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黒部篤理事長 就任のご挨拶

印刷用ページを表示する 更新日:2022年5月1日更新

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2022年4月より、都産技研では、黒部 篤が理事長に就任いたしました。
皆さまに就任のご挨拶を申し上げるとともに、経歴のご紹介や、今後の抱負をお伝えします。

(外部リンク)

価値ある技術を育み、社会実装に貢献する

2022年4月1日に都産技研の理事長に着任いたしました。おかげさまで都産技研は2021度に設立100周年を迎え、次の100年に向けて新たな一歩を踏み出しました。都産技研のミッションである『産業技術に関する試験、研究、普及及び技術支援などを行うことにより都内中小企業の振興を図り、もって都民生活の向上に寄与すること』をより一層効果的に遂行できるよう邁進する所存です。

我々の日々の生活が多種多様な技術によって支えられていることは論を待ちません。技術は各々の分野でますます高度化、多様化するとともに、複数の技術分野間での複合化・融合化が加速度的に進んでいます。そして新たな技術を活用した新たな製品・サービスが生まれることで、産業構造は大きく変化しています。
そのために将来が見えづらくなっているとも言えますが、技術の熟成度レベルを上げてイノベーション創出へとつなげてゆくためには、現在と将来の社会ニーズを的確にとらえて研究開発を行うことが重要になります。

東京都の長期戦略や我が国のイノベーション戦略なども参照にしながら、都内事業者の皆さまとの地に足のついたディスカッションを通して、価値ある技術を育み、社会実装に貢献したいと考えています。時代の変化とともに自らも変わり続けられる組織となるよう取り組んでゆく所存ですので、今後も一層のご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

経営方針図横

大きく変化する産業構造に対し、さまざまな技術支援メニューで中小企業の製品開発をサポートします。

 

NAND(半導体不揮発メモリ)の研究開発や海外メーカーとの共同開発を推進

専門分野を聞かれたときには、半導体デバイス・材料全般と答えていますが、根は物理屋だと思っています。
固体物理学理論で博士の学位を取得しましたが、取得後すぐに東芝の本社(コーポレート)研究開発センターに入社して、退職までの36年間に研究開発マネジメントを含むさまざまな経験をさせていただきました。

研究者時代には多重量子井戸構造半導体レーザーや光変調器、量子井戸サブバンド間遷移を用いた光学非線形素子、歪みシリコンMOSFETなどの研究開発などを手がけていました。

特に記憶に残っているのは、1991年から4年間の英国ケンブリッジ駐在です。
当時東芝は海外初の基礎研究所をケンブリッジ市に設立し、私は研究者の第1号として赴任し、キャベンディッシュ研究所(ケンブリッジ大学物理学科)の半導体部門と量子輸送現象に関する共同研究を行いました。異国の地での生活の苦労とともに物事に対する考え方の違いへの気づきは、まさに得がたい経験となりました。当時の研究仲間と国際会議などで再会することは楽しみの一つになっています。

研究開発マネジャーとしては本社研究開発センターの半導体研究部門の室長がスタートでした。その後、全社の技術企画部門を経て、半導体事業部門の研究開発センターのセンター長として半導体製品の開発に関わりました。最も印象にあるのはNAND(半導体不揮発メモリ)の開発です。

当時、東芝は世界に先駆けて三次元構造のNANDデバイスを発明し開発していましたが、韓国S社との激しい開発競争も経験しました。また米国や韓国の半導体メーカーとの協業にも東芝側研究陣の代表として参加しました。2013年の10月には全社研究開発センターに戻り、半導体領域のほかに、機械システム技術(いわゆる“4力”を研究)や情報システム技術(機械学習や最適化などの研究)の領域長を務め、2020年に東芝を退職いたしました。

東芝退職後は縁あって東京大学の総長室アドバイザーをお引き受けし(2021年からは産学協創アドバイザー)、IBMと東大との量子コンピューターに関する共同研究や、量子コンピューター利用の国内コンソーシアム(QIIC)の立ち上げに助言してきました。またこの3月までは、2014年に開始されたJST/CRESTの研究領域である「二次元物質」(グラフェンを先行研究とする新たな二次元物質群)の研究総括を務めていました。

 

英国ケンブリッジ駐在時の写真

英国ケンブリッジ駐在時の写真
1993年3月に恩師の上村洸先生(写真右)がキャベンディッシュ研究所を訪問された際に撮影したもの。
中央は Sir Nevill Francis Mott 教授(1977年にノーベル物理学賞を受賞。1996年没)。
筆者は、Mott先生のvariable-range hoppingの理論を電子間相互作用がある場合に拡張し学位を取得した。

 

イノベーションを起こすための技術支援を

私が都産技研に移って中小企業の技術支援にたずさわることになったと話すと、東大の先生方からは「実験研究で中小企業の方々に大分助けられた」と異口同音に聞かされました。
私自身の数少ない経験からも、技術力をお持ちの中小企業が沢山あると思っており、大変心強く感じています。また、製造業は裾野が広く、その裾野の技術も自国に持ち合わせているというのが我が国の強みなのではないかとも考えています。

一方で、資本集約型の大量生産は翳りを見せており、薄利多売では生き残るのが難しいと感じています。サプライチェーン(スマイルカーブ)の中でより上流側に位置できる価値ある製品を生み出してゆくことが求められていると思われます。

ドラッカーにならえば、「マーケティング」と「イノベーション」が企業活動に欠かせません。「マーケティング」でお力になることは難しいですが、「イノベーション」を起こすために技術革新が必要になるということであれば、都産技研はお手伝いすることができると確信しています。

私自身、もっと深く東京都の中小企業について勉強しなければと思っています。ぜひ多くの中小企業の方々からご意見やご指導をいただければ幸いです。

 


 

(外部リンク)

 

理事長 黒部 篤 (くろべ あつし)

1984年 東大院理学系研究科博士修了。同年東芝入社。東芝研究開発センター理事・首席技監(常務待遇)、東京大学総長室アドバイザー、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術委員などを歴任し、2022年4月から都産技研 理事長に就任。

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