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電子線描画装置

公開日:2025年2月15日 最終更新日:2025年2月15日

電子線描画装置
  • ナノメートル単位の微細加工が可能です
  • SEM(走査型電子顕微鏡)観察機能を有しており、パターンの仕上がりを確認できます
  • 各種電子線レジストがご利用可能で、お持ちのレジストの利用も可能です
  • 回路のパターン、光学素子、ナノインプリント用の金型モールド等の試作が可能です

電子線描画装置の原理

電子線描画装置(エリオニクス社製 ELS-BODEN 50F)は50kV の加速電圧で照射される電子線を用いて、基板上にコーティングされた樹脂(電子線レジスト)に微細なパターン(線幅数十nm程度)を描く装置です。電子線を照射された電子線レジストのうち、ポジ型レジストは現像液に溶解するようになりますが、ネガ型レジストは現像液に溶解しなくなります。電子線は光と比べて、細く絞ることが可能なため、フォトリソグラフィよりも微細なパターニングが可能です。パターン形成後は、エッチング加工や金属材料の成膜を行うことで、回路のパターンや光学素子を作成することができます。

図1 電子線描画プロセスの模式図

電子線描画装置の特長

本装置の特長としては、描画速度の速さが挙げられます。一般に、電子線描画はナノメートル単位の微細な加工ができますが、スループットが低く、大面積のパターンは苦手としていました。本装置では最大で100 nA、最小で100 pAの電子線を用いることができるため、描画パターンに合わせてビーム電流を調整し、高速に描画を行うことができます。図2に示すように4インチウエハ全面へのナノパターン露光も可能です。3種類の試料ステージを利用することができ、φ2からφ8インチウェハ、□2.5から□7インチマスク、□10 mmから□50 mm小片基板に対応しています。また、設計データはCADで作成されたDXFまたはGDSⅡファイルを用いることができ、設計変更が容易です。

図2 4インチウエハ全面への露光

試作事例:光学素子

電子線描画装置で作成可能なナノメートル単位の構造は、光とよく相互に作用します。パターン形状やサイズ・配置などを変えることで、大きく光学特性をコントロールできるため、各種光学素子などに利用されています。図3は論文等を参考に、シリコンフォトニクス(光集積回路等)で利用されるナノ周期構造やフォトニック結晶光導波路、マイクロリング共振器のモデルを電子線描画装置で試作した事例です。なお、掲載した画像はすべて電子線描画装置に備わっているSEM観察機能で撮影したものです。

3 電子線描画装置により作成したナノ構造

最後に

都産技研では電子線描画装置に関する技術相談、オーダーメード型技術支援(職員が作業を代行)による試作を受け付けています。スパッタリング成膜装置やエッチング加工装置と組み合わせてのご利用も可能です。お気軽にお問い合わせください。

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