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マウント剤について
印刷用ページを表示する 更新日:2018年1月5日更新
マウント剤は基本的に水を使用しますが、必要に応じて様々な溶液を使用します。例えば、顕微鏡で観察しながら繊維を溶解する場合には、目的の繊維を溶解するような溶剤をマウント剤とすることにより、繊維が溶解している様子を観察することができます。繊維に付着した異物を観察するとき、異物が水溶性の場合には、マウント剤として水は使用できません。
また、繊維の屈折率に応じたマウント剤を使用することにより、繊維を視野から消去することができます。例えば、混紡糸の片方の繊維を光学的に消去して、もう片方の繊維のみを観察したり、化学繊維中に練り込んだ物質を確認したり、繊維表面の異物を観察したりするのに応用できます。以下に異物の付着の観察について、マウント剤の使用例を写真で示します。
1)マウント剤を使用しないで観察したもので、繊維表面に異物の付着が観察できるが、全面にピントが合いにくい。
2)この試料を水でマウントすると、ピントは多少前面に合いやすくなるものの、異物は確認できなくなる。
3)そこで、マウント剤をo-ジクロロベンゼンにすると、異物が確認できるとともに、ピントも全面に合いやすくなった。また、繊維が透けて裏側もよく確認できる。これより、繊維表面には水溶性の異物が付着しているということが確認できる。
表にマウント剤と各種繊維の屈折率を示します。顕微鏡下で繊維を消去したい場合は、消去したい繊維の「屈折率Aと屈折率Bの平均」に近いマウント剤を使用します。
マウント剤と各種繊維の屈折率
マウント剤 | 屈折率 | 繊維 | 屈折率A※1,2 | 屈折率B※1,3 | 屈折率Aと 屈折率Bの 平均 |
---|---|---|---|---|---|
流動パラフィン | 1.47 | トリアセテート | 1.473 | 1.475 | 1.474 |
グリセリン | 1.473 | アセテート | 1.478 | 1.473 | 1.4755 |
レモンオイル | 1.48 | アクリル | 1.511 | 1.515 | 1.513 |
トルエン | 1.496 | ポリプロピレン | 1.528 | 1.488 | 1.508 |
キシレン | 1.497 | レーヨン | 1.543 | 1.518 | 1.5305 |
ツェーデル油 | 1.513 | ポリノジック | 1.551 | 1.513 | 1.532 |
サリチル酸エチル | 1.527 | キュプラ | 1.550 | 1.524 | 1.537 |
カナダバルサン | 1.53 | 毛 | 1.555 | 1.546 | 1.5505 |
2-フェニルエチルアルコール | 1.533 | ポリエチレン | 1.569 | 1.516 | 1.5425 |
サリチル酸メチル | 1.538 | ナイロン6 | 1.568 | 1.515 | 1.5415 |
o-ジクロロベンゼン | 1.549 | 絹 | 1.594 | 1.540 | 1.567 |
ニトロベンゼン | 1.55 | ポリエステル | 1.706 | 1.546 | 1.626 |
リン酸トリクレシル | 1.556 | 綿 | 1.582 | 1.537 | 1.5595 |
ブロムベンゼン | 1.560 | ||||
アニリン | 1.583 | ||||
1-ブロムナフタレン | 1.658 | ||||
ヨウ化メチレン | 1.74 |
※1 文献より抜粋。なお、複数の実験値があるものや範囲のあるものについては平均とした。
※2 繊維軸方向の屈折率
※3 繊維軸に直角方向の屈折率