ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > カテゴリ > 技術紹介 > 分光放射測定に基づく物性評価 -生体への傷害リスクレベル評価からプラズマ診断まで-

分光放射測定に基づく物性評価 -生体への傷害リスクレベル評価からプラズマ診断まで-

印刷用ページを表示する 更新日:2021年12月1日更新

トップイメージ

都産技研が保有する、分光放射測定装置の例
上段左:分光放射照度計、上段右:ハイパースペクトルカメラ
下段左:分光放射輝度計(可視域用)、下段中央:分光放射輝度計(紫外~近赤外用)、下段右:分光全放射束計

照明製品やディスプレーなどの発光を波長ごとに測定すると、見た目ではわからない色の分析や、紫外線・赤外線に関する情報を取得することができます。これを分光放射測定といい、測定結果を分析することで光の安全性や殺菌力などの評価も可能です。本解説では、分光放射測定の意義と原理を概説し、応用例を紹介します。


光音技術グループ TEL:03-5530-2580 E-mail:shoumei@iri-tokyo.jp

(外部リンク)

分光放射測定の意義と原理

光は電磁波の一種であり、エネルギーを伝搬します。光が物質に与える影響はその波長により異なります。光の性質を知るには、光エネルギーなどの物理量(放射量)の波長依存性を測定する、分光放射測定が必須です。

分光放射測定装置(図1)の、典型的な概念図を図2に示します。光の測定範囲を限定する集光部、光を波長ごとに分離する回折格子などの分光器、光エネルギーを電気信号に変換する検出器により、構成されます。検出器の電気信号をコンピューターで記録することで、放射量の波長依存性(スペクトル)を、データとして得ることができます。


モノクロメータ式分光放射計の概念図

図2 モノクロメータ式分光放射計の概念図
集光部(測定する放射量によっては集光部がない場合もある)と入射スリットを通った光は、
回折格子に照射され、波長ごとに異なる角度に反射される。出射スリットにより目的の波長を抽出し、検出器で受光する。
回折格子を回転させて、抽出する波長を選択しながら検出器の出力を記録する。
グラフは、電球型LEDと白熱灯のスペクトル測定結果の例を示す。

 

光の安全性や殺菌力の評価

光は、物体に照射されると物質との相互作用を起こします。紫外線による菌の不活化や青色光による網膜の損傷などはその一例です。それらの効果は光の波長ごとに異なります。そのため、分光放射量の測定結果に、あらかじめわかっている波長ごとの影響度に応じた係数を掛け合わせることにより定量的に評価することができます。

都産技研では、二次元分光放射輝度計(ハイパースペクトルカメラ)の校正方法を考案し参考文献1、青色光が網膜にあたえる傷害のリスクグループの評価システムを開発しました参考文献2,3。図3に青色光網膜障害リスクグループ評価システムの実験系を示します。

また、紫外線の殺菌評価や危険性評価も承ることができますので、ご相談ください。
 

青色光網膜傷害リスクグループ評価システムの実験系、試験品の外観およびその輝度分布

図3 青色光網膜傷害リスクグループ評価システムの実験系(上)
試験品の外観(左下)およびその輝度分布(右下)

 

発光分光計測によるプラズマ診断

プラズマ(放電現象)を利用した加工技術は、薄膜形成・エッチングなどの材料加工のみならず、近年では、殺菌やきのこなど生物の育成助長など、広範な技術分野で利用されています。

処理対象に損傷を与えることなく、目的の処理を達成するには、プラズマ中の粒子(電子・イオンなど)のエネルギーや密度を、適切に制御する必要があります。しかしながら、処理中にプラズマを乱さず計測することは難しく、実験による試行錯誤により処理条件を見出しているのが現状です。

そこで都産技研では、プラズマの発光スペクトルを、分光学・原子分子物理学の理論に基づいて解析することで、プラズマの状態を診断する手法を開発しました参考文献4-7。比較的簡易な測定系で非接触計測が可能であり、製造現場におけるプラズマ計測法としては最適な方法の一つです。

都産技研では、分光放測定装置を保有するとともに、このような解析にも対応できますので、プラズマ計測にご関心をお持ちの方は、ぜひご相談ください参考文献8

プラズマの発光スペクトルおよびプラズマ中で生じる反応の一例

図4 プラズマの発光スペクトル(左)およびプラズマ中で生じる反応の一例(右)

 

都産技研では、各種分光放射量(分光放射輝度、分光放射照度、分光放射束など)の計測装置を保有しており、依頼試験や機器利用、オーダーメード型技術支援、共同研究などでご利用いただけます。

「光自体の測定」はもちろんですが、分光放射計測に基づく、「光を使った、物性の評価・分析」、あるいは「光に関する技術・製品開発」にも、さまざまな専門知識を有するメンバーがお客さまをサポートいたします。ぜひ一度ご相談ください。

 

参考文献

参考文献1: 秋葉拓也ほか,第52回照明学会全国大会,8-P-04 (2019).(外部リンク)

参考文献2: Takuya Shibuya et al, Lighting Res. Technol. Vol. 52, p. 692 (2020).(外部リンク)

参考文献3: 秋葉拓也ほか,平成 31 年電気学会全国大会, 1-029 (2019).(外部リンク)

参考文献4: Yuya Yamashita et al., Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 60, p. 046003 (2021).(外部リンク)

参考文献5: 山下雄也ほか, 第68回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集, p. 07-043 (2021).(外部リンク)

参考文献6: 山下雄也ほか, 第82回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集 07-002(2021).(外部リンク)

参考文献7: Yuya Yamashita et al., Proceedings of the 42nd International Symposium on Dry Process, p.57 (2021).(外部リンク)

参考文献8: オーダーメード型技術支援紹介「プラズマ処理装置設計・開発のための発光スペクトル計測・プラズマパラメータ算出」
 


 

(外部リンク)

お問い合わせ先

設備についてのお問い合わせは下記へご連絡ください。

 

技術相談依頼試験・機器利用について

技術相談受付フォームはこちらから(外部リンク)

TIRI NEWSへのご意見・ご感想について

TIRI NEWSへのご意見ご感想フォームボタン

※記事中の情報は掲載当時のものとなります。


Adobe Readerダウンロードはこのリンクから(外部リンク)

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)

ページの先頭へ