ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 成果発表 > 鉛フリーはんだの分析方法の開発

鉛フリーはんだの分析方法の開発

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

 

林 英男[発表者](高度分析開発セクター)、清水 綾(材料技術グループ)、上本 道久(城南支所)

1.はじめに

  電子機器では、電子回路にSn-Pb合金である“はんだ”を多量に使用していたが、RoHS指令によって、鉛含有はんだは規制の対象になった。そのため、現在の電子機器では、“鉛フリーはんだ”と呼ばれる鉛含有量を低減した(0.1%以下)新規合金が使用されている。鉛フリーはんだは、Snを主成分とした合金であり、数多くの種類はんだが存在する。その中で、現在最も使用量が多いのがSn-Ag-Cu合金系のはんだである。鉛フリーはんだの構成成分や不純物を分析するためには、酸で溶解し水溶液にする必要があるが、酸溶解時に沈殿が生じたり、成分が揮発損失するなど、酸溶解が難しいことが問題となっている。
  本研究ではSn-Ag-Cu合金系及びSn-Ag-Cu-Ni-Ge合金系の鉛フリーはんだの完全溶解を目的とした酸溶解法について検討し、上記の鉛フリーはんだに含まれる合金元素及び不純物元素の分析法を開発した。

2.実験方法

  鉛フリーはんだ試料をビーカーに移しいれ、混酸を加え80℃のホットプレート上で加熱溶解した。放冷後、全量フラスコに移しいれ水で希釈した。得られた試料溶液を、ICP発光分光分析装置により測定し、合金成分及び不純物成分の定量値を得た。なお、検量線作成用の標準溶液は、高純度金属スズ(99.99%)を用いてマトリックスマッチングを行った。

3.結果・考察

  Sn-Ag-Cu合金を溶解するための酸について検討した結果、硫酸-硝酸を硫酸濃度が3.6mol/L以上13.4 mol/L以下、硝酸濃度が1.3mol/L以上3.4mol/L以下、且つ硫酸と硝酸のモル比が2.6:1以上7.9:1以下で混合した混酸を溶解に用いれば、Sn-Ag-Cu合金を容易に溶解できることが判明した。得られた試料溶液をICP発光分光分析装置で測定したところ、JISで定められた合金構成元素及び不純物元素を全て同時に分析することが可能であった。しかし、Sn-Ag-Cu-Ni-Ge合金系の鉛フリーはんだには、硫酸-硝酸による溶解が有効ではなく不溶成分に起因した沈殿が生じた。
  そこで、Sn-Ag-Cu-Ni-Ge合金を溶解可能な酸について検討を行ったところ、硫酸-硝酸-ふっ化水素酸を、硫酸3.6mol/L以上13.4mol/L以下、硝酸1.3mol/L以上3.4mol/L以下、ふっ化水素酸0.53mol/L以上の濃度で混合した混酸が有効であることが判明し、合金構成元素及び不純物元素についてICP発光分析装置によって同時に分析できた(表1)。

表1 ゲルマニウム含有鉛フリーはんだの分析結果

ゲルマニウム含有鉛フリーはんだの分析結果の画像1ゲルマニウム含有鉛フリーはんだの分析結果の画像2

4.まとめ

  本研究で開発した混酸(硫酸-硝酸及び硫酸-硝酸-ふっ化水素酸)を用いれば、鉛フリーはんだの合金構成元素及び不純物元素を容易に同時分析することが可能となった。 

 


ページの先頭へ