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草本系リグニンから調製した活性炭の細孔構造と吸着性能

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

 

飯田 孝彦[発表者]、瓦田 研介(環境技術グループ) 、中石 真名美、山野 宏司(ハリマ化成株式会社中央研究所)、萩原 利哉(材料技術グループ)

1.はじめに

  紙パルプ製造では木材チップ原料からパルプの主成分であるセルロースを分離した際に、リグニンを含有する廃液(黒液)が副産物として大量に発生する。一方、東アジア地域では麦わらが農業系廃棄物として4億t/年以上排出されており、それを原料にした草本系パルプの製造では、木材チップを用いた場合と同様に黒液が副産物として排出されている。一般的なリグニンは植物体内で生合成されたフェニルプロパン構造を骨格とするフェノール性化合物であるが、麦わら由来リグニンの化学的特性について調べた例は少なく再利用が進展していない。そこで、本研究では麦わら由来の草本系リグニンを質的に変換して工業材料として再利用を進めることを目的に、水蒸気賦活法を用いた活性炭の調製方法について検討した。調製した活性炭の性能と特徴を把握するために、表面の微細細孔の構造や吸着性能を調べた。

2.実験方法

  麦わらパルプ製造工程から排出される黒液を乾燥、粉末化した乾燥リグニン約50gを、ローターリー式熱処理装置内に投入した。試料投入後窒素雰囲気下にて昇温速度3℃/minで室温から800℃まで加熱し、800℃で30min保持して炭化を行った。炭化は3回行い全量を混合し均一化後に賦活処理に用いた。賦活処理は、同装置を用いて水蒸気賦活法により行った。窒素雰囲気下において900℃まで昇温速度15℃/min で昇温し、賦活温度に達した後水蒸気を供給して所定時間保持した。900℃での保持時間は45min、60min、75min及び90minの4条件とした。なお、水蒸気導入量は炭化物約50gに対して水2.5ml/minを供給した。製造した活性炭は、粒径45μm以下に調整し、窒素吸着法及び水銀圧入法による細孔分布測定、JIS K 1474-2007活性炭試験方法による吸着性能を測定した。また、活性炭中の灰分の無機成分分析を、エネルギー分散型蛍光X線分析により測定した。

3.結果・考察

  賦活時間と窒素吸着法によるマイクロ孔領域の細孔容積の関係を図1に示す。賦活時間とともに細孔容積が増加し賦活90minで最大となり289mm3/g であった。また、賦活時間と水銀圧入法によるメソ孔及びマクロ孔領域での細孔容積の関係も同様の傾向を示し、賦活時間90minで最大となり3720mm3/g であった。一方、吸着性能はよう素吸着性能が730mg/g、メチレンブルー吸着性能が120mL/gであり市販試薬活性炭に比べて低かった。
  また、活性炭灰分の蛍光X線分析結果から、おもな無機成分として二酸化ケイ素(SiO2)が約93%を占めていることがわかった。これはイネ科植物が土壌から二酸化ケイ素を吸収する能力を有しており、原料の麦わらに蓄積したものに由来すると考えられた。

賦活時間と細孔容積の関係の図
図1 賦活時間と細孔容積の関係

4.まとめ

  紙パルプ製造工程で副産物として発生する草本系リグニンの有効利用法として、水蒸気賦活法により活性炭の調製を行った。草本系リグニン活性炭の吸着性能は、市販試薬活性炭より低かったが、細孔構造解析の結果からマイクロ孔に加えて、メソ孔及びマクロ孔の発達も見られ、広範囲の細孔分布を有しており、大きい分子サイズの環境汚染物質の吸着材としての利用の可能性が期待できると考えられた。

 


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