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LED照明器具のEMC評価方法に関する一考察

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

枦 健一[発表者](電子半導体技術グループ)

1.はじめに

  温室効果ガスの削減による省エネへの国民の意識が高まる中、2011年3月11日に東日本大震災が発生した。震災の影響で原子力発電所からの電力供給源を一部失い、企業から一般家庭に至るまで節電は非常に大きな課題となった。身近な節電方法として、一般照明器具からLED照明器具への交換が注目されているが、LED照明器具は比較的新しい製品であり、性能の劣る商品も市場に出回っている。その理由の一つとして、法規制が追いついていない点が挙げられる。本稿では、一般照明器具に対する電気分野の評価方法を紹介し、その評価方法を蛍光灯とLED照明器具に適用し比較検討したので報告する。

2.規格の紹介

  電気分野の評価方法として、安全性、電気的基本性能及びEMC等の試験があり、表1は各EMC規格に定められている試験である。EMCとはElectro Magnetic Compatibilityの略で電磁環境適合(両立)性という意味であり、一般照明器具の規格として、国際規格のCISPR15、電気用品安全法(以下、電安法)の省令第1項と2項、日本規格のJISが挙げられる。電安法の省令第1項(第7章)は国内、第2項(J55015)は国外向けの規格である。ただし、LED照明器具に対する試験法が明確ではないため、一般照明器具に対する試験法(上述の規格)を参照した。

  • 高調波試験とは、消費電流波形をフーリエ変換した時の各高調波次数の電流値を測定するものである。
  • 放射エミッション試験とは、製品から放射するノイズを測定するものである。
  • 雑音端子電圧試験とは、電源線を伝導するノイズを測定するものである。
  • 雑音電力試験とは、電源線から放射するノイズを測定するものである。
  • LLA(Large Loop Antenna)試験とは、製品から放射する比較的低周波のノイズを測定するものである。

 表1 一般照明器具に関する規格対応表
一般照明器具に関する規格対応表

 3.試験方法

  本稿では、無作為に市場から蛍光灯Aの1種類と直管型LED照明器具BとCの2種類を購入した。実施した試験は、高調波、放射エミッション、雑音端子電圧、雑音電力である。LLA測定結果については本稿では省略する。いずれの測定においても安定化電源(CVCF)を用いて、試験品に100V/50Hzを供給した。また、高調波の規格値はJIS C61000-3-2を適用した。測定では、それぞれの試験品の電流値が安定するよう、通電して約10分後に測定した。放射エミッションと雑音端子電圧の規格値は、CISPR15のClassBで実施した。ClassBとは家庭環境を想定した限度値である。雑音電力は電安法の省令第1項で実施した。

4.試験結果

  蛍光灯をA、直管型LEDをBとCで示す。表2に蛍光灯と直管型LEDの電気的基本性能の比較表を示す。消費電力、力率、消費電流で比較した。直管型LEDは、蛍光灯と比べると力率が多少小さくなるが、消費電力は約1/3から2/3である。
  高調波はJIS C61000-3-2に基づいて高調波電流の規格値で判定すると、A蛍光灯はPassとなり、B,C直管型LEDではFailである。
  しかし、25W以下の照明器具の場合に規格では、消費電流波形および3次と5次の高調波電流値の計算が規定値内であればPassと判定できる。再確認したところ直管型LEDの高調波は2種類ともPassと判定できた。
  図1に雑音端子電圧測定結果を示す。A蛍光灯は0.2MHz以下で規格値を超える部分がある。直管型LED Bは0.03MHz以降の広範囲に渡って規格値を超えているのに対し、Cは規格値内である。
  次に、図2に雑音電力測定結果を示す。30MHzから120MHz付近の周波数帯でBが規格値を超えた。

 表2 電気的基本性能の比較表 
電気的基本性能の比較表

雑音端子電圧と雑音電力の測定結果のグラフ
図1 雑音端子電圧測定結果                                   図2 雑音電力測定結果

5.まとめ

  消費電力が良好でも、直管型LED照明器具の中には一般照明器具のEMC規格値をはるかに超える製品が見受けられた。このような製品は無線、ラジオ、TV等の放送波を妨害する可能性がある。そのため、直管型LED照明器具へ交換する際、省エネや節電のための消費電力だけでなく、ノイズ抑制された製品を考慮することも重要な選択要素である。

 


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