心理音響評価量とは
騒音レベル(dB)では判断できない音の違い(音質)を数値として表す指標を心理音響評価量と呼びます。 音質を数値化することで以下のようなメリットが得られます。
- 「気になる音」の理由を明確化して解決できる
- 製品音の良さを数値としてアピールできる
- 製品音をデザインして 高付加価値化できる
代表的な心理音響評価量
代表的な心理音響評価量を以下に示します。
心理音響評価量 | 単位 | 解説 |
ラウドネス (大きさ) | sone | 騒音レベルよりも人の感覚に近い音の大きさを評価可能。音の大きさを比較するときに有効。 |
シャープネス (甲高さ) | acum | 高い音の成分が多いと値が大きくなる。値が大きいと煩わしく感じることが多い。 |
変動強度 (変動感) | vacil | うなりのように音の大きさがゆっくりと変動する音の変動感を評価可能。 |
ラフネス (粗さ感) | asper | カチカチ、カタカタ等の音により感じる音の粗さ感を評価可能。 |
トナリティ (純音感) | dB | ピー、キーン等の音により感じる純音感を評価する指標の一つ。値が大きいと煩わしく感じることが多い。 |
心理音響評価量の活用事例
事例(1) ラウドネスによる評価
カタログで、騒音の改善効果を記載したい場合を考えます。 例えば、2台の掃除機の吸引音の比較をする際、従来機種の騒音レベルが55 dB、新機種の騒音レベルが50 dBで あったとします(図1)。

図1 騒音レベルの比較
両者の音の大きさの違いは5 dBと表すことができますが、それでは、聴感での印象がどの程度変わったといえるのでしょうか。
ここで、同じ音に対して心理音響評価量の一つ「ラウドネス」で分析してみた結果を図2に示します。

図2 ラウドネスによる分析結果
ラウドネスは音の違いを比で表すことができるため「実感音約30%カット」のように、騒音の改善効果を直感的 に理解しやすい形で表現することができます。
事例(2) シャープネスによる評価
続いて、自動車のドア閉め音の音質を改善するために、その音質の違いを定量的に表す場合を考えます。 以下の動画をご覧いただき、2つのドア閉め音の違いを確認してみてください。
動画1 ドア閉め音の比較

図3 シャープネスによる分析結果
2つの音は、音の大きさには殆ど違いがないため、騒音レベルやラウドネスでは違いを表すことができません。 このような音の高さが異なる音の違いを定量的に表すときは「シャープネス」による分析が効果的です(図3)。