電子スピン共鳴装置
公開日:2026年2月2日 最終更新日:2026年2月2日

電子スピン共鳴装置は、物質中のフリーラジカル※1の磁気的性質を利用してマイクロ波の共鳴吸収※2を測定することで、分子構造についての情報や、ラジカル量を測定することができます。
非破壊での時間変化の測定が可能で、ラジカルが関与する反応や材質劣化、品質保証の手段としても利用されています。
※1 ラジカル・フリーラジカル:不対電子(ペアになっていない電子)を持つ原子や分子、イオンのことを指し、何らかのきっかけ(光や熱、放射線など)でラジカルが発生します。
※2 共鳴吸収:ある物質に特定の周波数の電磁波を当てたとき、その物質がそのエネルギーを特によく吸収する現象。
装置の特徴
都産技研では、日本電子株式会社製(JES-X320型)の電子スピン共鳴装置を保有しています。本装置は、一般的に使用されるXバンド(9 GHz帯)だけでなく、Qバンド(36 GHz帯)にも対応しており、より詳細なスペクトル分離が可能です。
測定温度は、低温測定(液体窒素温度(-170℃)~室温)、または高温測定(50℃~400℃)の設定が可能です。低温測定では、室温では不安定なラジカルの測定が可能です。(ただし、ラジカルの種類によります。)高温測定は、高分子の熱分解により生成するラジカルを測定できます。
また、高圧水銀ランプやキセノンランプと光学フィルターを組み合わせることで、可視光や紫外光を波長選択し、その光照射によって生成するラジカルの測定もできます。さらに、紫外線照射と液体試料混合装置を組み合わせて使用することで、OHラジカルなどの活性酸素種の消去能評価も可能です。
活用事例
図1はOHラジカル消去能を評価した事例を示しています。横軸が磁場 、縦軸が共鳴吸収による信号強度で、4本のピークはOHラジカルを捕獲して生成したラジカルからの信号を示しています。OHラジカルの消去が可能である抗酸化物質の添加量がない(0 μM(mol/m3))場合と比べて、1 μM, 5 μM, 10 μMと添加量が増加すると、OH由来のラジカル生成量が減少します。

図2はサンスクリーン剤(日焼け止め)の紫外線吸収効果を評価した事例です。図1と同様、横軸が磁場、縦軸が共鳴吸収による信号強度です。日焼け止めにより、紫外線照射時に生成するラジカル(過酸化脂質を捕獲したラジカル)が減少します。(グラフ中の「Mn」は、基準として加えたマンガンの信号です。)
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図3は照射食品※3を評価した事例を示しています。図1と同様、横軸が磁場、縦軸が共鳴吸収による信号強度です。今回は、照射食品としてマンゴーを使用しています。図3からわかるように、糖を含んだ食品に放射線照射すると、糖(ショ糖)のラジカルが生成します。(グラフ中の「Mn」は、基準として加えたマンガンの信号です。)

図4はアモルファスシリコン中に生成したダングリングボンド※4を測定した結果です。ダングリングボンドの生成量を確認でき、劣化の程度を評価することができます。(グラフ中の「Mn」は、基準として加えたマンガンの信号です。)

※3 照射食品:食品や農産物に放射線を当てて、殺菌や保存期間の延長、発芽の抑制などを目的として処理された食品。
※4 ダングリングボンド:材料の中で、本来つながるはずの原子同士が結合せず、原子の“手”が余った状態。電子部品や太陽電池などに使われるアモルファスシリコンなどでよく見られ、材料の性質に影響を与えることがあります。
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