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12 RoHS(II)指令は電気・電子製品を対象としていますが、電気・電子製品以外の製品にも化学物質規制はありますか?
製品の安全性
一般製品安全指令(GPSD)
全ての製品に共通の製品安全を要求するEUの法令として、一般製品安全指令(General Product Safety Directive GPSD: 2001/95/EC)があります。
この法令は「消費者による使用を目的とする全ての製品、あるいは消費者による使用を目的としていなくとも、合理的に予想される状況の下で消費者に使用されることがありえると思われる製品」が対象です。その第2条には「“製品”とはいかなる製品も意味する」とあり、第3条では「製造者は安全な製品のみを上市すること」を要求しています。
- 参考1:CEマーキングの対象でない製品は、何もせずにEUに輸出しても良いのでしょうか?
(2023年5月15日Web版)
一般製品安全規則(GPSR)
2023年6月12日に(EU)2023/988:一般製品安全規則(外部リンク)(General Product Safety Regulation:GPSR)が施行され、2024年12月13日から適用が開始されます。
消費者向け製品に対するサイバーセキュリティーやオンラインマーケットプレイスなどにも対応させ、より高いレベルでの消費者保護を目指すとされています。
製品含有化学物質
EUでは、製品全般において化学物質使用の安全性が要求されており、この原則を踏まえて、電気・電子製品を対象にしたRoHS(II)指令のように、特定の製品分野においても含有化学物質規制が定められている場合があります。
代表的なものとして、以下のような法令が挙げられます。
ELV指令(Directive 2000/53/EC)
ELV指令(ELVとはend-of life vehicles(使用済み自動車)の略)は、EUの自動車に対するリサイクル要求と有害物質の使用低減を目的とした法令です。規制対象物質は鉛・水銀・カドミウム・六価クロムで、最大許容濃度はRoHS(II)指令と同様です。
玩具安全指令(Directive 2009/48/EC)
玩具安全指令は、14歳未満の子供が使用する玩具の安全性を要求する法令です。CMR(発がん性/変異原性/生殖毒性)物質、アレルギー性香料などの有害物質の含有を制限している他、アルミニウム、アンチモン、ヒ素等、計19物質の玩具からの移行量の上限を定めています。
- 参考:MTEP海外法規制に関する解説テキスト「玩具安全指令」
電池指令(Directive 2006/66/EC)
電池指令は、全てのタイプの電池および蓄電池の上市からリサイクル、処理のライフサイクル全般にわたって環境への影響を抑制することを目的とした法令です。水銀、カドミウムおよび鉛についての最大許容濃度やそれらを超えて含む場合のシンボルマークによる表示等が要求されています。
なお電池指令は「欧州グリーンディール」の目標達成のための「新循環経済行動計画」に基づき、2020年12月、従来の指令(Directive)から規則(Regulation)への改定案が採択されています。
REACH規則(Regulation (EC)1907/2006)
REACH規則 前文第86節では「成形品中の化学物質の使用において、人の健康と環境を高いレベルで確保するためのリスク管理は製造者や輸入者の責任である」と記されています。
REACH規則は、総合的な化学物質管理の法令です。第56条(認可)において、製造者、輸入者または川下使用者は、物質が付属書XIVに含まれる場合、原則として認可を受けた場合を除き、その物質を使用する(成形品に組み込む等の)ために上市、または自ら使用してはならない、と定めています。
また、第67条(制限)では、附属書XVIIに制限が規定されている物質そのもの、混合物または成形品に含まれている物質については、制限の条件に合致していない場合には、製造、上市または使用してはならない、と定めています。特に、玩具へのフタル酸エステル類の使用制限、皮革製品への六価クロムの使用制限など、特定の製品や用途について規定していますので最新の記載状況には注意が必要です。
それぞれが要求する事項への適合が必要
以上のように、EUではさまざまな製品における有害物質の含有制限を目的とする法令があります。
幼児向けの電動玩具などはRoHS(II)指令の対象である電気・電子製品であると同時に、玩具として玩具指令やREACH規則第67条(制限)および附属書XVIIの対象になるため、取り扱う製品がどの法令の対象になるかを的確に把握して、それぞれが要求する事項への適合を確実にする必要があります。