【墨田支所】温熱特性評価による支援紹介
公開日:2024年11月1日 最終更新日:2024年11月12日
夏の猛暑から冬の節電による脱エアコンまで、私たちを取り巻く温熱環境は様々な課題を抱えています。墨田支所では生活に身近な衣服素材から様々な実証実験が可能な環境試験室まで、幅広く温熱特性評価機器を保有しております。今回はその一部をご紹介します。
- 繊維素材の断熱性能がわかる保温性試験機
- 衣服製品の保温性能がわかるサーマルマネキン
- 気体の流れを可視化する流体可視化装置と環境試験室
保温性試験機
装置の特徴
保温性試験機(図1)では、JIS L1096織物及び編物の生地試験方法の保温性A法(恒温法)に準拠した試験が行えます。36℃に設定した熱板の上に試料を載せ、2時間当たりに必要とされる電力量から保温率を算出します。300×300 mmの試料を熱板に載せるだけで、自動で保温率が得られます。シンプルな手法で、衣料品のほか、毛布、ダウンなど測定対象の厚さを問わず、幅広い素材の断熱性能が評価できます。
測定例
図2は都産技研のTシャツ、作業着、防寒用作業着の生地と市販のスウェット生地、ライトダウン生地の保温率です。Tシャツ素材からスウェット素材であれば20~30%程度、冬用のダウンや防寒用素材は70%ほどと、2倍以上の差があることがわかります。
サーマルマネキン
装置の特徴
実際の人肌のように、30~34℃程度まで発熱することが出来るマネキンです。墨田支所では、全身女性型と上半身男性型の2人がいます(図3)。上半身男性型は、帽子や手袋など小物アイテムの評価も可能です。前述の保温性試験機は平面状の試料しか測定できませんが、サーマルマネキンを使用することで衣服の製品形状のまま保温性を評価することが出来ます。衣服全体の製品の保温力をclo(クロー)という単位で表現できるほか、胸部や背中、上腕など部位ごとの保温力を把握することが可能です。
測定例
図4は、全身女性型サーマルマネキンを用いて、都産技研のポロシャツ作業着と半袖作業着、長袖作業着の衣服の保温力を示すcloで表した結果です。数値が高いほど保温力が高いことを意味します。ポロシャツと半袖作業着では重ね着による保温力の差が、半袖と長袖では被覆面積による保温力の差があることがわかります。図5は、マネキン各部位の熱抵抗(cloと同じく保温力の高さを示す単位)の比較です。厚着をするほど、体幹部や腕部の熱抵抗が上昇することがわかります。このように、サーマルマネキンは各部位の熱抵抗を比較することもできるため、製品の特長や改善点などを明らかにすることが可能です。
流体可視化装置
装置の特徴
快適な温熱環境評価には、気流の流れを把握することが重要です。流体可視化装置(図6)は、煙(トレーサー)の流れを高速度カメラで撮影することで気流を可視化し、方向や速度などの解析を行うことができる装置です。高速度カメラと煙を発生させるスモーク発生器、そして光源(LED)から構成されます(図7)。実験場所は日射環境試験装置・副室内になります。原則として、当センターのスモーク発生器のご利用となりますが、お客様持ち込みの製品が出す水蒸気も、加湿器程度の量であればご利用いただけます。
測定例
図8は試験対象にサーキュレータを用いた事例です。気流の向きと強さが矢印で表現されています。赤になるほど強く、青になるほど弱い気流であることを示しています。このほか、ドライヤーなど、強制対流を発生させる機器の解析に適しています。なお、塗料や油等の噴霧、咳やくしゃみによる飛沫の測定はできません。
図8 流体可視化装置を用いたサーキュレータの測定例
墨田支所ではこのほか、機器利用にてお客様にご利用いただける恒温恒湿槽や温湿度センサー、風速計などもございます。お気軽に墨田支所までご相談ください。
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