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ヒートポンプによる園芸ハウスの冷暖房システムの開発

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

島地英夫[発表者]、岡沢立夫、田旗裕也(東京都農林総合研究センター)

1.はじめに

  ヒートポンプ(HP)空調は省エネ機器として、家庭やビルの冷暖房で使用されている。東京都農林総合研究センターでは、100平方メートル程度の小面積のビニルハウスでも使用できる東京型ヒートポンプシステムの開発を行っている。冬季にはCO2排出の少なく運転コストの低い暖房と、夏季には夜間冷房運転を行うことによって一年中収穫できる栽培環境の実現を目指している。我が国では使用例の少ない地下水や地中熱を熱源としたHPシステム(図1)の利用技術の開発を行う。

水熱源型ヒートポンプ
図1 水熱源型ヒートポンプ 米国FHP製・4馬力

2.実験方法

  水熱源(地熱)ヒートポンプの特徴とし、水を熱媒体として用いているために輸送や蓄熱することができる。暖房時にはハウス内の日中の空気熱源をヒートポンプによって、浅層に埋設したクローズドタイプのポリエチレン製のスリンキーパイプを介して地中蓄熱する。夜間は、地中を熱源とし、不足する場合は井戸水を補足的に熱源とする。冷房時は、井戸水の冷熱源や地中放熱(図2)を利用する。ここでは、夏期の冷房試験の結果を示す。

HPシステム
図2 HPシステム

3.結果・考察

  夏期の冷房試験においては、昼間はミスト散水による蒸発冷房、夜間はヒートポンプで冷房を行った。その結果、ハウス内の昼間の温度はほぼ外気温に、また、夜間は外気温より5℃程度下げることができた。昨年の夏には異常高温が続いたが、ヒマワリの栽培では花径が大きく(図4)、またシクラメンでは開花が早く花数の多いなど、品質向上に効果があった。

夏期の日中ミスト冷房と夜間のHP冷房
図3 夏期の日中ミスト冷房と夜間のHP冷房

ひまわりの花径への冷房効果(左)
図4 ひまわりの花径への冷房効果(左)

4.まとめ

  日中ミストと夜間ヒートポンプ冷房の併用効果で1日を通じて夏季の温度上昇が抑制できた。これにより、切花用ヒマワリとシクラメンの品質が向上したことから、ここで用いたヒートポンプシステムは、実用性があると考えられる。ヒートポンプは冬期の省エネ暖房を大きな目的とするが、冷房や除湿機能を活用することで、作期拡大、品質向上などに寄与する。

 


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