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紙パウダーと生分解性樹脂の「生分解MAPKA®️」による食器の開発

印刷用ページを表示する 更新日:2022年5月1日更新

製品写真

都産技研が2019年度から実施している「プラスチック代替素材を活用した開発・普及プロジェクト」で、都産技研と株式会社環境経営総合研究所は、生分解樹脂と紙パウダーのコンパウンド樹脂の開発・製品化に取り組みました。
2年をかけて行われた共同研究の成果は、サンプルとしてEU企業や大手総合商社へ提供され、
MADE IN JAPANの生分解製品として普及を図ることになりました。共同研究はどのように進められたのか、株式会社環境経営総合研究所の羽貝 泰昭 氏、市橋 佐知子 氏に話を聞きました。

(外部リンク)

「石油由来を減らす」ことからの発想の転換

株式会社環境経営総合研究所は、紙を粉砕して30μのパウダーにする特許技術を持ち、紙パウダーを主原料としながらも、従来のプラスチック材料と同様に成形できる素材MAPKA®️を主力製品として展開する企業です。

 

ペレットの写真

MAPKA®️ペレット

 

MAPKA®️はポリオレフィン系樹脂をバインダーとして、51%まで紙パウダーの比率を高めることができますが、石油由来をより減らすという同社の目標や、市場からの要請がある中、紙パウダー率を51%以上にすることについては、限界に達していました。

「51%以上紙パウダーが入っていれば非プラスチック素材として流通させることができますが、半分プラスチックというのは、聞こえようによっては『半分しか減らせていない』ということになると思うんです。技術的な限界に達していたのですが、そこへ都産技研から『プラスチックの代わりに生分解樹脂を用いてはどうか』というお話があり、減プラスチックから考え方を変えて、紙を含めて全てをバイオマスとした製品という方向に切り替えて共同開発をスタートすることになりました」(羽貝氏)

今回の共同研究において、生分解樹脂については市場性を考慮した最終製品が開発できることを実証。ビアタンブラー、日本酒容器及び発泡の菓子皿の開発に至りました。

 

雷鳥をモチーフに、「紙由来」を表現した秀逸なデザイン

「今回、デザインの部分で都産技研さんの協力を得られたのは大変大きなメリットでした。私どもは素材メーカーですので、当然インハウスでデザイン部門を持つこともないですし、最終製品から発想するということもなかった。デザインから3Dプリンターによるモックの製作までスケジュールに組み込めることで、成形会社とゴールの金型、最終製品のイメージを共有することができました」(羽貝氏)

それは、飲み口の形状による触感の違いの確認や、持ち手のある容器など根本的な形状の検討、さらには実際に持った時の微妙な雰囲気の違いの確認などに、度重なるデザインの検討と3Dプリンターによる試作が役立ったといいます。

 

試作品の写真
試作品

3Dプリンターによる試作品

 

「単純な(生分解含む)プラスチックなら比較的簡単にできることも、相反する特性を持つ紙を含むこの樹脂では難しいことが多くあります。飲み口の形状もまだ完成とは言えないけれども、試作を何百個も作って、なんとか納得できるところまで辿り着きました。都産技研のデザイン技術の研究員さんも、私どもからのフィードバックを受けて、可能な中でなんとかより良いデザインに近づけようと努力をされたことと思います」(羽貝氏)

また、開発段階ですでに立案されていた製品プロモーションに基づいて、デザインは進められました。

「徳利は鳥、雷鳥をイメージしています。そしてお猪口は重ねるとその卵になります。雷鳥が多くいる土地の酒屋さんと組んだプロモーションを企画していたのですが、地場の特色と酒器としての機能を両立させた素晴らしいデザインです。さらには、原料に紙を用いているという特徴を水引や熨斗のデザインで表現していただきました」(羽貝氏)

また、酒器であるために、アルコールによる変化に関しては当初から危惧されていたといいます。

「当然ながらこれまでこの樹脂におけるアルコールに関する知見はありませんので、開発後すぐに物性のテストを行い、熱燗の温度帯である60度のアルコールでも問題ないという結論を得ましたので、ほっとしました。このアルコールによる変化の試験だけでなく、強度などを含むあらゆる物性評価において都産技研の幅広いサービスを利用させていただき、客観的評価を得られたのは、今後のビジネスとしての展開において大きな要素だと考えています」(羽貝氏)

 

紙パウダー含有であることの意義と今後の展望

その物性評価の中で、今回の共同研究の新たな意義も見つかりました。活性汚泥法による生分解性試験において、紙パウダー含有の生分MAPKA®️では、PLA樹脂単独、PBS樹脂単独に比べて分解性が早いことがわかったのです。これにより、生分解樹脂に紙パウダーを混ぜることの、環境負荷低減に対する具体的なメリットが明らかになりました。
 

生分解率のグラフ

活性汚泥法(28日間)の生分解度(%)

 

そして、今回の取り組みに追い風となるような社会的な流れも加速してきました。

「今年(2022年)4月1日からプラスチック資源循環促進法という新しい法律が施行されました。3Rにプラスして再生可能資源への代替促進を含むこの法律において、燃えるゴミとして扱える既存のMAPKA®️は大きく関係してきますが、さらに生分解スピードを早める生分解MAPKA®️というアプローチも可能になることで、大きく社会に貢献することができると考えております」(市橋氏)

「今回、弊社においてはあきらめていたMAPKA®️のブロー成形が、実は可能であることに気付くことができました。さらに高まる脱炭素などの世界的な機運とコミットメントがある中、新しい素材や製品の開発に取り組めたらと考えております。」(羽貝氏)

 


 

(外部リンク)


事業化支援本部 技術開発支援部
製品化技術グループ 主任研究員

加藤 貴司(かとう たかし)


共同研究先

羽貝氏の写真

株式会社環境経営総合研究所

企画営業2部 部長 兼 ディレクター

羽貝 泰昭(はがい やすあき)氏

市橋氏の写真

株式会社環境経営総合研究所

企画営業2部

市橋 佐知子(いちはし さちこ)氏

 

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