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ガスによる変退色

印刷用ページを表示する 更新日:2018年1月5日更新

変色した部分を示す写真 正常品と淡色化した事故品とを比較した写真

解説

素材

主な汚染ガスとしては、窒素酸化物、亜硫酸ガス、硫化水素、硫酸ミスト、オゾン、塩酸、ホルムアルデヒド、アンモニアがあり、これらのうち消費課程で存在するものは窒素酸化物、亜硫酸ガス、硫化水素、ホルムアルデヒドである。窒素酸化物や亜硫酸ガス、硫化水素は、自動車の排気ガスや工場の排気ガスに含まれており、ホルムアルデヒドは住宅やタンス等の接着剤として使用されている樹脂に含まれている。中でも窒素酸化物による事故が最も多い。

窒素酸化物の中で二酸化窒素はアントラキノン系の染料と反応し染料を分解、変色に至らしめる。アントラキノン系の構造をもつ染料は反応染料、直接染料、分散染料に使用されており、素材としては、綿とアセテートが多い。ポリエステルは繊維構造が緻密なため、常温ではガスが浸透しにくく、変色は起こらない。また、ウールやアミン系の加工(例えばポリアミン系フィックス剤による処理やカチオン系柔軟剤による処理)が施されたセルロース系繊維はアミノ基が窒素酸化物を吸着、染料との反応を抑制するため、変色が生じにくい。

外観

アントラキノン系の染料は青系の色が多いため、色相は青色が抜けたような色へと変化する。また、変色部位は特に決まっていないが、空気の流通のよいと思われる箇所に変色が発生する(左の写真は変色部を山折りにしてたたんで、袋に詰めて保管していた。右の写真は展示中に変色したとのこと)。したがって、保管状況を詳細に調査することが必要である。

試験

二酸化窒素の検出方法としてザルツマン試験があるが、微小サンプルでは正常部と異常部の色の差がはっきりしない場合が多い。破壊検査が可能な場合は、ザルツマン試験を行うとともに、再現試験を行う。

その他のガスについての試験は、JIS染色堅牢度試験に規定されている(塩酸、硫酸、アンモニア等の酸・アルカリについては、酸またはアルカリ滴下試験を適用する)。

 


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