複合素材技術グループ TEL. 042-500-1240
※本装置は公益財団法人JKA補助事業による補助を受けて設備導入しています。
近年、構造物の軽量化により省エネルギー化を目指すべく、高機能プラスチックや繊維強化複合材料の利用がすすめられています。これら材料を用いた構造物の長期的な安全性・信頼性を確認するには、疲労試験を実施し、繰り返し荷重に対する耐久性を評価することが重要となります。
多摩テクノプラザでは、高機能プラスチックや繊維強化複合材料の特性評価に適した恒温槽付き疲労試験機を新たに導入しました。
図1 恒温槽内における繊維強化複合材料の曲げ疲労試験
高機能プラスチックや繊維強化複合材料の疲労強度特性は環境温度の影響を大きく受けます。常温下の場合と比較して、高温下では疲労強度は低下し、一方、低温下では向上します。これら材料を、例えば自動車を中心とするモビリティの構造部材として利用するには、実際の使用温度と同じ条件下における疲労データの蓄積が必須となります。
今回導入した試験機では、付属する恒温槽内において-40℃から250℃までの温度下で疲労強度特性を評価することが可能です。
疲労試験では⼀般的な引張・圧縮⽅向の負荷に加え、ねじり⽅向の負荷が可能です。また、引張荷重とねじり荷重(トルク)を同時に加えるといった、組み合わせ荷重下における評価も可能です。その他、ストロークや回転角度による制御も行えます。表1に試験機の仕様を示します。
出力されるデータは、疲労破壊に至るまでの繰り返し数のほか、指定した繰返し数に達した際の荷重、ストローク、トルク、角度、および温度となり、これらの値はcsv形式で保存されます。保存されたデータは、CD-R(有償)にて持ち帰りできます。
表1 恒温槽付き疲労試験機の仕様
炭素繊維強化プラスチック製品に対して圧縮疲労試験を行った際に得られた、任意の繰返し数での荷重とストロークの関係を図2に示します。
疲労損傷の発生および進展により、荷重-ストローク線図の勾配が徐々に小さくなることが確認されました。疲労破壊に至るまでの繰返し数だけではなく、各種の出力値を用いて製品の損傷(劣化)状況の確認にもご利用いただいています。
図2 疲労試験中に得られた荷重とストロークの関係
図3に本稿で紹介した恒温槽付き疲労試験機以外の疲労試験機ラインナップを示します。都産技研・製品強度評価分野では医療機器や電子デバイス、建築資材など、各種製品を対象として年間200件(5000時間)を超える疲労試験を実施しています。
長期的な安全性・信頼性の確保を目指し、これまでの膨大な試験実績と確かな技術で製品開発をサポートします。皆さまのご利用をお待ちしています。
図3 各種疲労試験機(左から、1kN小型疲労試験機(多摩)、10kN疲労試験機(多摩)、
トーション付き10kN疲労試験機(本部)、100kN疲労試験機(本部))
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