床材の遮音性評価「床衝撃音レベル低減量」測定のご紹介
公開日:2025年9月16日 最終更新日:2025年9月16日

「子供が走り回る音が気になる」「上階からの足音が響く」など集合住宅で暮らす上で、床衝撃音は多くの方が直面する課題です。床衝撃音レベル低減量の測定を実施することで、床材による床衝撃音の低減効果を客観的な数値としてPRできます。
本記事では、床衝撃音対策製品の評価に向けた床衝撃音レベル低減量の測定について解説します。
床衝撃音とは
床衝撃音とは、床に衝撃が加わることで発生する音のことです。集合住宅では、子供が飛び跳ねる音や物を落とす音などの床衝撃音が階下に伝播し、居住環境における課題となることがあります。そのため、床衝撃音の低減は、快適な住環境を実現するために重要な要素となります。また、一般的には床面の保護や子供の安全性を確保するために使用されるプレイマットなどの製品も床衝撃音の低減効果を有する場合があり、これを適切に評価することで製品の付加価値につながります。
床衝撃音の低減効果の評価方法として、JIS規格では「床衝撃音レベル低減量」の測定方法について規定されており1) 2)、都産技研ではJIS規格に基づいた床材の床衝撃音測定を実施しています。測定方法に関しては「床衝撃音の測定と評価 ‐ 下階に伝わる音への対策 ‐」(TIRI NEWS 2023年9月15日号) もご参照ください。
測定対象の試験体とカテゴリー
床衝撃音は、対象とする試験体の種類によって測定方法が異なり、それぞれの試験体に適切な測定方法が要求されます。JIS規格では、試験体の種類を「カテゴリー」として表1のように定めています。
a) カテゴリーⅠ | 平面的に異方性がなく,均質な材料で,衝撃源による衝撃時の変形が衝撃点及びそのごく周辺に限られるもの。 例 マット,カーペット(部分敷き),コルク,プラスチック,ゴムなど |
---|---|
b) カテゴリーⅡ | 比較的曲げ剛性の高い材料をもつ複層の床仕上げ構造であり,衝撃源の衝撃に対して,仕上げ材の変形の平面的広がりが無視できない試料。 例 浮き床構造,根太床構造,乾式二重床構造,発泡プラスチック系床構造,直張り木質フローリング,畳など |
c) カテゴリーⅢ | 床面全面を覆い張力を用いて仕上げるような柔軟な床仕上げ構造 例 張力を用いて施工するじゅうたんなど |
※直貼り木質フローリングは「カテゴリーⅠ」に分類される場合もあります3)。
なお、カテゴリーが不明な試験体は,カテゴリーⅡとして取り扱われます。
都産技研では、このうち「カテゴリーⅠ」に該当する試験体に対する依頼試験を実施しています。都産技研で実施している製品例としては以下のようなものがございます。
- プレイマット、ジョイントマット、クッションマット
- ヨガマット、トレーニングマット
- ラグ、カーペットなど
※ 試験体の寸法、重量、形状等により測定できかねる場合もございます。
床衝撃音の低減効果を示す「ΔL等級」について
都産技研ではJIS規格に基づく床衝撃音レベル低減量の測定を実施しており、周波数ごとに試験体の床衝撃音の低減効果を評価しています。そして、この床衝撃音レベル低減量の測定結果を用いることで、ΔL等級による性能評価を行うことができます。ΔL等級とは、一般財団法人日本建築総合試験所が定めた評価基準であり3)、床衝撃音レベルの性能表記において一般的に用いられる指標となります。
ΔL等級は、ハイヒールの歩行や食器の落下などを模した軽く硬い衝撃音を発生する標準軽量衝撃源による試験(軽量床衝撃音レベル低減量、ΔLL等級)、子供の飛び跳ねなどを模した重く柔らかい衝撃音を発生する標準重量衝撃源による試験(重量床衝撃音レベル低減量、ΔLH等級)でそれぞれ異なる基準値が設定されています(表2、表3)。ΔL等級の数値が大きいほど、床衝撃音の低減効果が高いことを表し、試験体の性能を客観的かつ定量的に示す指標として用いることができます。自社製品のΔL等級を明確に示すことで、製品の特性をわかりやすく伝えることができ、製品の信頼性向上にもつながります。
表記する等級 | 軽量床衝撃音レベル低減量の下限値 | ||||
---|---|---|---|---|---|
125 Hz帯域 | 250 Hz帯域 | 500 Hz帯域 | 1 kHz帯域 | 2 kHz帯域 | |
ΔLL-5 | 15 dB | 24 dB | 30 dB | 34 dB | 36 dB |
ΔLL-4 | 10 dB | 19 dB | 25 dB | 29 dB | 31 dB |
ΔLL-3 | 5 dB | 14 dB | 20 dB | 24 dB | 26 dB |
ΔLL-2 | 0 dB | 9 dB | 15 dB | 19 dB | 21 dB |
ΔLL-1 | -5 dB | 4 dB | 10 dB | 14 dB | 16 dB |
表記する等級 | 重量床衝撃音レベル低減量の下限値 | |||
---|---|---|---|---|
63 Hz帯域 | 125 Hz帯域 | 250 Hz帯域 | 500 Hz帯域 | |
ΔLH-4 | 5 dB | -5 dB | -8 dB | -8 dB |
ΔLH-3 | 0 dB | -5 dB | -8 dB | -8 dB |
ΔLH-2 | -5 dB | -10 dB | -10 dB | -10 dB |
ΔLH-1 | -10 dB | -10 dB | -10 dB | -10 dB |
「ΔL等級」を用いた評価事例
床衝撃音レベル低減量測定に基づく「ΔL等級」の評価方法の説明を図1に示します。ここでは標準軽量床衝撃源による試験を実施した場合(ΔLL等級)を事例としています。
最終的なΔL等級は、測定によって得られた周波数帯域ごとの床衝撃音レベル低減量(ΔL値)を、表2~3で定められた下限値に基づく評価曲線と比較することで該当する等級がわかります。この曲線に対して測定値がどれだけ上回っているかによって等級が決定されます。図1を例とした場合、全ての測定値がΔLL-4の値を上回っていることから「ΔLL-4等級」に該当することがわかります。これにより、製品の床衝撃音の低減効果が誰にでもわかりやすい形で示され、適切な床材選定に役立てられます。
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(等級表記における(I)は、カテゴリーIに該当する製品であることを示す)
最後に
本記事では、床衝撃音レベル低減量測定に関する情報をご紹介しました。カーペットやプレイマットなど各種インテリア製品を製造・販売するお客さま、下階への床衝撃音低減効果を製品の開発・販売に活用したいお客さまのご利用をお待ちしています。またJIS規格による測定以外にも、お客さまの製品を衝撃源とした測定も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- JIS A 1440-1 : 2007 実験室におけるコンクリート床上の床仕上げ構造の床衝撃音レベル低減量の測定方法 第1部:標準軽量衝撃源による方法
- JIS A 1440-2 : 2007 実験室におけるコンクリート床上の床仕上げ構造の床衝撃音レベル低減量の測定方法第2部:標準重量衝撃源による方法
- 「床材の床衝撃音低減性能の等級表記指針」,一般財団法人 日本建築総合試験所(2008年)
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