画期的なデジタル精密水準器でビジネスチャンスを拡大 ―都産技研表彰2025 株式会社Any Design―
公開日:2026年2月16日 最終更新日:2026年2月16日

株式会社Any Designは、2016年から都産技研とデジタル精密水準器関連の共同研究に取り組んでおり、画期的な製品でビジネスチャンスを拡大したとして、都産技研表彰(INNOVATION PARTNERSHIP AWARD)を受賞しました。共同研究の内容や受賞の背景について、同社開発部長兼代表取締役の梶木 幹雄 氏と、マーケティング部の松本 里紗 氏に話を聞きました。
東日本大震災をきっかけに、未経験の精密水準器分野で起業
2011年に創業した株式会社Any Designは、デジタル精密水準器とその関連機器の開発を主力事業とする企業です。創業のきっかけは、東日本大震災で多くの工場が被災したことでした。
「震災によって工場内にある精密機械の水平がずれてしまい、その復旧には精密水準器を用いた『水平出し(レベル出し)』が必要だと報道で知りました。従来の水平出しは、熟練の作業者がアナログ精密水準器の気泡を目視で確認しながら、数人がかりで行うものだったのです。誰でも簡単に扱える精密水準器があれば、早期復旧が可能になるだろうと考えました」(梶木氏)

しかし、梶木氏には水準器の開発経験はありませんでした。国内の水準器メーカーを訪ねて話を聞き、それまで培ってきたメカトロニクスの知見と併せ、5年の歳月をかけて1号機を開発したといいます。その仕組みは、アナログ水準器の気泡の位置を画像センサーで検出し、リアルタイムで測定データを共有するというものでした。
「当時、市場に出ているものの中で最も精度の高いデジタル精密水準器は、1メートルあたり1マイクロメートルの傾きを計測可能でした。どうせゼロから開発するなら、そこを目指そうと考えました。ただ、1号機ができたものの、精度を確認する手段が手元になかったんです」(梶木氏)
2016年に梶木氏は都産技研を訪れ、精度の保証について技術相談を行いました。その後、オーダーメード型技術支援や機器利用、依頼試験を活用し、実証試験技術グループに依頼し安定性の評価を行ったほか、製品化のノウハウなどについても相談できたといいます。
「組立コストの低減やアフターサポートの在り方をはじめ、材料特性や応力のかかり方などの基礎的な質問にも快く答えていただきました。右も左もわからない中で開発してきたので、本当に助かりましたね。これまで市場になかった製品なので、『お客さまにどう説明すれば理解してもらえるか』といったアドバイスをいただいたのも心強かったです」(梶木氏)
都産技研との共同研究で、全自動レベル出し調整システムを実現
こうしてデジタル精密水準器「LevelMan」は製品化されました。しかし一方で、精密水準器の校正作業には課題が残りました。1メートルあたり1マイクロメートルという微細な傾きを校正するには、さらに一桁上、1メートルあたり0.1マイクロメートルの性能が必要でした。これを自動で校正できる仕組みはなく、アナログ水準器を校正する仕組みを流用し、手作業で校正をするしかなかったのです。1台につき3~4時間の作業となるため、効率化は急務となっていました。

そこで2021年に都産技研と共同研究を行い、世界初となる精密水準器の全自動校正装置「CalibMan」を開発しました。

「当初はデジタル精密水準器の自動校正を検討していたのですが、都産技研と相談する中で『アナログも含めたすべての水準器を対象にしてはどうか』と提案を受けました。汎用性を持たせれば販路も広がります。最終的に、アナログ水準器の校正装置をサーボモーターで制御し、全自動でデータを取得することで、校正に要する時間を約30分に短縮することができました」(梶木氏)
さらに、お客さまからの要望を受け、2023年の共同研究を経て開発されたのが、全自動レベル出し調整システム「AdjustMan」です。複数台の「LevelMan」と電動精密アジャスターを、制御ソフトを介して連動させ、精密加工機のレベル出しを全自動で行います。それまで、複数の作業員が声をかけながら1時間以上かけて行っていたレベル出し作業が、1人の作業員が3分以内で行えるまでになりました。

「測定面の“ねじれ”に対応するには、ひとつの水平面に対して4地点で計測を行う必要があります。4地点を計測しながらアジャスターを上下動させて水平を取るのは、まさに『あちらを立てればこちらが立たず』といった状態で、アルゴリズムの調整に苦労しました。また、共同研究では、実際に4トンの定盤を載せて実証実験を行いました。定盤がアジャスターから浮いてしまうなどの問題が見つかり、都産技研の方々から助言を受けながら、アジャスターの制御を見直していきました」(梶木氏)
画期的な製品を生み出したことで、水準器のニーズが顕在化
完成した「AdjustMan」は2024年11月に行われたJIMTOF(日本国際工作機械見本市)で展示され、ブースには多くの関係者が訪れました。近年はマーケティング活動にも力を入れ、2025年前期にはコロナ禍の影響も脱し黒字化を達成。「構想段階から完成まで10年以上かかりました」と梶木氏は話します。
「それまでのアナログ精密水準器は、多少不便でも『そういうもの』として受け入れられていました。そこに私たちのデジタル精密水準器が登場したことで、現場から『こういうことは可能なのか』といった要望が生まれるようになったのです。顕在化したニーズに応えてきた結果が、ようやく成果に結びついてきたと感じます」(梶木氏)

今後は水準器に限らず、さまざまな測定器の自動化に取り組みたいと梶木氏は話します。震災からの復興では、熟練の作業者による作業が必要でした。自動化により、誰でも簡単にレベル出しや測定ができるようになれば、迅速な復旧や復興が可能になるはずです。
「開発当初、精度の目標にしていたのはスイス製のデジタル精密水準器でした。今は、逆に私たちのデジタル精密水準器を欧米で普及させることが目標です。このたびは都産技研表彰という大変ありがたい賞をいただきましたが、お世話になったのはこちらのほう。伴走してくださった都産技研には、お礼を申し上げたいです」(梶木氏)

株式会社Any Design
開発部長兼代表取締役 梶木 幹雄 氏
株式会社Any Design
マーケティング部 松本 里紗 氏
関連情報
- 都産技研表彰
- 株式会社 Any Design (外部リンク)
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