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べっ甲端材を有効活用するためのデザイン支援

印刷用ページを表示する 更新日:2023年1月4日更新

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東京都指定伝統工芸「江戸べっ甲」に携わる東京鼈甲組合連合会と都産技研は、貴重なべっ甲端材の有効活用を目的として、10年以上にわたり共同開発を行っています。活動の成果や開発した商品、今後の展望について、大澤鼈甲株式会社 代表取締役社長の大澤 健吾 氏、ベッ甲イソガイ 代表取締役の磯貝 剛 氏、城東支所の上野 明也 主任研究員に話を聞きました。​

(外部リンク)

原材料が輸入禁止に。厳しい状況の中で打開策を見出す

1977年、原材料であるタイマイがワシントン条約によって輸入禁止となり、原材料確保の道が閉ざされることで、厳しい経営状況に直面した都内のべっ甲産業。東京鼈甲組合連合会の会員たちも大きな不安を抱えていました。

※ 東京鼈甲組合連合会(外部リンク):​「東日本べっ甲事業協同組合」と「東京鼈甲工芸品工業協同組合」の二組合が共同して運営する連合組合。江戸べっ甲をはじめとするべっ甲産業に携わる会員で構成されています。

眼鏡フレームの製造を手がける大澤鼈甲株式会社 代表取締役社長の大澤 健吾 氏によると、「材料の枯渇を見越して、端材の有効利用ができたらいいねと、会員間では当時から話していました。また、デパートの売り場からべっ甲製品が消えていく状況に、業界が独自で新製品を開発していかねばならないと考えていました」とのこと。しかし、具体的な解決や製品開発につながる動きに踏み切れていませんでした。

一方、江戸べっ甲が東京都の伝統工芸品に指定されていることもあり、都産技研には会員企業より相談が寄せられるなど、当時から関わりがありました。アクセサリーの製造を手がけるベッ甲イソガイ 代表取締役の磯貝 剛 氏も、都産技研に相談を寄せていたべっ甲組合連合会​の職人の一人です。

「都産技研は、新しい装置や、新しい技術について教えてくれる研究員のフォローが充実していて、当時からお世話になっていました」(磯貝氏)

 

大澤氏の写真

東京鼈甲組合連合会 会長
大澤鼈甲株式会社 大澤 健吾 氏

磯貝氏の写真

​東京鼈甲工芸品工業協同組合 理事
ベッ甲イソガイ 磯貝 剛 氏

 

都産技研のデザイン支援と職人の技の融合

当初、都産技研がサポートしていたのは、べっ甲細工における表面の塗装や端材の再生など技術的な部分でした。ちょうど、都産技研がデザイン分野の技術支援に力を入れ始めたと時期とも重なり、端材を活用して今までにないような新しい商品をつくりたいという要望を受けて、共同開発がスタートしました。

「べっ甲の材料加工ははじめてでした。素材の特性や、加工の方法などの技術を勉強し、そこに、さらに新しい技術を取り入れながら、研究を重ねていきました」(上野)​

べっ甲端材を有効活用するための製品の開発にあたって、お互いにアイデアを出し合い、都産技研の技術も活用しながら​、試行錯誤を繰り返しました。実際にはデザインの範疇を越え、材料開発などに及ぶことも多かったといいます。

都産技研のデザインからのアプローチと、べっ甲組合連合会の技術や提案が身を結んだ第一号の開発品が、ようやく製品化されました。それが「伝統的工芸品チャレンジ大賞」優秀賞を受賞したべっ甲ランプシェードです。

 

ランプシェード

べっ甲ランプシェード(上)、べっ甲アンプ&スピーカー(下)

 

べっ甲は比較的熱に弱く、光源​である白熱球の熱でべっ甲が変形してしまうため、べっ甲を材料としたランプシェードの開発は困難でした。本研究にて開発したべっ甲ランプシェードは、光源にLEDを使用しています。

「べっ甲組合連合会​のアイデアをきっかけに、デザインの検討や​技術的な改良を重ね、最終的に商品化までたどり着きました​」(上野)

 

べっ甲の可能性を見出し、さらなる展開へ​

10年以上にわたる取り組みの中で、毎年テーマを決めてさまざまな新製品を開発してきました。取り組みを進める中で、べっ甲製品に新しい技術を取り入れることに対しての業界内での見方も変化していきました。伝統と技術の融合により、新たな価値の創造や産業の活性化にもつながっているといいます。

「自社の商品開発に都産技研の設備を活用しています。上野さんからアドバイスをいただいて3D切削加工機を導入したことで、これまで手仕事では難しかった商品をつくることができるようになりました」(大澤氏)

 

開発品一覧

 

シルバージュエリーは​べっ甲と貴金属という異素材の組み合わせ、アンプ&スピーカーは、高級品であるべっ甲と音響機器の相性の良さに着目してつくられた製品です。三​次元AMヘアブラシは、肌なじみが良いというべっ甲素材の特色を活かし、三次元AMの技術をかけあわせることで開発されました。

「アクセサリーはそもそも端材からつくることも多いのですが、その切れ端でも柄はきれいなんです。ただ、あまりにもべっ甲端材が薄すぎて、商品として活かすというアイデアは自分たちでは出てこない。そこを、上野さんが上手くアレンジしてくれました」(磯貝氏)

両者が協力し合いながら製品開発を進めることで、べっ甲の新たな可能性を発見していきました。
毎年新たなテーマで製品開発に挑むこの取り組み。今年も、新しいチャレンジが始まっています。

 


 

(外部リンク)

インタビュイーの写真

左から

東京鼈甲組合連合会 会長
大澤鼈甲株式会社 代表取締役社長
大澤 健吾

技術支援本部 地域技術支援部 城東支所
上野 明也 主任研究員

東京鼈甲工芸品工業協同組合 理事​
ベッ甲イソガイ 代表取締役
磯貝 剛

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