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IoT技術で労務状況の一元管理を実現。社会課題の解決を目指す

印刷用ページを表示する 更新日:2023年1月15日更新

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株式会社Area Japanは、「IoTを活用した社員健康・労務管理サービスシステム」で、MCPC award 2022ユーザー部門特別賞を受賞しました。本システムは、都産技研との共同研究の成果に基づき、株式会社Area JapanとNEXCO中日本サービス株式会社が開発したものです。開発までの経緯や今後の展望について、株式会社Area Japan代表取締役の神田 真邦 氏とIoT技術グループ プロジェクト事業技術員の東内 章に話を聞きました。

※MCPC award:IoT/AIシステムのさらなる普及促進を目的として、モバイルシステムの導入によりIoT/AI 分野での「業務効率化」、「社会貢献の推進」等の成果を上げた事例を顕彰する制度。(主催:モバイルコンピューティング推進コンソーシアム、後援:経済産業省・総務省他)

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「モノづくり」から「コトづくり」へ。発想の転換から始まったプロジェクト​

株式会社Area Japanは、今までモノづくり現場に導入されてきたIoT技術をコトづくりに展開し、労働環境や育児、健康などに関する社会課題を解決するシステムを開発しています。2019年度の公募型共同研究にて、「IoTを駆使した総合的な育児支援システム」が採択され、都産技研と共同研究を開始しました。

「保育の現場では、乳幼児の午睡の状態や心拍数、体温などチェック項目がかなり多く設定されていますが、それぞれの数値を個別に測定できるデバイスはあっても、統合的に管理できるものがありませんでした。一つのデバイスで午睡方向も呼吸のチェックも体温も全部確認できれば、保育士の先生方の業務量が大幅に軽減するだろうと思い、システムの開発にとりかかりました」(神田氏)

ICTの導入が遅れている保育の現場で、IoTの活用によって子どもの命を守り、保育士の労働環境の改善を目指すこの取り組みは、先進性や事業化の可能性などが高く評価され、採択に至りました。

「IoT関連の製品開発の場合、製造現場からの応募がほとんどです。本件は、IoTを保育現場に導入し、業務改善を試みるという、まったく新しい業態への取り組みです。日常生活でもIoTが使えることを示すという意味でも、非常に興味深い案件でした」(東内)

 

想定外だらけのコロナ禍での商品開発

開発には実証実験が必要でしたが、コロナ禍ではさまざまな困難が待ち構えていました。

「想定外だったのは、保育現場に行って実証実験の現場に立ち会えなかったことです。さらに、共同研究の技術面の委託先は九州にあり、行き来もままならない状況でした」(神田氏)

「まずは予定通り、期間内かつ予算内に、予定した成果物が確実に出るよう、開発をサポートしました。技術者は機能を積み込みすぎるところがあり、システムが大きくなってしまうことがあるため、初期段階では実装する機能を制限するなど、進捗管理も含めてお手伝いさせていただきました」(東内)

苦難を乗り越え、総合的な乳幼児向け見守りセンサーが完成しました。温・湿度センサー、加速度センサーや方向検知センサーなどが組み込まれており、対象者の体表温度や午睡検知、呼吸検知といった複数の項目の一元管理を実現しました。

乳幼児にセンサーを装着することによって、うつ伏せ寝になったり、温度が基準値より高くなったりした場合に管理者の端末にアラームが表示されます。さらに、データ転送による監督部署への書類提出や帳票出力が可能です。

 

概要図

育児支援システムを社員の健康労務管理システムに展開

この育児支援システムをベースに構築されたのが、「IoTを活用した社員健康・労務管理サービスシステム」です。

「発端は、育児支援システムの研究項目の一つとして、ウェアラブルウォッチを使って子育て中の母親達のストレス検証を行ったことでした。睡眠の質や運動量など、自身の健康状態を数値で可視化するシステムを試していただいたところ、"自分の数値が正常かどうかわからないので教えてほしい"という意見をいただきました」(神田氏)

そこをニーズとして捉え、実証検証を継続。情報を二次解析し、ヘルスケア情報としてのアルゴリズムを構築して提供しました。商品化に向けて、NEXCO中日本サービス株式会社に相談したところ、夜間作業員の労務管理に最適と興味を持たれ、導入に至りました。

夜間1人で勤務する職員にウェアラブルバンドを着用させ、業務中のバイタルチェック(脈拍、血圧、呼吸、体温)を可視化することにより、健康管理の効率化やウェルビーイング向上を実現しました。導入先からは高い評価を受け、今回の受賞へとつながりました。

 

神田氏の写真

 

株式会社Area Japanでは、本システムを筆頭に、BtoCへの応用も含めて広く展開することを予定しています。プロジェクトとしては一区切りしたものの、都産技研では技術支援を継続しています。

「試験機の利用や技術相談は随時受け付けています。例えば新しい機能の検討や製品の試作など、開発段階に応じて、専門の研究員による技術的なアドバイスが可能です。引き続き、都産技研の支援をご活用いただければと思います」(東内)

 


 

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神田氏の写真

株式会社Area Japan
代表取締役

神田 真邦 氏

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