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金属アルコキシドを用いた油性物質用ゲル化剤の開発

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

 

根本 久志[発表者](千葉県産業支援技術研究所)、渡辺 明久(幸商事株式会社)

1.はじめに 

  シリコーンオイルは、化学的に比較的不活性であり、分子間力が小さく柔軟性に富み、表面張力が低く、撥水性、潤滑性がある等の性質を有している油剤である。シリコーンオイルを含む製品は、従来の油性タイプの製品と比較してべとつき感が少ない、延び、広がりが良い、人体に対しての安全性が高い等の特徴があるため、化粧品や医薬品、医薬部外品等において使用されている。しかし、溶解性等の点から低分子量のシリコーンオイルが用いられている分野において、粘性の低さに起因する液だれが欠点の一つとしてあがっている。
  本開発は、低粘性のシリコーンオイルを増粘し、ゲル化させることによりこの欠点を克服しようとするものであり、ゲル化剤として金属アルコキシドを出発原料とした有機金属化合物を合成した(図1)。

本開発ゲル化剤の構造式の画像
図1 本開発ゲル化剤の構造式

2.実験方法

  四口フラスコに出発原料である有機金属アルコキシド及びカルボン酸を加え30分間撹拌、加熱還流を行い、40℃以下に冷却後所定量のアルコールを滴下して加えた。滴下終了後30分間撹拌、加熱還流を行い、放冷後副生成物を減圧留去することによりゲル化剤を得た(図2)。
  このゲル化剤を油性物質に加え混合して得られた増粘ゲル(図3)について官能評価を行った。評価項目として、調製直後の感触及び相溶性、粘性の経時的な変化について相対比較を行った。

ゲル化剤合成例の画像
図2 ゲル化剤合成例
増粘ゲル調製例の画像
図3 増粘ゲル調製例

3.結果・考察

  低粘性シリコーンオイル及び少量添加する変性シリコーンの種類、保存温度等の条件を変えることにより、感触、相溶性、粘性の経時的な変化のいずれも良好な増粘ゲルを得ることができた。
  本開発ゲル化剤及びその他の既存ゲル化剤を混合して得られる生成物の性状について比較したところ、本ゲル化剤を使用した場合、少量の添加でもシリコーンオイルが増粘され流動性が低下する、相溶性が良いため無色透明である、0℃24時間後においても分離が見られない等の点で優れていた。

4.まとめ

  今回開発したゲル化剤は、シリコーンオイル等の油性物質をゲル化するのに有用であることが確認できた。このゲル化剤を油性物質に添加することによって、液だれの防止、形状維持、粘度調整や分離防止等に効果があり、塗料、パテ、接着剤、医薬用製剤、インク、潤滑油、化粧品等の広い分野に応用範囲を広げることができると思われる。

 


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