ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 成果発表 > 高周波伝送線路特性の最適化に関する研究開発

高周波伝送線路特性の最適化に関する研究開発

印刷用ページを表示する 更新日:2016年12月19日更新

藤原 康平[発表者]、小林 丈士(電子半導体技術グループ)、磯部 忠昭、竹谷 篤(理化学研究所 仁科加速器研究センター)

1.はじめに

  原子核物理学実験用に、荷電粒子の飛跡を高い空間分解能で捕らえる3次元読出し型ガスチェンバー(Time Projection Chamber: TPC)を開発する。この空間分解能の向上には、パッドで捕らえた信号を伝送する高周波伝送線路のクロストークが小さく、かつシグナル・インテグリティの高い事が要求される。
  以上を満足する高周波伝送線路の設計を電磁界および高周波回路シミュレータで行い、製作した伝送線路の測定評価を通じて所望の伝送線路を開発する。

2.実験方法

  プリント基板のシミュレーションモデルを図1に示す。Model 1はストリップライン構造、Model 2はマイクロストリップライン構造、Model 3は信号線間にグランド線を設けたモデルである。母材の厚さをModel 1では1.6mm、Model 2とModel 3では1.2mm、母材の誘電率を4.2、誘電正接を0.015、銅箔の導電率を5.8x108S/m、信号線の長さを36mm、周波数範囲10MHzから2.5GHzとしてモーメント法で電磁界シミュレーションを行った。図2にModel 3の電磁界シミュレーションの結果を示す。

電磁界シミュレーションモデルの断面図
図1 電磁界シミュレーションモデルの断面図

Model3の電磁界シミュレーションの結果
図2 Model 3の電磁界シミュレーションの結果

3.結果・考察

  立ち上がり時間10ns、立ち下がり時間10ns、パル ス幅50nsのパルスを与え、隣の線路に誘起するクロストークをシミュレーションした結果と、評価基板を用いてクロストークレベルを測定した結果を表1に示す。この事から、Model 3のプリントパターンが最もクロストークレベルが小さく、0.04%(実測値)で有ることが確認できた。

表1 クロストークレベルの結果
クロストークレベルの結果の表

4.まとめ

  シミュレーションおよび試作基板の測定の結果、Model 3が最も良い結果であった。これは、線間にグランド線と信号線の上下にグランド層を設けたので、励振された信号線から生じる電気力線が隣接する信号線へ到達しにくい為であると考えられる。本研究を通じ、高シグナル・インテグリティ、低クロストークのプリント基板の設計と評価の手法が確立できた。
  また、クロストークのシミュレーションにおける上限周波数を目的の周波数よりも20倍以上高く設定すると計算精度の向上が見込めると思われる。特にパルス波を扱う場合には、高次の周波数成分を含むので有効であると考えられる。

 


ページの先頭へ