レーザーアブレーションICP質量分析装置
公開日:2025年6月2日 最終更新日:2025年6月2日

- 酸処理などの時間がかかる手順を省略し、固体試料に含まれる元素を迅速に分析できます。
- 固体試料の数十μmの領域において、微量元素(μg/g)から主要元素(wt%)までをピンポイントで分析可能です。
レーザーアブレーションICP質量分析装置の特徴
レーザーアブレーションICP(誘導結合プラズマ、Inductively Coupled Plasma)質量分析装置は、その名称のとおり、レーザーアブレーション装置とICP質量分析装置を組み合わせた装置です。レーザーアブレーション装置では、固体試料にレーザー光を照射することで、試料の一部を微粒子化します。その微粒子をヘリウムガスなどで搬送し、ICP質量分析装置へ導入して測定することで、分析試料に含まれる元素の種類と量を調べられます(※1)。
通常、ICP質量分析を用いて固体試料に含まれる元素を分析する場合は、固体試料を酸分解などにより溶液化する必要がありますが、その作業に長時間を要することも少なくありません。レーザーアブレーションICP質量分析では、溶液化が不要で、迅速に分析ができます。また、レーザーを特定の領域に照射することで、数十μm程度の局所分析が可能です。
都産技研ではご要望に応じて、次に紹介する2種類のICP質量分析装置(四重極型と飛行時間型)を使い分けて対応が可能です。
※1 分析可否は測定元素や共存元素、ご希望の測定濃度、分析試料の形状など多くの要素に依存します。
四重極型と飛行時間型のICP質量分析装置
どちらのICP質量分析装置でも、レーザーアブレーション装置で生成した微粒子をアルゴンプラズマ中に導入し、含有される元素をイオン化します。その後、そのイオンを質量ごと(正確には質量電荷比ごと)に分離して個数を測定します。しかし、両者でその分離の機構が異なります(図1)。 主に着目したい元素が決まっていて、可能な限り低濃度まで分析したい場合は四重極型、(特定の元素の分析というよりは)何が含まれているかを広く調べたい場合は飛行時間型、というように使い分けています。

四重極型ICP質量分析装置を用いた支援事例
四重極型ICP質量分析装置を用いた分析では、図2のような時間分析を行うことで、レーザー照射前後の信号強度の変動から、特定の元素の検出有無を調べることが可能です。濃度がμg/gを下回るような微量元素から、wt%オーダーの主要元素まで調べることが可能で、 ICP質量分析装置で測定しづらい元素(例えば、カリウム、カルシウム、鉄など)も、その元素に特化した装置条件で分析できます。また、試料表面上を線状に走査しながらレーザーを照射することで、照射範囲内での元素含有量の変動を調べる分析(線分析)を実施することも可能です(※2)。
※2 線分析のみでは信号強度の変動しか得られないため、量(濃度)の変動については、定性的な情報(例えば、測定範囲内のある領域において、他の領域より多いか少ないかについて)しか得られません。量についての具体的な情報を得るには、後述の定量分析が必要です。

飛行時間型ICP質量分析装置を用いた支援事例
飛行時間型ICP質量分析装置を用いた定性分析は、四重極型に比べ、分析感度は劣るものの、一度に多くの元素を広範囲にわたって分析できます。定性分析からは図3のようなマススペクトルが得られ、測定範囲内でどの元素が検出されるかを調べられます。四重極型ICP質量分析装置と同様に、線分析を実施することも可能です。

レーザーアブレーションICP質量分析装置を用いた定量分析
上記では元素の検出有無に着目した分析例を紹介しましたが、適切な標準試料があれば、分析試料中の濃度を求める定量分析を実施することも可能です。標準試料は、分析試料(未知試料)と似た組成を有し、測定元素の濃度が既知である必要があります。ガラスやケイ酸塩試料であれば、都産技研で所有している標準試料を用いて定量分析を行うことができます。その他の試料については、適した標準試料をご提供いただければ、実施可能です。
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