ゆかりの人:第1回 古賀 逸策 氏

印刷用ページを表示する 更新日:2021年11月19日更新

古賀 逸策 氏  (東京市電気研究所 作業係長)

 

古賀 逸策 氏 

[在籍期間:1925年 から 1929年]

 

 私たちの身の周りの電子機器には、水晶振動子と呼ばれる小さな部品が使われています。

その実用化に大きく貢献した人物が古賀逸策氏です。電気研究所に入所してから東京工業大学に移るまで、一貫して無線通信の仕事に従事しました。

東京工業大学に移ってから発見した、世界初の温度依存性の少ない水晶振動子のカット角度は世界的にも有名ですが、その基となる研究は電気研究所で行われたものです。
 

 

水晶振動子  制作頒布した水晶振動子

                  * 水晶振動子(Quartz crystal resonator)
             水晶の逆圧電効果を利用した周波数基準素子。
             クォーツ時計、無線通信、コンピューター等、現代のエレクトロニクスに欠かせない部品。
   

   この水晶振動子は、無線送信機への使用を始めとして、時計(クオーツ時計)などの日用品にも広く使われました。長い年月をかけて改良されており、今日では、テレビや無線通信システム、コンピューター、スマートフォンなどの情報機器に不可欠のものになっています。2017年にはIEEEマイルストーンを受賞しました。

  電気研究所においては、その研究成果として水晶振動子および水晶発振器の製作頒布が戦後まで行われました。また、NHK・ラジオ局の立ち上げの支援も行いました。『電気研究所40年史』に古賀氏が寄稿した「放送と水晶」には、電気研究所所有の放送機を貸し出したエピソードや、水晶の細工の方法を修得した苦労話が語られています。

   その後、東京工業大学や東京帝国大学で教鞭をとり、多数の技術者の養成を行い、1948年日本学士院賞、1963年には文化勲章を受章、1982年に亡くなるまで、生涯に270編もの研究論文を世に残しています。

 

後輩研究員からの一言

 古賀逸策先生といえば、重要な電子部品である水晶デバイスの分野における偉人の一人です。先生の最大の発見であるR1カット(別名:ATカット)を利用した厚みすべりモード水晶振動子は、温度変化に対する卓越した共振周波数の安定性と、生産性にも優れる基本構造ともあいまって、回路の周波数基準源として、今日に至っても無数の電子製品に搭載されています。現代のようなコンピューティング環境が無い時代に、物理を基礎とした探求を地道に行い、まさに『世紀の発見』に至ったことは驚嘆の一言に尽きます。

 小職は、都産技研に奉職する以前にこの水晶デバイスの研究分野に携わっておりました。すなわち、先生が生涯をかけて採取に取り組んでおられた水晶の材料定数の恩恵を享受していた一人であるとともに、この度創立100周年を迎える都産技研の後輩の一人でもあります。このような戦前戦後から現在に至るまでの国内産業の礎を築いた偉大な研究者を大先輩として戴いていることに思いを寄せつつ、これに恥じぬよう、改めて今後の研究などの業務実施に邁進していきたいと考えております。 

城南支所横山幸雄主任研究員

でも今つくっているのはバイオリン・・・

城南支所 主任研究員
横山 幸雄