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実用型共晶点実現の不確かさ評価(多摩発表)

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

佐々木 正史[発表者]、沼尻 治彦、水野 裕正(実証試験セクター)

1.はじめに

  現在の国際温度目盛(ITS-90)で定められている最高温度は銅の凝固点(1084.62 ℃)であり、それ以上の高温に関して、金属―炭素共晶点の技術を用いた標準化が進められている。一方、ガラス、半導体、鉄鋼、航空宇宙産業など1100℃を超える高温度測定技術の向上が望まれているにもかかわらず、民間事業者等への金属―炭素共晶点普及の足かせとなっているのが、新たな設備投資の負担である。金属―炭素共晶点の実現には、大型のセル及び共晶点実現装置など高価な専用装置の導入が必要となる。そこで平成18年度、産業技術総合研究所との共同研究で既存パラジウム点炉(Pd点炉)に設置可能な熱電対用小型コバルト―炭素共晶点セルの開発を行い、共晶点温度の実現や持ち回り試験による同等性確認など研究を続けてきた。本報告は、共晶点技術の信頼性確保を目的とし、実用標準としての実用型共晶点実現の不確かさ評価を行った結果である。

2.評価方法

  本研究で使用した実用型共晶点セルは、高精度共晶点セルΦ50mmに対し、Φ32mmと小型であるため、当センターで所有しているPd点炉(内径34mm)に設置可能である(図1)。
  表1に示すように、実用型共晶点実現にかかる不確かさ要因を挙げそれぞれ評価を行った。尚、本実験の温度測定には白金・パラジウム熱電対を使用した。

  • 2.1  変曲点決定の不確かさ  共晶点温度決定には近似式を用い、プラトー実現時の変曲点を共晶点温度とする方法がとられている。そのため、近似式により決定される変曲点に差が生じるため、その時の影響を評価する。共晶点温度とする範囲の最大差の半値を √3で割った値を変曲点決定の不確かさとした。
  • 2.2  再現性の不確かさ  保持温度及び融解温度は±8℃として、同一条件で20回共晶点温度を実現した時の標準偏差を再現性の不確かさとする。得られた20個の平均値の標準偏差を再現性の不確かさとした。
  • 2.3  周囲温度の不確かさ  共晶点セルの周囲温度として、炉の凝固保持温度及び融解保持温度を変化させた時の共晶点温度変化を評価する。周囲温度を共晶点温度±16 ℃から±4℃と変化させる。その結果の傾きより周囲温度が1℃変化した時の共晶点温度変化を求め、これを炉の安定性(0.13℃)による影響として評価した結果を周囲温度の不確かさとした。
  • 2.4  熱流の影響の不確かさ  熱電対の挿入深さによる熱流の影響を評価する。挿入長誤差を1cmとし、熱電対設置位置を変化させ、結果の最大差の半値を√3で割った値を熱流の影響の不確かさとした。

左:高精度共晶点セル・右:実用型共晶点セル
図1 左:高精度共晶点セル  右:実用型共晶点セル

3.結果・まとめ

  以上、実用型共晶点実現の不確かさ評価の結果、合成標準不確かさ27mKと小さく、十分に実用標準として利用可能である事がわかった。本研究における不確かさ評価の技術を活用することで、実用型共晶点セルの産業界での利用が望まれると共に、一層の共晶点普及が見込まれる。

表1 不確かさバジェット
不確かさ要因<標準不確かさ/mK
変曲点決定8.93
再現性6.36
周囲温度0.16
熱流の影響24.5
合成標準不確かさ27

 


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