都産技研を知る
仕事を知る
働き方を知る
選考情報
エントリー/
マイページ
職員インタビュー 本部

プロセス技術グループ I

最終更新日:2025年10月24日

“学び続ける”という選択—社会人博士課程進学で広がる可能性

「研究でものづくりを支える充実感」を得られる仕事がしたい

 修士課程で参加した産学官連携プロジェクトが、私の進路を決めるきっかけとなりました。ミストと木陰を活用して屋外に冷却スポットを作る取り組みで、企業や自治体など約10機関が参加する中、私は実験や評価測定を担当しました。このプロジェクトを通じて、大学の研究が産業に貢献していく過程を肌で感じ、「研究でものづくりを支える充実感」が得られる仕事に就きたいと思い、都産技研に入所を決めました。
 入所後は塗装分野で仕事をしています。塗装は多くの製品に関わる工程のため、お客さまの業種業態もさまざま。塗膜の付着性や硬さ、屋外環境での耐候性など、試験項目も多岐に渡ります。そのひとつが、金属材料やその表面処理の耐食性(耐さび性)を確かめる塩水噴霧試験です。
 塩水噴霧試験では、金属材料の表面に塩水を長時間噴霧し、「さび」の状態を評価します。従来の試験機では、試験中は噴霧により内部の様子が見えず、腐食の過程がわからないという課題がありました。そこで試験機メーカーと共同研究を行い、注水により一定時間ごとに内部を可視化し、観察できる試験機を開発。従来の試験方法では取得できなかった、腐食の進行過程に関するデータを得ることに成功しました。この試験機は既に製品化され、都産技研の技術支援業務でも活用されています。
 

研究員Iの写真

 

“知りたい”を追いかけて——博士課程という選択

 この塩水噴霧試験機の共同研究を通じて、さびに関する知見をさらに深めたいと考えるようになりました。「博士課程に挑戦する選択肢もあるのでは」と考えるなか、出身大学の恩師の退官が近く、退官前にもう一度指導を仰ぐ最後のチャンスだと思い、社会人博士課程への進学を決意しました。都産技研には博士号取得を支援する「大学院博士課程社会人入学派遣研修制度」があることも後押しになりました。
 この制度は、書類審査と面接を経て最終的な派遣が決定します。必要書類の中には、上司による推薦書が必要であり、また、業務の一環ですので、周囲の理解や協力は必要不可欠です。そのため、進学にあたっての業務計画を資料にまとめて上司や同僚に丁寧に説明しました。事前に相談していたこともあり、好意的に受け止めてもらえ、無事に推薦をいただくことができました。面接では、進学を希望する大学や、現在の研究の進捗、今後の見通しなどに加えて、「博士課程の取得を経て、都産技研にどのような貢献ができるのか」も問われました。当たり前ですが、博士課程取得自体が「目的」ではなく、あくまで支援や研究の質を上げるための「手段」のひとつだからです。
 現在は、都産技研の通常業務と並行して、大学院へ月1回のペースで赴き、実験やゼミに参加するほか、オンラインでも指導を受けています。多忙な日々ですが、隙間時間を見つけながら両立を心がけています。
 

大学院で後輩を指導する研究員I

 

博士号取得は通過点——その先の未来のために

 大学では「さび」という現象を理論づけることを目的に、シンプルな実験条件で基礎研究を行っています。大学の教授からは「研究の背景が“現場の生の声”であることが最大の強み」とよく言っていただきます。一方で、博士課程でさらに視点が広がり、「これは普段の業務に活かせるのでは」と思えることも増えてきました。レーザーを用いて噴霧の流れを可視化するなど、都産技研にはなかった発想が大学のディスカッションで生まれることもあり、日々刺激を受けているところです。
 現在は博士課程3年目を迎え、いよいよ博士号取得に向けて論文執筆を進めなければなりません。博士号取得後は、大学院で得た知見を支援業務に還元することはもちろん、恩師から学んだ「研究者としての生き方」も実践していきたいと考えています。研究のみならず、資金の獲得や、そのためのプレゼンテーションも重要な仕事のひとつ。博士課程ではこうした面でも学びになることが多く、今後は研究者としての総合力をさらに磨き、成長していきたいと考えています。
 社会人博士課程の修了はゴールではなく、新たなスタートです。この経験を都産技研にどうフィードバックし、中小企業の未来にどう貢献していくか——その問いに、これからも真摯に向き合っていきます。

研究員Iの写真

※インタビューは2025年度当時の内容です。

大学院博士課程社会人入学派遣研修制度(博士号取得支援)とは?

博士号取得を目指す職員の大学院博士課程入学を支援する制度です。必要要件を満たした在籍5年以上の職員を対象としています。派遣が決定した場合は、学費の一部を都産技研が補助します。本制度を利用して、多くの職員が採用後に博士号を取得しています。

プロセス技術グループってこんな部署

プロセス技術グループでは、製品の装飾、保護、機能性付与を目的とした、表面改質、めっき、塗装などの表面処理に関する技術支援に取組んでいます。また、表面創製や表面のトラブルシューティングなど、表面物性の計測制御に関する技術支援に取組んでいます。さらに、用水・排水分析や水処理技術など、事業所の環境対策などを見据えた環境負荷の計測制御に関する技術支援に取組んでいます。

プロセス技術グループについて詳しく見る

先輩職員プロフィール

I 副主任

機能化学材料技術部 プロセス技術グループ
2016年度入所

新卒採用

キャリア採用