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潤滑剤の摩擦・摩耗評価

公開日:2025年12月1日 最終更新日:2025年12月1日

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機械のしゅう動部には摩擦の低減や摩耗の抑制のため潤滑剤(潤滑油やグリースなど)が使われます。適切な潤滑剤を選択するには、潤滑剤を施してしゅう動部材の摩擦・摩耗特性を評価することが有効な手段の一つとなります。本稿では、潤滑剤の摩擦・摩耗評価手法について、代表的な試験法と事例をご紹介します。
(トップ画像:潤滑剤の代表例 (左)グリース、(右)潤滑油)

往復しゅう動型の摩擦・摩耗試験機の概要と評価事例

往復しゅう動型の摩擦・摩耗試験機(図1)は、任意の条件で試験片を往復運動させ、潤滑剤やしゅう動部材などの摩擦・摩耗特性を評価する装置です。最大2000 Nまでの高荷重試験に対応でき、温度、ストローク、周波数などの条件設定も可能です。

本装置は、極圧性や耐摩耗性に関する規格試験にも対応しています。極圧性試験ではしゅう動材に潤滑油を滴下した状態で、荷重を増加させた際の摩擦係数を測定することで、焼き付きが発生する荷重を測定します。図2に示す測定事例では、ASTM D7421の条件を参考に、荷重を段階的に増加させた結果、500 Nで摩擦係数が急上昇しており、焼き付きが発生したことが確認されました。このような測定で潤滑油やしゅう動材の極圧性を評価することができます。

図1  往復しゅう動型の摩擦・摩耗試験機 左:装置外観、右:試験の様子
図2  往復しゅう動型の摩擦・摩耗試験機による極圧性試験の評価事例
試験条件:試験温度 40℃、しゅう動材(球、ディッシュ) SUJ2、振幅 2.0 mm、周波数 50 Hz

トライボセルを備えた動的粘弾性測定装置の概要と評価事例

図3  トライボセルを備えた動的粘弾性測定装置 左:動的粘弾性測定装置の外観、右:試験の様子

動的粘弾性測定装置にトライボセルを装着(図3)することで、比較的低荷重で温度、すべり速度の条件を精密に設定して摩擦・摩耗特性を評価できます。図4に示す測定事例では、潤滑油に添加剤を加えることで、潤滑油単体よりも摩擦係数が低下しており、潤滑性能の向上が確認されました。同一装置で粘度・粘弾性測定も行えるため、潤滑剤の流動特性と摩擦特性を関連づけた総合的な評価が可能です。

図4 トライボセルを備えた動的粘弾性測定装置による摩擦係数の比較
試験条件:試験温度 80℃、しゅう動材(球、ピン) SUJ2、荷重 1 N、すべり速度 0.1 m/s

まとめ

ご依頼のしゅう動部材や潤滑剤(潤滑油やグリースなど)の特性に合わせて、最適な摩擦・摩耗評価手法や試験装置を組み合わせた技術支援をご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。

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