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世界初となる、デジタル精密水準器の全自動校正装置を共同研究で開発

印刷用ページを表示する 更新日:2022年4月15日更新

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株式会社Any Designと都産技研は、2021年度共同研究として「汎用型全自動精密傾斜校正装置の開発」に取り組みました。
世界初となる、デジタル精密水準器の自動校正装置はどのように開発されたのか。株式会社Any Designの梶木 幹雄 氏と、実証試験技術グループの三浦 由佳 副主任研究員に話を聞きました。

(外部リンク)

精密水準器の校正のため、0.1マイクロメートル単位の傾きを測定

精密水準器は、工作機械の設置や水平出しに用いられる測定器です。気泡管内の気泡の変位から、測定対象物の傾斜を読み取るアナログ精密水準器が一般的ですが、近年は電子センサーを用いたデジタル精密水準器も増えています。

株式会社Any Designは、新たなデジタル精密水準器の開発を目的に、2011年に設立されました。繊細な精密機器を用いた従来製品に対し、気泡管と画像センサーを用いた取り扱いやすいデジタル精密水準器「ADLシリーズ」を開発し、製造販売しています。

「ADLシリーズ」の計測データはBluetoothで送信され、専用のスマートフォンアプリで確認が可能です。これにより作業時間の大幅な短縮が可能になりましたが、水準器の校正作業には大きな課題がありました。

「デジタル精密水準器は精度が高く、1メートルにつき1マイクロメートルという微細な傾きを計測可能です。しかし、これを自動で校正する仕組みはこれまでありませんでした。アナログ精密水準器を校正する仕組みを流用し、手動で校正をするしかなかったのです」(梶木氏)

アナログ水準器の校正は、水準器を検査器に乗せ、検査器の傾きを変えながら気泡の位置を確認します。測定器の校正は、測定物の一桁上の単位で行う必要があるため、1マイクロメートルを計測できるデジタル精密水準器は、0.1マイクロメートル単位で校正しなくてはなりません。

「これまでデジタル精密水準器の校正作業は、検査器を手作業で0.1マイクロメートル単位に傾け、計測された値を確認していました。計測地点は20ポイントあり、全て終えるまで1台につき3~4時間かかります。こうした作業を効率化するため、都産技研との共同研究により、全自動校正装置を開発することにしました」(梶木氏)


汎用型全自動精密傾斜校正装置


汎用型全自動精密傾斜校正装置
校正装置の中央に校正対象の水準器を置き、アプリケーション内のボタンを押せば校正がスタートする。
データの記録は全て自動で行われるため、終了まで立ち会う必要はない。

 

精密測定に適した環境で、校正作業の「再現性」を評価

「汎用型全自動精密傾斜校正装置」は、アナログ水準器の校正作業を拡張する形で開発されました。校正装置はサーボモーターで制御され、計測地点となる角度まで自動的に傾けられます。さらに計測地点では、水準器からBluetoothで送信されたデータを記録。これを20ポイント分繰り返すことで、校正作業を全自動で完了させる仕組みです。

「メカの制御やアプリケーションの開発は、これまでも実績があり、特に問題はありません。ただ、確かな校正のためには、毎回同じ条件で計測を実現させる必要があります。いかに再現性高く、超精密な測定を行うにはどうすればよいか。そのノウハウの提供を都産技研にお願いしました」(梶木氏)

金属製の校正装置は温度や振動の影響を受けやすく、作業者の体温などでも値が変化します。都産技研実証試験技術グループでは、精密測定に適した環境を提供し、三次元測定機を用いて再現性を検証しました。

「校正装置は横に長い鋼材のため、どの部分に水準器を置けば最も“たわみ”を抑えられるかを評価しました。また、再現性を確保するため、水準器の位置を固定する冶具も合わせて設計・制作しています」(三浦)

さらに、サーボモーターの制御によって、想定した傾きが実現できているかも測定。再現性を担保できる測定方法を確立し、Any Design様に伝えました。

「デジタル精密水準器を自動的に校正する装置は、世界で初めてだと聞きました。つまり、今回都産技研で計測した値が、デジタル精密水準器の『真』になるということ。評価を進めながら、その責任の重さを常に感じていました」(三浦)

 

日本のものづくりを支える、精密測定の技術

こうして完成した「汎用型全自動精密傾斜校正装置」は、デジタル精密水準器1台の校正にかかる時間を約30分まで短縮。大幅な作業効率化に成功しました。校正作業はボタン一つで自動的に行われ、離れた場所からスマートフォンアプリで進捗を確認することも可能です。自動計測は作業者による差異も無く、データの改ざんも防ぐ効果もあります。

「“Any Designの水準器だけを対象としない”ことにもこだわりました。装置の所定の場所に測定物を置けば、他社製のデジタル精密水準器も校正できますし、アナログ精密水準器の自動校正も可能です。水準器の真上にカメラを設置し、計測地点でその目盛を自動的に撮影します。あとから写真で気泡の位置を確認するので作業は自動で完了します」(梶木氏)

これまで自社で請け負っていた校正作業を自動化し、「装置の販売」という形で手を離れたことで、「次の製品開発のリソースが確保できました」と梶木氏は話します。

「都産技研には会社設立当時からお世話になっており、精密測定のノウハウを基礎から教えていただきました。精密水準器は微細な加工をする企業にとって欠かせない測定器であり、弊社の製品が日本のものづくりに役立てている自負があります。これからも共同研究を始め、ご支援いただけますと幸いです」(梶木氏)

 


 

(外部リンク)

担当者の写真

(左から)

事業化支援本部 技術開発支援部
実証試験技術グループ
副主任研究員 三浦 由佳
主任研究員 中西 正一


株式会社AnyDesign
開発部長 梶木 幹雄

お問い合わせ先

技術相談依頼試験・機器利用について

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