製品開発をサポートする電子機器の評価装置(EMC試験および防水試験)
公開日:2024年11月15日 最終更新日:2024年11月15日
多摩テクノプラザでは、EMC試験や防水試験などの電子機器の評価が可能です。国際規格に準拠した試験設備が整っておりますので、ぜひ製品開発にご活用ください。
放射イミュニティ試験
放射イミュニティ試験は、外部からの電波に対する電子機器製品の耐性を確かめる試験です。ラジオや携帯電話などの電波を模した試験信号を生成して、アンテナから製品に向けて放射し、誤動作が起きないことを確かめます。
これまで都産技研の放射イミュニティ試験は、80 MHzから6 GHzの周波数帯の試験に対応していましたが、2024年度からは、より低い周波数帯域である26 MHzから80 MHzの試験にも対応しました。これにより、電動車椅子を対象とした国際規格ISO 7176-21をはじめ、低周波数帯の評価を要求する試験を実施可能となりました。
試験方法は、民生機器向け国際規格 IEC 61000-4-3に準拠しています。試験用のテーブル上に縦1.5 m×横1.5 mの範囲で、電界強度が規定の範囲内に収まる領域(電界均一面)を設け、均一に電磁波が照射できるよう構成します。試験対象の製品は、照射される面と電界均一面が一致するように配置し、評価を行います。これを製品のすべての側面(正面や背面など)について繰り返します。
【仕様等】
対応規格:IEC61000-4-3
周波数帯域:26 MHz – 80 MHz
※80 MHz – 6000 MHzは別設備で実施可能。
放射電界強度:最大20 V/m
変調方式:AM、PMに対応
電界均一面のサイズ:1.5 m×1.5 m
アンテナ型式:ATR26M6G-1
近傍界測定システム
先ほどの放射イミュニティ試験では「外部からの電波の影響を受けないか」を確かめましたが、逆に「外部に影響を与えるようなノイズが発生していないか」も確かめる必要があります。これを放射エミッション試験と呼び、その評価を行う装置のひとつが近傍界測定システムです。
近傍界測定システムでは、主に電子基板において、ノイズが発生していないか、発生しているなら発生源はどこかを確かめます。装置はシールドルーム内に設置されており、外部からの電波やノイズの影響を受けません。スタート地点を決め、測定範囲や高さ、測定間隔などを設定すれば、自動的に電子基板全体のノイズ測定が行われます。測定結果は周波数帯ごとにまとめられ、ノイズレベルごとに色分けされたカラーマップでの確認も可能です。ノイズレベルが大きい箇所は赤で表示されるため、ノイズの発生源を可視化することができます。
電波暗室を使用した大掛かりな試験に比べ、近傍界測定システムはコストを抑えられるというメリットがあります。開発段階では、電子基板の検証や問題対策に近傍界測定システムを活用し、最終的に完成した製品を電波暗室で評価する使い分けも有効です。
【仕様等】
低周波磁界プローブ:MP-10L 150kHz~1GHz
高周波磁界プローブ:CP-2S 10MHz~18GHz
電界プローブ:W07E 1MHz~1.5GHz
走査範囲:X軸/Y軸:370mm、Z軸:100mmθ軸:-100° to + 230° deg.
基本画像撮影範囲:170mm X 170mm
電磁界を強く発するICや伝送線路が一目でわかるため、ノイズ源の特定やEMC対策に役立てることが可能です。
指向性のある磁界プローブ等を使用すると、指向性から電流の方向づけ表示が可能です。このことで、電子部品や配線を経由した電流の流れがイメージしやすくなります。
防水試験機
防水試験機は、IEC(国際電気標準会議)が定めた防塵・防水規格の保護等級(IP)のうち、防水についての試験が可能な装置です。車載用のカメラやLEDライトをはじめ、屋外で使用する電子機器等の防水性能を評価します。
都産技研では、2024年5月より防水試験機の運用を開始しました。上面に落ちる水滴による影響を確かめる「IPX1」から、台風レベルの大雨を全方位に散水する「IPX4」、約3 mの距離から1分間に100リットルの水を放水する「IPX6」まで、さまざまな保護等級に準拠した試験が可能です。また、「IPX4K」、「IPX6K」といった自動車部品に特化した保護等級にも対応しています。
防水試験は中小企業からのニーズが高い一方、公設試験研究機関での導入事例が少なく、民間企業での試験に頼らざるをえない面がありました。今回導入した装置は試作品の検証などにも気軽に利用できますのでぜひご活用ください。
IPX6Kでの放水の様子
左から
多摩テクノプラザ
電子技術グループ 副主任研究員
小畑輝
電子技術グループ 副主任研究員
新井宏章
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