CEマーキングの対象でない製品は、何もせずにEUに輸出しても良いのでしょうか?
公開日:2023年5月15日 最終更新日:2024年11月11日
近年、オンラインマーケティングプレイスを通じて雑貨や日用品などを海外に販売することが一般的になっています。EUに製品を輸出する場合、雑貨や日用品などはCEマーキングの対象ではないからと言ってEUの規制や規格に適合しなくて良いわけではありません。ここでは、すべての消費者が利用する製品が対象となる一般製品安全指令(GPSD)について紹介します。
EUへの輸出製品の安全性
EUに製品を輸出するにあたり、CEマーキングの対応が必要な場合と必要でない場合があります。CEマーキングの対応が必要な製品例としては、玩具、一般向け電化製品、産業用機械製品、医療機器などがあります。電池駆動の電気電子機器(電卓や時計など)はRoHS指令2011/65/EU(外部リンク)の対象ですが、これらの製品安全性は低電圧指令などの特定の安全に関する法規制の対象ではないため、一般製品安全指令(GPSD:General Product Safety Directive)2001/95/EC(外部リンク)に適合する必要があります。CEマーキングの対象でない製品でも、それらの製品安全性はGPSDの対象となります。また、製品安全性以外に、製品含有化学物質への対応(REACH規則など)も必要です。
一般製品安全指令(GPSD)
GPSDは「すべての消費者が利用しうる製品」が対象です。CEマーキングが要求されるかどうかにかかわらず、顕著な安全上のリスクをもたらし得る製品すべてに対し、製造事業者や流通業者に安全性への義務が課されます。
- GPSDの対象例
家具、衣料品、宝飾品、日用品、アスレチック/トレーニング器具、自転車、ライター、レジャー用品、育児用品(ベビーキャリア、哺乳瓶など)、電池駆動の電気電子機器など
GPSDは、すでに流通している危険な製品の速やかな全面回収、リスクに関する消費者への警告、ならびにすでに販売された製品の回収を命令することができるとしています。この場合、「特定の製品のその領域内での販売や使用の禁止や制限を行った際、製造事業者や輸入業者、流通業者と合意した場合、欧州共同体緊急情報システム(RAPEX)を通じて欧州委員会に通知するものとする」としており、Safety Gate(外部リンク)で情報公開されます。
GPSD第3条(2)と(3)に、製品の安全性を担保するためのいくつかの手段が示されていますが、その1つめがGPSDの欧州規格であり欧州委員会のGeneral product safety(外部リンク)で調べることができます。
※GPSDのリファレンスは整合規格:Harmonised Standardsではなく、欧州規格:European Standardsとなっているため、本稿では欧州規格と称します。
なお、欧州委員会は、2021年7月にGPSD(一般製品安全指令)からGPSR(一般製品安全規則)へ、より規制を強化する改正案(外部リンク)を公表し、欧州議会で2022年11月に暫定的に合意(外部リンク)されています。消費者向け製品に対するサイバーセキュリティーやオンラインマーケットプレイスなどにも対応させ、より高いレベルでの消費者保護を目指すとしています。
一般製品安全指令(GPSD)と玩具安全指令(TSD)
子どもが使用する製品の安全性に関する法規制としては玩具安全指令(TSD:Toy Safety Directive)2009/48/EC(外部リンク)があり、CEマーキングが要求されます。玩具安全指令は、その対象製品が「限定的であるか否かにかかわらず、14歳未満の年齢の子どもが遊びの中で使用するよう設計された、または、それを意図した製品または材料」であり、玩具安全指令の安全要件は、世界で最も厳しいものの一つです。
子ども用変装コスチュームなどはTSDの対象ですが、それ以外の子ども服はGPSDの対象です。引き紐がある子ども服の場合は、GPSDの欧州規格 EN 14682「子ども服のコード紐・引き紐安全規格」が適用されます。EN 14682 はTSDの整合規格である EN 71-1「玩具の安全性」でも引用されていますが、子ども服自体はTSDの対象ではないため、EN 14682に適合させてもCEマーキングの表示(「CE」のシンボルマーク)を製品に貼り付けて上市することはできません。
また、文具においては、色鉛筆・フェルトペン・チョークなどはTSDの対象ですが、それ以外の一般向け文具はGPSDの対象となります。なお、TSDに該当するかどうかのグレーゾーン製品は多数あり、欧州委員会のToy Safety in the EU(外部リンク)にあるガイダンスにTSDの該当例が掲載されています。
MTEPの海外法規制に関する解説テキスト
MTEPでは、CEマーキングシリーズや国別規格シリーズなど、海外法規制に関する解説テキストを提供しています。
ここで紹介したGPSDについては、国別規格シリーズEU編「CEマーキングを要求しないEU法」に解説がありますので、詳細はテキストをご参照ください。また、TSDとRoHS指令についてはそれぞれ解説テキストを公開しています。CEマーキング応用シリーズ「玩具安全指令(TSD)」は、玩具安全指令の必須安全要件などが詳しく解説されており、2022年3月に新規発行したテキストです。CEマーキング入門シリーズ「RoHS指令」は基本的な解説に加えて巻末に「サプライヤー評価報告書の例」や「非含有保証書の例」などの参考情報を追加し、より実用的な内容に刷新しました(2022年3月更新)。
自社製品を海外展開するためには、まずは海外法規制の情報収集を行い、自社製品の対象となる法規制を明らかにしたうえで詳細を検討していきます。MTEPの解説テキストを皆さまの海外展開の一助としてぜひご活用ください。
※当解説は法規制に関する都産技研の見解等ではありません。関係機関発行の原文によりご判断ください。本解説の情報に基づいて行った行為により生じたいかなる結果に関しても、都産技研は責任を負いかねますのでご了承ください。
MTEPでは、このほかにも海外の法規制に関するご相談に対応しております。お困りの際は、ぜひお問い合わせください。
追加情報
2023年6月12日に(EU)2023/988:一般製品安全規則(外部リンク)(General Product Safety Regulation:GPSR)が施行され、2024年12月13日から適用が開始されます。
関連情報
- 【MTEP Topics】フランスの鉱物油規制の強化および拡大生産者責任の義務に対する日本企業の対応
- 【MTEP Topics】米国TSCAにおけるPBT物質の規制について
- 【MTEP Topics】EU RoHS指令における銅合金中の鉛の適用除外について
- 【MTEP Topics】「UKCAマーキング」表示義務化の延期について
- 【MTEP Topics】EUにおける製品安全性と市場監視の強化について
同じカテゴリの記事