散乱光の空間分布特性を用いた見た目の数値化 - 化粧品や塗装面などのツヤ感評価 -
公開日:2024年11月1日 最終更新日:2024年11月12日
- 散乱光の角度分布を測定することで、表面状態の数値化が可能です。
- 表面状態に応じた見た目や色の変化を、数値で管理することができます。
- 化粧品(ツヤあり・ツヤなし)と、反射角度によって色が変わる材料の測定例を紹介します。
散乱光の測定
東京都立産業技術研究センターでは、株式会社村上色彩研究所製GCMS-11という装置を用いて散乱光の測定を実施しています(装置の詳細はTIRI NEWS 2023年7月の記事「BSDF測定装置 ―製品の光散乱特性評価機器―」を御覧ください)。本装置ではサンプルに光を入射した際に生じる散乱光を、様々な角度から検出することで散乱光強度の空間分布を取得することが可能です(図1)。受光器には光の波長ごとに強度を検出可能な分光器を使用しているため、光の強度だけでなく色の情報も取得することも可能です。
化粧品(ツヤあり・ツヤなし)の測定例
まず、口紅の散乱光測定例をご紹介します。図2左に示すような口紅をシャーレに塗布したサンプルについて、斜め45°の方向から光を入射したときの散乱光空間分布を測定しました。図2右のグラフがその結果です※。グラフの円周方向が反射角度、中心から半径方向が反射強度を表しています。ツヤありの場合、正反射となる45°の方向に強く光が反射され、他の角度にはほとんど散乱していません。これは、表面がある程度平坦であることを示しており、結果として光沢感=ツヤ感を感じることとなります。一方でツヤなしの場合、45°以外にも散乱光が検出されており、反射強度の最大値はツヤありと比べて低い値になっています。反射光強度の角度依存性が少なく、光強度も大きくないため、ツヤがなく柔らかい印象となります。化粧品のほか、車のボディや各種製品の筐体の塗装面などについて同様の測定が可能です。※見やすいようにデータを加工しています。
角度によって色が変わるサンプルの測定例
次に、光の入射角度あるいは受光角度によって色が変わるサンプルの測定例をご紹介します。今回、図3に示すようなCDの記録面を測定しました。CDの記録面は、データを記録するための細かい凹凸があり、回折という現象により光の波長ごとに反射する角度が変化し、あたかもその面に色がついているように見える性質を持っています。このような性質を構造色といいますが、GCMS-11ではこの構造色の空間分布を測定することができます。図4は光を斜め45°から入射させたとき、角度ごとに検出される色をxy色度座標上にプロットした結果を動画にしたものです。xy色度座標は色を数値で表現するための座標系です。図4を見ると、受光角度が変わるとxy色度座標が変化しており、色が変化する様子がわかるかと思います。GCMS-11ではxy色度座標のほか、色差や明度差について人間の感覚に近い量を評価するL*a*b*色空間での評価も可能です。
図4 受光角度に対する色度変化の例
まとめ
本記事では東京都立産業技術研究センターの保有する散乱光測定装置とその利用例についてご紹介いたしました。本装置は、依頼試験にてご利用いただけます。今回ご紹介いたしました測定だけでなく、各種測光機器も取りそろえておりますので、ご関心をお持ちの方はぜひご相談ください。
※(at)を@に変更して送付ください。
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