて、さらなる残存有機化合物除去や品質管理に取り組んでいます。例として、残存有機化合物量の標準的な分析手法の確立を、ガラスメーカーとともに進めています。また、リサイクルガラスの安全性について、正しい情報とともに丁寧に伝えていきたいと考えています。

都産技研の技術支援の活用を検討する企業に向けて、浪越氏はこう語ります。

「当初は手探りの状態で、何から相談すればよいのかもわかりませんでしたが、基礎的なところから説明していただきました。ハードルが高いと構えず、まずは相談してみることをおすすめします」(浪越氏)

宮宅研究員は、こうした支援の意義について次のように話します。

「良い製品ができたとき、その最後の一押しとして客観的なデータが必要になる場面は多いはずです。製品の性質を第三者の立場から証明することで、お客さまが導入や採用を決断する際の後押しになると考えています。そうした場面で、第三者機関として評価や検証に貢献できればと思います」(宮宅)


 

 


プロフィール写真

 

(右)株式会社浜田 O&M技術開発部 部長 浪越 悠介
(左)材料技術グループ 研究員 宮宅 ゆみ子

 

参考文献

  1. 第10回 産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会 合同会議 (外部リンク)
    資料1 太陽光パネルのリサイクル制度について(PDF)p1
  2. 塙 優:AGC株式会社―板ガラスリサイクルの現状と課題―,セラミックス,58(3),149-154(2023),p.151.

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