ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > カテゴリ > 研究事例紹介 > 産業廃材の木粉を活用した複合成形材料による食品容器の開発

産業廃材の木粉を活用した複合成形材料による食品容器の開発

印刷用ページを表示する 更新日:2022年5月15日更新

トップイメージ

SDGsをはじめ、環境問題への対応が急がれる中、木材繊維とプラスチックを融合したウッドプラスチックは、製品としての開発や市場での流通も進む成形材料です。

プラスチック・産業用素材で実績のある菱華産業株式会社と都産技研は、「プラスチック代替素材を活用した開発・普及プロジェクト」において、木粉と生分解性樹脂によって、バイオマス度を一層高めた複合成形材料による食器容器を開発しました。
製品の特徴や共同研究の内容について、菱華産業株式会社の荒木 浩二 氏、都地 盛幸 氏に話を伺いました。

(外部リンク)

バイオマス度の高い薄肉成形材料「MIRAIWOOD」の開発

プラスチックを筆頭に産業用素材で長い歴史を持つ菱華産業株式会社は、環境対応が求められる昨今にあって、木粉とプラスチックの複合材料の開発、製品化に取り組んできました。

「環境問題に関して、それまで以上に社会的に取り上げられるようになった3年前、当社としても非常に問題意識を持ちはじめ、川瀬樹脂工業さんとともに、木粉プラの開発に着手しました。程なくして都産技研さんと共同研究ができることとなり、生分解性樹脂をベースにして開発しようという取り組みに発展しました」(荒木氏)

この共同研究では、「木製品」としての流通を可能とするために、木粉比率を51%にまで高めることを目標としました。

「木粉率とは体積比ではなく重量比なので、なるべく比重の高い木材を使うことが重要になってきます。たとえば杉など軽いものだと0.3、今回使用しているメイプルやホワイトアッシュは0.7くらいあります。これはスポーツ用品メーカー ミズノさんのバットの廃材で、削り工程で出てくる削りかすを利用しています」(都地氏)

最終的に、生分解性樹脂としてはバイオPBSを使用し、バイオマス成分73.3%を達成。木粉と生分解性樹脂による新しいバイオマス成形材料「MIRAIWOOD」として、一般社団法人日本有機資源協会のバイオマスマーク商品の認定を受け、バイオマスマーク70も取得できました。
 

材料写真
バイオマス70マーク

 

という課題を解決した、流動性を高める特殊熱処理

開発にあたっては、木粉率51%の達成と同時に、肉厚0.7 mmの製品の製造を実現することも大きな目標の一つでした。当初、東京オリンピックでの展開を想定していたため、0.7 mmの薄肉化を実現できると、スポーツ観戦時の使い捨てカップなどの代用品になると考えました。

「そもそも金型に樹脂を注入する射出成形においては、これまで木粉率30%が限界でした。木粉率51%でさらに0.7 mmの薄いものまで成形できる流動性をどう実現するか。結果的に、木材の選定に加えて特殊熱処理で、実現することができました」(都地氏)

特殊熱処理によって、熱流動性、自己接着性が発現することで流動性が向上、0.7 mmの薄さの金型へも問題なく樹脂を送り込めるようになりました。

「においの問題に関しては都産技研の臭気判定士の資格を持つ研究員さんに助けられまして、におい分析システムなどを用いて分析を行いました。結果として、ある工程を加えてコーティングすることでにおいをほとんど消すことができました」(都地氏)
 

装置の写真

におい分析システム

 

バットの削りかすをアップサイクルさせる廃材利用モデル

今回、流動性を高めるための木材の選定の結果、バットの削りかすという廃材を利用することになりましたが、これは結果的に新しいビジネスの可能性を拓いてくれるかもしれないと言います。

「今回、アップサイクルという形での廃材利用となったわけですが、最近出展した第1回サステナブルマテリアル展でも、自社の工場で出る廃材を、MIRAIWOODの技術を使ってできないかというお話を多くいただきました」(都地氏)

「都産技研さんと開発したこのノウハウが、他の企業さんが捨てる廃材にも活用できる。このノウハウでまた別の、環境負荷の少ない独自の製品を作っていくことが可能になりました」(荒木氏)

こうした思わぬ発見は、ビジネス面だけではありませんでした。当初、東京オリンピックに絡めて使い捨てカップの開発を予定していたところ、延期・無観客となって方向転換を余儀なくされる中、使い捨てではない、高級感のある製品としてデザインも進められました。

「都産技研の研究員さんには色々な形をご提案いただきました。人間工学に基づいて手指の関節がフィットするような形状にしたり、漆をコーティングして高級感を出すなど、当初捨てることを前提として環境負荷低減させることがテーマでしたが、使い続けられるものとしての新たな可能性が見えてきました」(荒木氏)


製品写真

 

「今後、製造単価を下げていくには、消費者の中にこうした製品の存在が認知されていくこと、大手企業もこうした製品に積極的に取り組んでいくことが必要」(荒木氏)という中、菱華産業株式会社では、ホームページでコンセプトをしっかり持った製品として販売するなど、小さな一歩ではあっても自社でできる普及への取り組みを始めています。

 


 

(外部リンク)


事業化支援本部 技術開発支援部
製品化技術グループ 主任研究員
加藤 貴司(かとう たかし)

共同研究先

都地氏の写真

菱華産業株式会社
営業部 部長代理
事業開発グループ担当

都地 盛幸(つじ もりゆき)氏

お問い合わせ先

技術相談依頼試験・機器利用について

技術相談受付フォームはこちらから(外部リンク)

TIRI NEWSへのご意見・ご感想について

TIRI NEWSへのご意見ご感想フォームボタン

※記事中の情報は掲載当時のものとなります。


ページの先頭へ