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ゴム基材表面へのDLC膜の適用

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

清水 綾[発表者]、清水 研一(材料技術グループ)、川口 雅弘(高度分析開発セクター)

1.はじめに 

  近年の電子機器の小型化・精密化に伴い、機器の誤作動の原因となる、構成部品への異物混入が課題となっている。そのため、Oリングやべローズとして用いる摺動ゴム部品に対して、異物混入のきっかけとなる潤滑剤を使わない素材の開発が求められている。
  一方、ダイヤモンドライクカーボン(DLC; diamond-like carbon)膜は、優れたトライボロジー特性、化学的安定性や電気的安定性を有するため、自動車などの一般機械部品での表面改質技術として実用化されている。本研究では、ゴム基材表面にDLC成膜を施し、その適用の可能性について検討した。

2.実験方法

  本研究では、シリコンゴム、導電性シリコンゴム、バイトン®ゴムを試料とした。またDLC成膜処理前後での基材の性能評価を行うため、厚さ1mmのゴムシートを引張試験片の形状に加工したものを試験片とした。DLC成膜方法として、低温(50℃程度)での処理が可能、基材自身へのイオン注入を行える、などの特徴を持つプラズマイオン注入成膜(PBII&D)法を用いた。成膜前後の試験片について引張試験を行い、ゴムの耐変形性およびDLC膜の密着性について評価を行った。

3.結果・考察

  シリコンゴム試料の顕微レーザーラマン分光分析結果の概略を図1に示す。1500cm-1付近は、典型的なDLC由来のピークである。40、110、120分のいずれの成膜処理時間においても、試料表面にDLCが成膜できており、さらに処理時間の増加に伴いDLC膜厚が増加することが確認できた。
  引張試験結果を図2に示す。成膜前後の試料の見かけの弾性率は、1次直線で近似できた。したがって、ゴム基材のバルク特性に及ぼす成膜処理の影響は小さいと考えられる。一方、ゴムの材質によって、処理条件により最大破断荷重が異なること、処理時間の増加に伴い最大破断荷重が小さくなることを確認した。また、破断後の試料表面にDLC膜が島状に残存しており、基材表面への密着性が高いことを観察した。

DLC成膜前後のシリコンゴム基板のラマン分光分析結果の画像
図1 DLC成膜前後のシリコンゴム基板のラマン分光分析結果

DLC成膜前後の試験片の引張試験結果の画像
図2 DLC成膜前後の試験片の引張試験結果

4.まとめ

  ゴム基材に対して、PBII&D法によるDLC成膜が適用できることを確認した。

 


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