ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 成果発表 > プラスチックの劣化に着目した廃棄物の発熱・発火危険性評価

プラスチックの劣化に着目した廃棄物の発熱・発火危険性評価

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

 

清水 芳忠[発表者]、内田 剛史(神奈川県産業技術センター)、新井 充(東京大学 環境安全研究センター)

1.はじめに 

  廃棄物の大半は有機物で構成されており、不法投棄や一時保管など、ある程度以上の廃棄物が堆積されると堆積物内部で微生物発酵や酸化反応による発熱反応が進行する。この内部の微少発熱が蓄積することにより、周囲の温度等の環境条件によっては発火に至る場合もある。このような、堆積廃棄物が初期発熱から発火に至る機構を解明する目的で、各種熱分析や化学発光測定を利用して検討を行ってきた。これまでの研究成果により1)、ごみ固形化燃料(RDF)中にはプラスチック等の劣化による過酸化物が蓄積しており、この過酸化物が開始剤となって、低温における酸化反応を促進していることが示唆された。そこで、RDFの低温酸化における劣化物の影響をより詳細に検討するため、RDFを想定したモデル物質を選定し、それらモデル物質を単体もしくは混合した試料を用いて、蓄熱発火機構の検討を行った。

2.実験方法

  RDFを構成する成分のモデル物質としてセルロース、ポリプロピレン(PP)、植物性食用油を選択し、これらを混合してモデルRDF(mRDF)を作成した。ここで混合させるPPの劣化度合いを変化させることによりmRDFの劣化度合いを調整した。劣化PPは、あらかじめ80ºCに等温保持した高温槽内で保持期間を変化させることにより作成した。このように劣化度合いを調整したmRDFの発熱・発火危険性を評価することにより、発熱・発火危険性に及ぼすプラスチックの劣化の影響を評価した。化学発光の測定には東北電子産業社製ケミルミネッセンスアナライザ(CLA)を使用し、発熱量の測定にはメトラートレド社製示差走査熱量計(DSC)を使用した。また、蓄熱開始温度の測定にはコロンビアサイエンティフィック社製断熱熱量計(ARC)を使用した。

3.結果・考察

  まず、劣化PPと未劣化のPPの混合比を変えた試料を作成し、CLAにより酸化反応が進行する傾向を把握したところ、劣化度合いが高くなるにつれて全体の酸化が促進される結果となった。また、劣化期間を変化させることにより、その劣化度合いを変化させた劣化PPを作製し、これらの劣化試料を用いた窒素中での化学発光強度とDSCを用いた試料内部に蓄積した過酸化物の発熱量測定との間に高い相関関係が得られ、劣化による過酸化物の蓄積量評価手法としてCLAが十分利用可能であることが確認できた。そこで、劣化度合いを調整したmRDFを数種類作成し、その発熱・発火危険性の評価を行った。CLAによる劣化度合いの評価とARC測定より得られた発熱開始温度を比較したところ、過酸化物蓄積量が増加するにつれ、蓄熱開始温度が低下することがわかった(図1)。

PBS複合体の引張試験の画像
図1 PBS複合体の引張試験

参考文献
1) ごみ固形燃料の蓄熱危険性評価に関する研究  清水芳忠、若倉正英、新井充  廃棄物学会論文誌  Vol.19 pp.382-391 (2008)

 


ページの先頭へ