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アイソトープ・放射線のはなし 2.アイソトープ・放射線の利用のいろいろ(6)
印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新
(6)生物作用の利用
がん細胞や細菌類を死滅させる効果
放射線には生物を殺したり遺伝的な影響を与えることは前に述べたとおりです。この性質は人間にとっては重大な問題です。
しかし、一方では私たちはこの性質を日常的に利用しています。がんの放射線治療は、人体に生じたがん組織を放射線の作用で「死滅させる」ことを目的とした技術です。医療用具の製造過程で混入する細菌類を殺菌するために放射線照射法が広く行われています。この方法はこれまでの毒ガス殺菌法に比べ、操作の安全性や、毒物の残留がないことからも優れた技術です。
食品の保存
食品の安全性を高める目的で、放射線照射による食品の殺菌、保存技術の研究が、照射後の食品の健全性の確認を含めて行われていますが、日本では現在「ジャガイモの芽どめ」だけが許可されています。
植物の突然変異の利用
放射線による遺伝形質の変化は、植物の育種技術として利用されています。遺伝形質の変化により花の色や形のかわったものを作るのが目的で、花木をはじめ園芸植物に利用されています。
病害虫の防除
適当な量の放射線をあてることにより、病害虫を不妊化(子供ができなくする。)することができます。この作用を利用して、不妊化した雄を大量に野外に放し、次世代の害虫の発生を防止します。すでに、小笠原諸島のミカンコミバエの防除が成功しています。
アイソトープ・放射線のその他の利用
アイソトープや放射線は、これまで述べてきた利用法の他に、蛍光灯のスタータ、夜光塗料、煙感知器など身近な日用品に利用されています。考古学においての年代測定や文化財の調査、また法医学の検査でも広く利用されています。新薬の開発や微量の活性物質の開発などには、アイソトープを用いた技術が必須のものとなっています。