【役員鼎談】 「頼りになる都産技研」であり続けるために、技術支援の裾野を広げ、研究の成熟度を高める組織に進化していく
公開日:2026年4月1日 最終更新日:2026年4月1日

2026年3月に第四期中期目標期間が終了しました。この5年間で都産技研はどのような成果を生み出してきたのでしょうか。第四期中期計画を振り返るとともに、第五期中期計画の方針や展望について3名の役員に話を聞きました。
着実に成果を拡大してきた5年間
――第四期中期目標期間が終了しました。組織運営全体について振り返りをお願いいたします。また、特徴的な取り組みなどあればお聞かせください。
黒部 総括という意味では、第四期当初の目標やKPIはすべて達成することができました。また、各種学会や東京都から名誉ある賞を数多く受賞し、都産技研の評価委員の方々からも「年を追うごとに成果が着実に拡大している」とコメントをいただいております。研究員をはじめ、管理職やスタッフなど、職員一人ひとりの粘り強い取り組みのおかげです。この場を借りて感謝申し上げます。
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特徴的な取り組みとしては、複線型人事制度を導入いたしました。副参事以上で管理職の職能に限定せず、卓越した研究遂行能力を有する人材も処遇する仕組みを設けたことで、将来「都産技研の顔」となる大型研究者が輩出されることを期待しております。また、組織運営では、組織全体の進捗を「見える化」し、議論を加速させるために、5つの会議体の設置などに取り組みました。現在地を確認しながら、将来の方向性を議論できるように、今後もさらに進化させていきたいと考えています。
第四期中期計画の研究開発と支援事業
――第四期の研究開発について、具体的な取り組みや成果についてお聞かせください。
角口 第四期当初は、研究成果の価値指標として、SDGsへの貢献に着目していました。しかし、中小企業の支援業務という立ち位置を鑑みると、より身近な目標を設定した方が、研究のモチベーションを高め、貢献度を実感しやすいのではと考えました。そこで第四期途中からは、都政と関連付けた社会課題解決・新事業創出の観点を導入し、「DX」「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ウェルビーイング」「ものづくり関連の産業基盤強化」という5つに類型化した研究開発を進めてきました。
DXについては、製造業やサービス業をはじめ、農作物の光反射から成熟度を推定する技術といった第一次産業や、橋梁の洋上監視システムといった安全・防災分野などにも活用範囲が拡大した5年間でした。カーボンニュートラルについては、海水の直接電解による水素製造用の触媒や、有害元素を含まない熱電変換材料といった、基礎レベルの研究事例も生まれています。
また、サーキュラーエコノミー関連では、100%天然素材の木質ストローや天然素材と生分解性プラスチックのみで作られた食器など、中小企業の製品化への寄与が特筆されます。一方で都産技研でも、プラスチックに含まれるバイオマス由来炭素の簡易定量化技術などの研究成果が、学会表彰や大手新聞への掲載に結実しており、内外で高く評価されています。
ウェルビーイングでは、医療や福祉関連の製品化支援のほか、小麦代替材料を含む麺の製品化や、ニホンウナギの脂肪につながる細胞の培養技術といった、食に関する研究も特徴的でした。そして、最も件数の多いものづくり系の研究では、人工尿臭試薬、ファブリック・ヒーター[PDF]、精密加工機の自動水平出し装置、土壌水分センサーなど、さまざまな産業分野においてユニークな製品の創出に貢献してきました。
他にも多くの研究事例があり、中小企業の皆さまと共に東京都の産業界に幅広く貢献できた第四期だったと実感しています。
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――支援事業や所内の取り組みについてはいかがでしょうか。
三尾 第四期は、新型コロナウイルスによるパンデミックからの回復期から始まりました。停滞していた技術支援の各事業は順調に回復し、現在はほぼ従前の支援数に戻っています。中小企業の皆さまへの支援の成果が製品化や表彰に至る事例も増えてきました。
海外展開支援における展開事例も非常に好調で、第四期中の予想を大きく上回る実績となる見込みです。中小企業の皆さまの事業展開意欲とご努力に敬服するとともに、都産技研の技術支援のご利用に感謝しております。また、バンコク支所は拠点を東京都中小企業振興公社タイ事務所の隣室に移し、技術と経営の両面から、より一層連携を強化して支援を行っています。
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所内の取り組みについては、第五期を見据えながら各部門長と定期的に年度計画等の実施状況について議論を進め、PDCAサイクルを回すよう努めてまいりました。各部門長のマネジメントと職員の改善意欲により、第四期の各事業が順調に推移したものと考えています。
また人材育成の取り組みとして、長らく中断していた企業派遣研修を再開したほか、新規採用者の入所3年目発表会を新設いたしました。他にもガバナンス強化として、監事との意見交換の機会を増やし、併せて内部監査の活動状況を共有するなど、活動の定着と意識向上に努めています。
業務のDXも引き続き推進しています。ボトムアップ型の所内DX推進活動を実施し、有効性が認められたものについては、すぐに業務に実装するなど、スピード感を持って業務改善に取り組んでいます。ここ数年で急速に台頭してきたAIについても利用規定を設け、積極的に活用事例を共有するなどして有効な活用方法について議論を進めています。
第五期中期計画における「3つのキーワード」
――2026年度(第五期中期計画)の方針についてお聞かせください。
黒部 第四期は「頼りになる都産技研」を掲げました。しかし、技術は日進月歩で進化し、高度化・複合化がますます加速しています。そのような時代において「頼りになる都産技研」であり続けるためには、我々自身も変化していかねばならないと強く感じています。
このような背景から、第五期では「連携・融合」「プレゼンスの向上」「一体感・進化」の3つのキーワードを掲げました。
まず「連携・融合」について説明します。都産技研の研究員には、技術支援と研究開発の二兎を追う必要があると話しています。将来の技術支援においても適切な対応を続けるためには、現在の研究が欠かせないからという思いがあるからです。
しかし一方で、技術支援は個別のお客さま対応であることから、技術課題がどうしても細切れになる傾向にあると思います。研究そのものも、比較的規模の小さな内容になりがちです。その結果、技術の大きな流れに乗れず、変化のチャンスを逃してしまうのではと危惧しています。
このジレンマを克服するには、研究員同士が連携し、より大きな課題に挑むことが必要です。技術支援においても、連携によってお客さまへの提供価値を最大化することができるでしょう。与えられた課題に対して、技術背景の異なる研究員が臨機応変にチームをつくり対処する手法(チーミング)は「組織学習」と呼ばれています。第五期でこのような試みを行うべく、技術領域を見直して、より大きく括り、組織再編に取り組んでいきます。
また、「連携・融合」は都産技研の内部に限りません。外部の支援機関と連携することにより、点から線へ、線から面へと多面的に展開していくことを期待しています。さらに中小企業同士の連携、すなわちオープンイノベーションの支援強化にも取り組んでまいります。
――「プレゼンスの向上」「一体感・進化」についてはいかがでしょうか。
黒部 都産技研の技術支援サービスを、広く東京都の中小企業の方々にご利用いただくためには、まずは我々の存在を知っていただかねばなりません。それが「プレゼンスの向上」です。広報戦略を随時アップデートしていくとともに、研究員による学会や講演会での発表や論文掲載だけでなく、プレスリリースなどで専門分野での成果をわかりやすい言葉で伝える努力も重要だと考えています。
「一体感・進化」は、組織運営と人材開発に関係するものです。「頼りになる都産技研」であり続けるには、組織も進化させていく必要があります。第四期では、アイテムごとに統一的な議論ができる場として新たな会議体を設立したほか、次世代人材の継続的な輩出を目的に人事・人材開発課を新設しました。引き続き、一体感を持った意思決定を進めていければと思います。
なお、第五期を迎えるにあたり、移行準備プロジェクトとして8プロジェクトを動かしました。また、我々が取り組むべき技術領域を俯瞰するために13のプロジェクトを実行しています。これらのプロジェクトに参加いただいた方々、移行に伴う規程改定など詳細検討に関わられた方々に、改めて感謝申し上げます。
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自由闊達でありながらも規律のある組織に
――第五期中期計画において、研究や支援に関する施策についてお聞かせください。
角口 研究開発では、第五期のキーワードの一つである「連携・融合」に注力してまいります。都産技研内の異分野の技術同士をつないだ研究の推進と、都産技研と中小企業の技術をつないだ共同研究などを通じて、質の高い研究成果の創出を目指していきます。
こうした研究の過程では、AIの効果的な活用も推奨できればと考えています。特に、都産技研オリジナルのAI研究の成果発信にも期待したいと思います。
三尾 技術支援では、中小企業が担う基盤的技術と、スタートアップ等の新事業展開に必要な技術、その両者の支援を目指しています。
その一つが、第五期より新たにスタートする「受託技術支援」です。従来の支援内容では解決が困難な技術課題について、各事業の構成要素を柔軟に組み合わせた支援を行えるようにします。さらに、従来の技術セミナー・講習会に加え、特定のお客さま向けにカスタマイズした講義や実習を提供する「課題解決型研修」を新設します。
海外展開支援では、ガバナンスとサスティナビリティを意識した支援を展開できるよう取り組んでまいります。好評をいただいている海外の法規制に関する解説テキストについても、充実を図りながら提供を続けてまいります。
また、第五期では都内の各拠点の支援機能を見直します。墨田支所は「生活工学センター」の一部として都内の関連分野に対応し、本部の情報システム技術部の傘下として活動します。食品技術センターは、その技術内容から広く都内食品産業への支援のため、本部の化学応用技術部の傘下として活動します。城東支所、城南支所、多摩テクノプラザについては、引き続き地域産業の支援を推進してまいります。
――最後に、職員へのメッセージをお願いいたします。
黒部 組織文化としては「自由闊達でありながらも規律のある組織」が良いと思っています。賢い失敗を奨励し許容するとともに、そこから学習して、より良い都産技研を皆でつくっていきましょう。
角口 新しい技術を積極的に学び、自身やグループの研究や支援に取り込みながら、共に成長することを常に意識していただくよう期待します。
三尾 大都市東京の特徴ある産業を意識し、その持続および発展に貢献する技術支援に、分野を超えて一丸となって取り組んでいただきたいと思っております。

(左から)
理事
三尾 淳(みつお あつし)
理事長
黒部 篤(くろべ あつし)
理事
角口 勝彦(かどぐち かつひこ)
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