設備紹介 多摩テクノプラザ, 複合素材技術グループ

繊維・複合材料評価試験の紹介(多摩テクノプラザ複合素材技術グループ)

公開日:2025年6月2日 最終更新日:2025年6月2日

繊維・複合材料評価試験の紹介(多摩テクノプラザ複合素材技術グループ)

「繊維」は糸や布、複合素材などさまざまな姿に形を変え、我々の現代生活を支えています。多摩テクノプラザ複合素材技術グループでは、このような繊維材料や繊維製品に関する技術支援・研究を行っています。ここでは、繊維評価に使用する試験設備について、JIS L(繊維)規格を中心に、スタンダードな装置から特殊用途の装置まで、事例を交えて紹介します。

引張強さ試験

引張強さ試験では、さまざまな繊維素材を引っ張り、破壊したときの強度と伸びを測定します(JIS L 1096, L 1913, L 1095, L 1013, L 1015など)。通常、布や縫製部分などを中心に試験しますが、50 Nの小さいロードセルでは糸の強度や、タオルへのパイル糸の保持力を測定できます。一方、10 kNの大きいロードセルでは、ガラスクロスやロープなどの高強度な産業用繊維素材の強度を測定します。そのほか、服飾資材のひもやボタン、バッグに付属するバックル、犬用のドッグリードなどさまざまな生活用品の強度試験も実施しています。(図1)

図1 引張試験機の外観とサンプルの事例

染色堅ろう度試験

繊維製品には色がついているので、変退色(色落ち、色あせ)や汚染(色移り、色泣き)といった劣化現象が避けられず、ひどい場合はクレームになります。染色堅ろう度※1試験では、光や洗濯、汗などのように、繊維製品の変退色や汚染を引き起こすさまざまな作用に対して、色の抵抗性がどのくらいあるのかを評価します。作用ごとに試験規格が定められているので、製品の使われ方によって、どの試験を実施するかを決めます。(図2、3)
染色堅ろう度は、1級から5級の等級判定で示されることが多いです(耐光試験は1級から8級)。数字が大きいほどその生地や糸の染色堅ろう度が良いということになります。

1 染色堅ろう度:染色された生地が色落ちや変色に対してどれだけ耐久性があるかを示す指標

図2 繊維製品と染色堅ろう度試験項目の一例

 

洗濯試験機
学振形摩擦試験機

図3 染色堅ろう度試験にて使用する装置の一例

摩耗強さ試験

こちらの試験では、布状の試料に対してさまざまな摩耗・摩擦による損傷を加えます。摩耗試験機にはいくつか種類があり、複合素材技術グループでは、研磨紙で生地に穴が開くまでの回数を測定するユニバーサル形、JIS規格に定められた摩耗輪で生地を削るテーバ形を保有しています。(図4-1,2)そのほか、糸同士を摩耗する糸摩耗抱合力試験機や、平坦なプレート表面を摩擦できるように学振形摩擦試験機の試験片台を平面にした試験機などもあります。(図4-3,4)これらの試験機は、摩耗強度の比較、使用時の擦れの再現、表面加工の耐久性評価など、用途に応じて使い分けられています。

※そのほかの摩耗試験は、墨田支所で実施可能なものがあります。

図4 各種摩耗試験機(1ユニバーサル形、2テーバ形、3糸摩擦抱合力試験機、4学振形摩擦試験機)

防水性試験

繊維製品のもつ各種機能性の評価も可能です。一例として、テントやレインコートなどの生地における防水性試験(JIS L 1092)があります。防水性には大きく分けて、耐水性(水を通さない性質)、はっ水性(水をはじく性質)があり、それぞれを評価する試験装置があります。耐水度試験では、生地に水圧をかけ、水滴が生地から3滴出てきた際の圧力を測ります。(図5 左)はっ水度試験(スプレー試験)では、生地にスプレーノズルから水をかけた後、生地に付着した水滴や生地の湿潤の度合いを目で見て、等級を判定します。(図5 右)洗濯試験や耐候性試験と組み合わせることで、防水性能や防水加工の耐久性を評価することもあります。
電子機器などの防水試験とは異なります。
 

図5 耐水度試験機(左)とはっ水度試験装置(右)

洗濯試験

複合素材技術グループでは縦型洗濯機を保有し、いずれもJIS L 1930の洗濯方法のほか、各洗濯工程(洗濯・すすぎ・脱水)の回数と時間のコントロール、水温設定などが可能です。(図6)衣類に使用する生地が、洗濯によってどの程度寸法が変わるかを測定し、その結果は洗濯表示の指標として用いられます。近年では、スマートウェア衣料が日常の繰り返し洗濯に耐えられるか、衣類に付属するスマートタグなどの接着が剥がれないかといった洗濯耐久性評価にも使用されます。

図6 自動洗濯試験機

※ドラム式洗濯機による洗濯試験は墨田支所で実施可能です。

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