Q34:スクリーニング分析によってRoHS(II)指令の対象物質が検出されなければ非含有と考えて良いでしょうか?
最終更新日:2025年3月3日
簡易分析と精密分析
スクリーニングにおいては、ある程度の知識や専門性の高い方による分析とデータ解析が重要になります。
測定値が許容濃度以下であれば非含有と判断して問題ありませんが、グレーゾーンの場合には、精密分析の実施が必要になります。
特定有害化学物質の分析方法 IEC 62321
RoHS(II)指令における特定有害化学物質の分析方法は、IEC 62321(電気・電子機器中における特定物質の定量)シリーズとして規定されています。
IEC62321-1の一般的な分析フローでは、
- 均質材料について特定有害物質の含有量が十分に許容濃度以下に収まっているかどうかを確認(スクリーニング)
- スクリーニングで特定有害物質の含有量が許容濃度以下に収まっていると断定できない分析結果が出た場合(グレーゾーンの場合)には精密分析を実施
としています。
なお、許容濃度は、測定濃度値に測定バラツキ(3σ)を加味した値として規定されています。
鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEのスクリーニング
蛍光X線分析によるスクリーニング
鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEのスクリーニングは、IEC62321-3-1で採用された蛍光X線分析になります。
蛍光X線分析は、簡単な操作によって非破壊分析を行える、という点が長所ですが、試料の大きさ、厚さ、密度や複合材料などによっては正しい値が得られない場合があります。
蛍光X線分析を効率的に活用するためには、原理と弱点を知ることが大切になります。
測定を外部に委託する場合、測定対象の試料が均一で厚みのある標準的ではない試料の測定においては、試料(測定対象)に関して、蛍光X線分析の知識のある方との情報共有が重要です。
測定値そのものではなく、スペクトルの重なりなどを考慮し、試料の情報を加味したデータで最終判断を行います。
蛍光X線分析によるクロムの検出
蛍光X線分析のデータはすべて金属元素として検出されます。
クロムの場合は全クロム(トータルクロム)として検出されるため、金属クロム・三価クロム・六価クロムの区別ができず、この検査だけでは六価クロムのみの濃度は判明しません。
PBB、PBDEについても同様で、トータル臭素としては測定できますが、PBB、PBDEの濃度はわかりません。
フタル酸エステルの分析
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(Py/TD-GC/MS)
2019年7月22日から新たに追加されたフタル酸エステル4物質(DEHP、DBP、BBP、DIBP)は、水素、炭素、酸素のみから構成される有機化合物であり特徴的な元素が存在しないため、蛍光X線分析で測定することができません。
そのため、フタル酸エステル4物質のスクリーニングには、IEC 62321-8で採用された熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(Py/TD-GC/MS)が利用されています。
IEC 62321-8の附属書Nには、分析フロー例が記載されていて、測定値が500 ppmであれば非含有、1,500 ppmであれば含有と判定し、500 ppmから1,500 ppmの場合には精密分析で再検査する、としています。
Py/TD-GC/MSによるスクリーニングは、蛍光X線分析と比較して、煩雑な操作でデータ解析も難しいため、より専門性の高い方による分析が必要になります。
新たな分析方法
フタル酸エステル4物質の新たなスクリーニングとして、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を採用したIEC 62321-3-4の標準化(外部リンク)が進められています。