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核磁気共鳴分析装置

公開日:2026年3月16日 最終更新日:2026年3月16日

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  • 新しい核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下NMR)分析装置を2026年1月に導入しました。
  • この装置では、有機・無機材料、結晶・非晶質、溶液・固体などの試料の種類を問わず、化合物の分子構造や運動状態を分析できます。
  • 溶液NMRでは溶媒中での化合物の分子構造、固体NMRでは固体(粉末)状態の化合物の分子構造の分析が可能です。

装置の特徴

核磁気共鳴(NMR)分析は、核磁気共鳴現象(外部静磁場に置かれた原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用する現象)を利用して、化合物の分子構造や運動状態を調べる分析方法です。有機化学分野においては、溶液中での化合物の水素核(1H)、炭素核(13C)等の測定(溶液NMR)が広く利用されてきました。近年では、溶液中での1H・13C核以外の原子核についても測定が可能になりました。また、固体試料の測定(固体NMR)も比較的容易となり、より幅広い分野の研究開発に活用されています。

東京都立産業技術研究センター(以下、都産技研)では、既設のNMR装置(日本電子株式会社製JNM-ECA600)の機能強化を行いました。超電導マグネット(磁場強度:14.1 T)は据え置いたまま、分光器(日本電子株式会社製JNM-ECZL600G)と溶液・固体プローブ等を更新しました。これにより、金属導体や常磁性体を除き、 有機・無機材料、結晶・非晶質、溶液・固体などの種類を問わずさまざまな核種(1H、13C、ホウ素(11B)、フッ素(19F)、アルミニウム(27Al)、ケイ素(29Si)、リン(31P)など)の測定が可能となりました。

溶液NMRでは試料を溶媒(重水素化溶媒)に溶解して測定し、固体NMRでは固体試料(粉末)を試料管にそのまま充填して測定します。これらの試料は超電導マグネット中で電磁波を照射すると核磁気共鳴を起こし、自由誘導減衰(Free Induction Decay、以下FID)信号を与えます (図1左)。このFID信号はさまざまな状態に置かれた原子核からの磁気情報(波形)の重ね合わせであり、フーリエ変換という処理をすることで、各原子核の置かれた状態を反映したNMRスペクトルが得られます(図1右)。

図1 FID信号(左)とフーリエ変換後のNMRスペクトル(右)の一例

測定事例

(1)溶液NMRの事例

有機小分子または高分子は、適切な重水素化溶媒に溶解することで溶液NMRを測定できます。溶液NMRは後述する固体NMRと比べ、シャープなスペクトルを与えるため、分子構造について多くの情報を得ることが可能です。都産技研では1Hや13C核だけでなく11B、19F、31P核などの測定にも対応しています。今回導入した溶液NMRプローブ「ROYALプローブ™ HFX(日本電子株式会社製)」は二重共鳴、三重共鳴自動切り換え型溶液プローブであり、これらの核同士が複雑に相互作用した化合物でもその効果を排除したスペクトルを容易かつ短時間で取得することができます。

例えば、製薬分野で注目されているフッ素官能基をもつ有機小分子の13C-NMRでは、13C核に近接する1H核と19F核が相互作用することでスペクトルのピークが複雑に分裂してしまいます。従来はどちらか一方の核との相互作用のみを排除した測定しか行えませんでしたが、新しい溶液NMRプローブを用いれば1H核と19F核両方との相互作用を排除(デカップリング)した13C-NMRスペクトルを容易に取得できます (図2)。最大で3核(1H・19F・任意核X)を同時に扱う三重共鳴に対応し、そのほかのパルスシークエンス(NMRの測定条件)と組み合わせることで、医薬品や機能性有機材料の研究開発・品質管理等に広くご活用いただけます。

図2 装置の更新前(上)と更新後(下)の3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸の溶液13C-NMRスペクトル
(1H, 19Fデカップリングした下段は上段の19F核による分裂が消えています。)

 

(2)固体NMRの事例

図3には、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物(カリウムミョウバン、AlK(SO4)2·12H2O)の粉末の固体27Al-NMRスペクトルを更新前と更新後の装置で測定した事例を示しています。更新前の装置と比較して、更新後の装置ではノイズの少なさを示すS/N比が4倍程度向上していることがわかります。

図3 装置の更新前と更新後の固体27Al-NMRスペクトル

おわりに

核磁気共鳴分析装置は化合物の分子構造などを特定することができる有力な分析装置です。更新後の装置ではさまざまな核種の測定が可能となりましたので、製造した材料や試作段階の新規材料の評価などにぜひご利用ください。

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