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照射食品検知法に用いる放射線源の妥当性評価

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

 

関口 正之[発表者]、中川 清子、柚木 俊二(バイオ応用技術グループ) 、宮原 信幸、酢屋 徳啓(独立行政法人放射線医学総合研究所)

1.はじめに 

  照射食品検知法として信頼性の高い熱ルミネッセンス(TL)法は、試料の発光量(第一発光)を同一試料に再照射(校正照射:1kGy)し第二発光を求めTL発光比で標準化し評価する。校正照射には60Coγ線や90Sr-90Yのβ線、電子線が主に使用される。国内で137Csγ線源を校正照射に用いたTL法による検知試験を初めて実施するにあたり、標準TLD素子及び鉱物試料を用い60Coγ線源との比較検討を行った。

2.実験方法

  校正照射は、都産技研の60Coγ線源で0.5kGy/h、約2時間(CV:0.87%)、放医研の137Csγ線源で0.016 kGy/h、約64時間照射(CV:3.9%)を行った。線源によるTL測定の同等性評価にはTL装置の温度校正に使用するTLD100及びTLD800のほか、鉱物試料として標準鉱物類(Diomite、China Dust、Rhyolite、Bentonite、Dolomite、Kaolin等)、食品分離鉱物(香辛料から分離して、60Coγ線をあらかじめ照射したもの)を使用した。TLD素子ではピーク温度と積算発光量、標準鉱物類と香辛料分離鉱物は第2発光のピーク温度やTL発光比の相関について求めた。

3.結果・考察

  標準素子TLD100とTLD800に60Coと137Csのγ線を0.5Gy照射し発光ピーク温度を調べた結果、照射線源による差はなかった(表1)。積算発光量は137Csγ線照射した場合僅かに高くなった(表2)。13種類の既知の鉱物質(照射、未照射を含む)について60Coと137Csで求めた第2発光のピーク温度(図1左)及びTL発光比(図1右)は両線源とも高い相関を示した。8種類の標準鉱物について同様に求めたTL発光比を、繰り返し(n=3)のある二元配置による分散分析を行った結果、5%有意水準で有意差は認められなかった。また、精度よく校正照射した食品分離鉱物(12品目)のTL発光比も標準鉱物と同等の結果を与えた(図2)。

表1 TLD素子の発光ピーク温度の比較(n=10)、0.5Gy
TLD素子の発光ピーク温度の比較の表

表2 TLD素子の発光量の比較(0.5Gy:nC)
TLD素子の発光量の比較の表

標準鉱物質の発光ピーク温度とTL発光比の表
図1 標準鉱物質の発光ピーク温度(左)とTL発光比(右)

食品分離鉱物のTL発光比の表
図2 食品分離鉱物のTL発光比

4.まとめ

  137Cs線源は近接場照射のため線量のばらつきが60Coより大きかったが、発光ピーク温度(第2発光)及びTL発光比等の比較からTL法の校正照射線源としての137Csは60Coと同等であり、同等の試験結果を得ることができる。

 


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