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リチウムイオン電池を“使いこなす技術”で市場に貢献。都産技研の支援を活用して安全・安心な運用を提供する―製品開発支援ラボ入居企業 株式会社EVTD研究所様―

印刷用ページを表示する 更新日:2023年7月15日更新

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都産技研では、入居企業が実験室・試験室として利用できる賃貸スペース「製品開発支援ラボ」を提供しています。化学実験室などの共有施設をはじめ、都産技研の技術支援により製品開発をスピードアップさせることが可能です。その活用例として、2015年に入居した株式会社EVTD研究所の小池 哲夫 代表取締役に、製品開発支援ラボでの活動やそのメリットについて話を聞きました。

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リチウムイオン電池を“使いこなす技術”とは

株式会社EVTD研究所は、「環境に優しいエネルギーで豊かな未来を創造」というパーパスを掲げ、2012年に創業したベンチャー企業です。リチウムイオン蓄電池電源の製造販売、および研究開発を行っています。

「リチウムイオン電池は非常に優秀な特性を持っており、近年は家庭住宅用だけでなく、産業用のニーズも高まっています。しかし、誕生からまだ30年ほどの浅い歴史しかないこともあり、企業にノウハウが溜まっていないことも少なくありません。当社はリチウムイオン電池を“使いこなす技術”に強みがあり、各社のニーズに合わせたリチウムイオン蓄電池電源のカスタマイズを行っています」(小池氏)

(株)EVTD研究所が開発したリチウムイオン蓄電池電源の写真
 株式会社EVTD研究所が開発したリチウムイオン蓄電池電源

リチウムイオン蓄電池は、「単セル」と呼ばれるリチウムイオン電池を、複数個組み合わせた「組電池」として構成されています。このとき、組み合わされた単セルの特性には個体差があります。個体差の影響で、年々充電できる容量にばらつきが生じ、劣化の進行いわゆる寿命に有意差が生まれ、最悪の場合発火などの事故につながる可能性があります。

「リチウムイオン電池は、ニーズの高まりから日欧米、中国をはじめとして多くの国々で製造され、今では中国がトップシェアを占めています。需要増に伴い生産量の増加で最も配慮しなければならないのが品質であります。なぜなら、生産量が増えると価格競争との兼ね合いから品質がおろそかになる傾向にあるからです。未だにリチウムイオン電池の不具合が市場で起きていることがそれを示唆しています。リチウムイオン電池の製造過程では、それぞれの工程で品質管理がされています。製造したプラス極、マイナス極の活物質を1~2週間かけて熟成させる必要があるのですが、各社によってその熟成期間は​まちまちのようです。残念ながら短期間の熟成​で出荷する会社も見られます。結果として品質にばらつきが生まれるわけですが、これは外見では見分けがつきません。そこで当社では、単セルごとの特性を見極め、似通った特性の単セル同士を組み合わせることで、最適な組電池を構成しています」(小池氏)

リチウムイオン蓄電池を安全に運用するために、都産技研の支援を活用

リチウムイオン電池を“使いこなす技術”は、組電池の使用後にも発揮されています。

「リチウムイオン蓄電池は、充電と放電を繰り返すうち、徐々に劣化していきます。単セル同士で、劣化の進行度に差が生まれれば、組電池の品質、寿命にも影響が及ぶのです。この解決策として、電圧の高いセルから低いセルへ、エネルギーを分け与えることで全体の劣化を緩やかにさせる『アクティブセルバランサー』と呼ばれる技術があり、当社独自の技術で提供しています」(小池氏)

株式会社EVTD研究所は2012年に八王子で創業されました。当時入居したオフィスは事務関連の企業を前提にしており、充分な試験設備を構えることができなかったといいます。

「床の耐荷重性が足りず、充放電試験器や自動溶接機といった設備を置くことができなかったんです。移転先を探すなか、多摩テクノプラザの製品開発支援ラボに空きが出たことを知り、2015年に入居しました」(小池氏)

多摩テクのラボ4の写真
「製品開発支援ラボ4」には2015年から計8年間在籍

リチウムイオン蓄電池電源を製造する過程では、負荷試験をはじめ、制御用のコントローラーの評価など、さまざまな技術を必要とします。都産技研 多摩テクノプラザの製品開発支援ラボに入居し、都産技研の支援を活用しながら、近年は燃料電池関連の共同研究も進めています。

「遠隔監視システムによる“見える化“も、ラボに入居して、技術相談や機器利用などを繰り返し活用しながら開発したものです。このシステムは、リチウムイオン蓄電池の各種データをインターネット経由で蓄積し、AI解析を用いて不具合の前兆を検出します。リチウムイオン蓄電池を安全に、安心して運用するためのシステムです」(小池氏)

(株)EVTD研究所 小池社長の写真
株式会社​EVTD研究所 小池社長

“使いこなす技術”は“長持ちさせる技術”でもある

今後の展望として、さらなるリチウムイオン蓄電池電源の普及を目指し、株式会社​EVTD研究所では新事業である「スマエネユース」というサービスの準備を進めています。

「スマエネユースは、個人宅をターゲットにした定額制のリチウムイオン蓄電池電源提供サービス、いわば蓄電池の“サブスク”です。日中に太陽光発電で作った電力を蓄電池に蓄えることで、夜間のエネルギー消費を節約できるだけでなく、災害時の停電対策にも役立ちます」(小池氏)

蓄電池はリユース品を採用し、株式会社​EVTD研究所の技術を活用することで、一般的な蓄電池よりも安価で高品質なものを提供可能になると小池氏は語ります。

「リチウムイオン電池を“使いこなす技術”は、“長持ちさせる技術”でもあります。リユース品を新品に負けないくらい長持ちさせられれば、コストメリットが生まれますし、地球環境にも貢献できるでしょう。これからもこの多摩地域で事業を継続し、サービスを広げていきたいと考えています」(小池氏)

リチウムイオン電池を”使いこなす技術”を今後も多摩地域から発信する
リチウムイオン電池を”使いこなす技術”を今後も多摩地域から発信する


 

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小池 哲夫 氏写真

株式会社EVTD研究所​
代表取締役​
小池 哲夫 氏

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