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EPD砥石による光学材料の精密研磨に関する研究

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

 

落合 一裕[発表者]、南部 洋平(埼玉県産業技術総合センター)、宇都宮 康(株式会社タナカ技研)、池野 順一、澁谷 秀雄(埼玉大学)

1.はじめに 

  カメラ付き携帯電話等のレンズ部にはIRカットフィルターという光学部品が搭載されている。カメラの小型化・高品質化に伴い、そこに使用するガラス基板には高い表面精度と形状精度が要求される。従来法である研磨加工は優れた仕上げ加工法であるが、職人技と長時間を要するという問題がある。
  そこで本研究では、固定砥粒研磨法としてEPD砥石を用いた光学材料の精密研磨に挑戦し、研磨用EPD砥石の開発と加工評価を行い、光学材料に対して高能率に精密加工を行った。

2.実験方法

  砥石は、電気泳動現象(Electro Phoretic Deposition)を用いて作製するEPD砥石を試作して用いた。EPD砥石は、一般的な砥石に比べて砥粒密度が高く、砥粒分布も均一になるため、精密研磨に適している。
  砥粒は、シリカと酸化セリウムをそれぞれ用いた。これらの砥粒は、ガラス等の最終仕上げ研磨に用いられており、加工対象物とメカノケミカル反応を起こすことが知られている。結合材は、アルギン酸ナトリウムを用いた。図1に砥石作製方法を示す。
  作製した砥石を用いて、光学材料に対して研磨を行った。片面研磨装置、両面研磨装置を用いて加工した。

電気泳動現象を用いたEPD砥石の作製方法の画像
図1 電気泳動現象を用いたEPD砥石の作製方法

3.結果・考察

  研磨用EPD砥石の作製方法について検討を行った。砥石作製装置を作製し、電流密度、電気泳動による吸着条件や方法、非導電性のマスク、砥石の乾燥等について検討し、研磨用EPD砥石を試作した。作製したEPD砥石を図2に示す。
  作製したEPD砥石を片面研磨装置の定盤に貼り付けて研磨を行った。研磨機を図3に示す。光学材料に対して研磨を行った。研磨条件を検討した結果、表面粗さが1nmRa程度の研磨面を得ることができた。また、研磨による除去量を測定したところ、従来の湿式研磨に比べて高い研磨レートを得られることがわかった。さらに、研磨時間も従来の1/5から1/10程度となり、短時間で仕上げ研磨面を得ることができた。

研磨用EPD砥石の画像
図2 研磨用EPD砥石
EPD砥石による片面研磨の画像
図3 EPD砥石による片面研磨

4.まとめ 

  研磨用EPD砥石の開発を行い、光学材料に対して研磨を行った。従来法に比べて、高い研磨レートを得ることができ、短時間で精密な研磨面を得られた。また、スラリーの発生量を抑え、環境負荷を低減することができた。

 


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