MEMS微細加工技術支援のご紹介と展示会出展予定のご案内
公開日:2025年12月15日 最終更新日:2025年12月15日

電気技術グループでは、半導体微細加工技術や電子部品の基板実装技術、関連材料の耐プラズマ試験、耐硫化ガス試験といった技術支援を行っています。半導体製造工程で利用される微細加工技術は、マイクロレンズやバイオチップ、機能性撥水表面加工など、幅広い分野への応用が進んでいます。
展示会出展のご案内『MEMSセンシング&ネットワークシステム展2026』
電気技術グループは2026年1月28日(水曜日)から1月30日(金曜日)までの3日間、東京ビッグサイトで開催される「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2026」への出展を予定しています。
MEMS(メムス:Micro Electro Mechanical Systemsの略)は、微小な駆動機構を備えたデバイスで、半導体微細加工技術を活用して製造されています。小型・軽量・高感度・低消費電力といったメリットがあり、IoTインフラの普及に伴いさまざまなセンサ市場が拡大する中、MEMSセンサの需要も一層高まってきています。この展示会では、MEMS・半導体微細加工関連の装置やデバイスのほか、素材やアプリケーション、アカデミック分野の最新研究事例などが紹介され、関連分野の最新動向や商談の場としても注目されています。
都産技研のブースでは、開催期間中、職員による技術相談も受け付けていますので、お気軽にお越しください。本記事では、展示会開催に先立ち、都産技研が実施している半導体微細加工技術支援や、主な設備(図1)についてご紹介します。
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微細加工技術支援の紹介
電気技術グループでは、半導体微細加工技術に関する以下の工程や設備について、技術支援を行っています(図2)。職員が操作方法を指導し、お客さま自身で設備を操作していただく「機器利用」と、あらかじめ指定していただいた条件に沿って職員が作業を代行する「オーダーメード型技術支援」での利用が可能です。
- 成膜工程
金属、半導体、酸化物膜などの薄膜を基板上に成膜する技術(関連設備:イオンビームスパッタ、マグネトロンスパッタ) - リソグラフィ工程
基板上にコーティングされたレジスト(光や電子線に反応する樹脂膜)に紫外線や電子ビームを照射して、微細なパターンを描画する技術(関連設備:スピンコータ、両面マスクアライナ、マスクレス露光装置、電子ビーム描画装置、スピン現像機) - エッチング工程
プラズマや薬液を用いて、基板やその上に成膜された膜に化学反応を起こさせることで、、材料を選択的に削る技術(関連設備:RIE装置、高速ディープエッチング装置、ウェットエッチング) - その他の微細加工設備
熱ナノインプリント装置、ダイシングソー、撹拌脱泡器、3次元レーザ マーカ、ワイヤボンダ、ダイボンダ、ボンディングテスタ等
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設備紹介1:電子線描画装置
電子線描画装置では、基板上に塗られたレジスト樹脂に電子線をスキャンしながら照射することで、ナノメートルスケールのパターンを描画します。パターンが描画されたレジスト樹脂はマスクとして機能し、基板や基板上に成膜された電極膜などをエッチングすることで、ナノメートルスケールの構造体を形成します。都産技研の電子線描画装置設備では、電子線特性を活かし、百ナノメートルスケールのパターンを広い面積にわたって描画する試作にも対応しています。主に以下のような用途でご利用いただけます。
ナノ構造体のパターニング
フォトマスク、電子デバイス、量子デバイス、MEMSデバイス、光学素子、機能性表面デバイスなど、成膜やエッチング工程との組み合わせによる微細構造体の試作が可能です(図3)。
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(a)ナノ周期構造 (b)フォトニック結晶光導波路 (c)マイクロリング共振器
広範囲での電子顕微鏡(SEM)画像の取得
描画装置の精密な位置決めステージを活用し、高倍率で撮影したSEM画像を高精度につなぎ合わせることで、広い領域の画像を取得できます。(ただし、撮影対象の試料は汚染のない平滑な基板に限られます。)
設備紹介2:ドライエッチング装置
ドライエッチング装置では、さまざまなガス分子をプラズマ化し、他の物質との化学反応を起こしやすくすることで、基板や成膜されている薄膜材料などを加工することが可能です。また、各種材料のプラズマ耐久性評価を行う目的でも利用可能です。主に以下のような用途でご利用いただけます。(利用可能なガス:アルゴン(Ar)、酸素(O2)、六フッ化硫黄(SF6)、四フッ化炭素(CF4)、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)、三フッ化メタン(CHF3)、及びそれらの混合ガス)
各種材料のエッチング加工による微細構造体の形成
リソグラフィ工程により、あらかじめ微細パターンを形成した基板や薄膜材料にプラズマを作用させることで、微細な凹凸形状を加工することが可能です(図4)。
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有機物の分解除去(アッシング)、基板クリーニング
基板上に付着した有機物を酸素プラズマに反応させて分解除去する「アッシング処理」が可能です(図5)。また、レジスト塗布や成膜前の基板を酸素プラズマで処理することで、基板の表面をクリーニングし、膜の密着性が改善されることもあります。
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研究事例紹介:微小光学素子
温度イメージング画像を得る技術への応用を目的として、モザイクバンドパスフィルタチップ※1 (図6)を試作しました。リソグラフィ工程でパターンを形成した基板上に、誘電体多層膜※2構造の光学フィルタ を成膜したもので、本技術はイメージングデバイス以外にもさまざまな光学センサへの応用が期待できます。
都産技研では産業ニーズに沿った独自の基盤研究のほかに、受託研究や共同研究も行っています。デバイス加工や材料評価などでお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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二種類の近赤外バンドパスフィルタを同一面内に交互に配置して加工したもの(試作品)
(上)近赤外バンドパスフィルタ全体写真 (下)光学顕微鏡による拡大写真

(上)顕微分光光度計による透過率の2次元マッピング (下)各画素のバンドパス透過率スペクトル
※1 モザイクバンドパスフィルタチップ:複数のバンドパスフィルタ(特定の波長だけを通すフィルタ)をモザイク状に配置した光学デバイス
※2 誘電体多層膜:光の反射や透過を制御するために、複数の誘電体(電気を通さない材料)を層状に積み重ねた膜
※3 近赤外イメージング:可視光より波長が長い「近赤外線」を使って物体の内部や表面を撮影する技術
関連情報
- 電気技術グループ・MEMS分野・設備一覧
- 電子線描画装置 (TIRI NEWS 2025年2月15日号)
- 耐プラズマ試験装置 (TIRI NEWS 2024年12月1日号)
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