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「求心力」と「遠心力」を高め、産業構造の変化に追随する

印刷用ページを表示する 更新日:2023年1月4日更新

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新型コロナウイルスの感染拡大から3年が過ぎ、経済活動は回復の兆しを見せ、産業構造も急激な変化を遂げようとしています。2022年4月より、都産技研では、黒部 篤が理事長に、三尾 淳が理事に就任しました。新たな体制となってからの取り組みと、今後の展望について、3名の役員に話を聞きました。​

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事業化が期待できる研究成果が複数生まれる

――まずは黒部理事長より、新年のご挨拶をお願いいたします。

黒部 2023年の干支は「癸卯(みずのとう)」だそうです。十干の最後にあたる「癸(みずのと)」は、物事の終わりと始まりを意味するとされ、跳ね回るウサギ(卯)と合わせれば「これまでの努力が実を結び、新たな飛躍が生まれる年」となるとのこと。皆さまにとって飛躍の年になることを願うとともに、都産技研としても、技術支援と研究開発のさらなる向上の年になればと思っています。

――2022年度を振り返って、都産技研の現状や、印象残っている取り組みについてお聞かせください。

黒部 2022年4月に都産技研の理事長に着任しました。同時期に理事に着任された三尾理事は都産技研で長らく研究員を務められており、角口理事は国の機関である産業技術総合研究所のご出身、そして私が企業の出身ということで、とてもバランスの良いメンバーであると感じています。

長らく企業文化で育ってきましたので、公設試である都産技研での取り組みについては両理事にも相談しつつ進めているところです。10月には組織体制を改編し、技術支援や研究開発の部門と、それをサポートする企画部や総務部といった部門を明確に切り分けることで、組織全体の効率化を図りました。組織横断的にチームを組んで課題解決に取り組む「CFT活動」や、組織運営側と技術者の会話の場として「研究意見交換会」などもスタートさせ、フラットな組織作りを進めています。

 

黒部理事長の写真

 

角口 研究事業においては、大学との共同研究にて、非常に興味深い研究成果がいくつかあがっています。がん患者の苦痛を和らげる全く新しいステント(管状医療器具)や、より高性能かつ高効率な金属3Dプリンター、センシング材料への発展が期待できる圧力測定フィルムなどの研究開発がなされ、特にステントの研究成果は世界的にも高い評価を受けています。今後は企業・大学・都産技研の3者による共同研究により、製品化・事業化へつなげていければと考えています。

また、都産技研におけるDX推進の一環として、研究成果のデータベースである「機関リポジトリ」を整備しています。過去の研究成果や論文を簡便に参照できることで、協創的研究の活性化を図る狙いです。

三尾 コロナ禍で積極的な支援が難しい状況が続いていましたが、2022年度は依頼試験や機器利用といった支援サービスの利用者数がほぼ回復してきており、経済活動が本格的に動き出したことを感じています。また、セミナーや講習会といった人材育成、クロスミーティングなどの情報発信については、一昨年から急きょオンラインに切り替えて対応していましたが、「在宅勤務でもセミナーに参加できる」といったメリットもあり、今年度はオンラインとオフラインのハイブリッド開催としました。多くのお客さまにご参加いただくことができており、今後もさらに最適な形を追求していければと思っています。

 

「求心力」と「遠心力」のバランスを保つ

――改めて、都産技研の強みや改善すべき点についてお聞かせください。

黒部 私は、企業における研究には「求心力」が、都産技研をはじめ公設試における研究には「遠心力」が働いていると考えています。企業はビジネスを成功させるという前提から、研究対象となる領域はある程度定まっており、競争により先鋭化しがちです。これは特定のテーマに向かう力、「求心力」が働いていると言えます。

対して都産技研は、中小企業の技術支援という前提から、幅広いテーマ(課題)に個々に対応せねばなりません。外に向かう力、「遠心力」が働いていると言えるでしょう。各テーマへの対応力は都産技研の強みではありますが、遠心力のみでは力が分散し、どうしてもテーマ自体が小ぶりになってしまいます。将来にわたり中小企業を支えるためには、遠心力と求心力のバランスを勘案せねばなりません。また、技術支援と研究開発の「二兎を追う」ことが必要で、両方を追求する姿勢こそが本物の研究者をつくると信じています。

角口 研究テーマが小ぶりになりがちなのは、私も感じているところです。せっかく各分野の研究者が揃っているわけですから、大きなテーマの研究を共同で立ち上げるなど、連携に向けた取り組みをもう少し進められたらと考えています。

他の公設試と比べても、都産技研の研究環境は非常に恵まれていますし、それらの機器を使いこなせるだけのスキルと知見を持った研究員が数多くいることも強みのひとつです。だからこそ、組織的にうまく分担し、協力して研究に取り組めば、大きなシナジーを得られるはずです。

 

角口理事の写真

 

三尾 どんな製品も、一つの技術分野だけでつくり上げられるわけではありません。個々の情報をいかに組み合わせて、産業構造の変化についていくかが重要になります。その意味で都産技研は、中小企業との関わりから多くの情報が集積される場所であり、情報の利活用の面で大きな強みを持っていると言えるでしょう。

一方で、都産技研自体の情報発信については、少々弱い部分があることも事実です。研究内容の説明などはどうしても表現が硬くなりがちですので、中小企業の皆さまや一般の方にも伝わるような表現手法を考えて、PRに活かしていかねばと思っています。

 

変わる産業を支えるには、私たちも変わらねばならない

――第4期中期計画の理念である「頼りになる都産技研」を目指し、今後どのような活動を行っていくのでしょうか。次年度への抱負も含めお聞かせください。

黒部 研究テーマをより深めるため、大きなテーマの「くくり」を提示できないかと考えています。ここでいう「くくり」は、個々の技術に特化したようなテーマではなく、気候変動のような社会課題レベルのイメージです。とはいえ、大きなテーマには先行研究も豊富にあり、中小企業が参入できる規模にテーマをブレイクダウンする必要もあるでしょう。方向性を定めるには時間がかかるかもしれませんが、今後の都産技研の在り方を見据えて、前向きに取り組んでいければと思います。

角口 気候変動のテーマについては、​エネルギーのHTTに着目した脱炭素化(カーボンニュートラル)への取り組みと共に、サーキュラーエコノミーを​大きな柱として検討しているところです。コロナ禍の今は、経済と社会と環境のバランスが崩れた状態だと言えます。天然の資源​を節約しながら経済を回すには、サーキュラーエコノミーは避けて通れません。その中で我々ができることを、中小企業の皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。​

三尾 近年、産業構造が急激に変化し、既存産業にも影響が出始めています。例えばガソリン車から電気自動車への移行は、既存の部品メーカーにとっては死活問題です。特に中小企業においては、不安を抱えている方が多くいらっしゃいます。そうした皆さまに十分な支援を届けるには、私たちも産業構造の変化についていけるよう、努力を重ねなければなりません。自分たちの専門分野に留まらず、その領域を広げていきながら、サービスを向上させていきたいと考えています。​

 

三尾理事の写真

黒部 本当にそうですね。都産技研の設立100周年記念事業では「変わる産業 変わらない使命」をコンセプトとしていましたが、変わる産業を支えるには、自分たちも変わらなければ使命を果たすことはできません。この100年で産業構造がどれだけ変わったかを考えれば、常に進化するつもりで動かないと、すぐに置いていかれてしまうでしょう。そうした絶え間ない流れの中で、新たなビジネスの種を少しでも残せるよう、引き続き技術支援と研究開発に取り組めればと思います。

 


 

(外部リンク)

集合写真

左から

理事 三尾 淳(みつお あつし)

理事長 黒部 篤 (くろべ あつし)

理事 角口 勝彦(かどぐち かつひこ)

 

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