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基調講演 講師インタビュー(5G・IoT)

印刷用ページを表示する 更新日:2020年10月1日更新
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一般財団法人インターネット協会理事長や複数の政府機関懇談会委員を務め、東京大学大学院数理科学研究科など多くの大学でも教鞭をとる株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO 藤原洋氏に、5G が与える中小企業へのビジネスチャンスや大企業から自立した新しい中小企業の在り方について伺いました。


――通信規格が4G から5G に替わるとなぜ中小企業にとってビジネスチャンスとなるのでしょうか。

藤原氏:大きくいえば、4G まで電波は携帯電話会社や放送局が使うもので、いわば「スマホのための通信インフラ」でした。今後はそれが「5G デバイスのための通信インフラ」に変わります。前者に比べて後者は49.5 兆円の電波利用産業の市場規模が見込まれており、産業の裾野が一気に広がります。これが中小企業にとって大きなビジネスチャンスとなるのです。

――5Gの活用が特に期待されている分野は何でしょうか。

藤原氏:主には「スマートシティ」、「ヘルスケア」、「スマート工場」、「コネクテッドカー」の4つです。

「スマートシティ」というのは、要は街づくりです。たとえば東京は今、5Gなどの最先端技術を活用し、都民が質の高い生活を送ることができる「スマート東京」の実現を目指し、東京都自らが旗を振ってさまざまな取り組みを進めています。

次の「ヘルスケア」は、医療機関にかかる前の健康管理ですね。5Gだからこそ進められるヘルスケアというのは、実はたくさんあるんです。たとえば、一日の歩数や消費カロリー、睡眠の状態などを監視して生活習慣の改善に役立てるウェアラブル端末やそれに関連するサービスは、すでに一般の人たちにも身近だと思います。高齢化で医療財政が逼迫していますし、予防医療の観点からもより期待される分野です。

藤原氏_画像――「TIRIクロスミーティング2020」では、中小製造業の皆さまが多数来場されます。主な4分野の3つ目「スマート工場」では、5Gはどんなビジネスチャンスを引き連れてくるのでしょうか。

藤原氏:最初に「5Gデバイスのための通信インフラ」とお伝えしましたが「5Gデバイス」とは、もっと端的にいえばセンサーです。つまり製造業においては、製造機械や制御装置、検査機器の各センサーが、5Gによって飛躍的に高感度・高精度になります。

それによって、たとえば組み立て工程や検査工程で“匠の技”に頼っていた部分も、センサーとロボットとAIでできるようになります。ロボットと聞くと自動車工場の産業用ロボットを思い浮かべますが、従来は、塗装と溶接が主で、匠の作業ではありません。5Gを使えば、8Kの画像センサーを使って良品と不良品をAIでチェックできるようになります。熟練工が持っている“匠の技”、人間の経験値をAIに利用することで、「熟練工の知恵を持った自動化工場」を造れるのです。

――「検査」と「組み立て」に課題を持っている中小製造業者は多いはずです。まずはそういった企業の課題解決に5Gが役立つのではないかということでしょうか。

藤原氏:そういうことです。中小製造業者に5GやAIを使った新しい事業を普及するハブの役割を担い、次世代製造業を盛り立てていくことが都産技研の大事な使命だと思います。しっかり取り組んであげてほしい。

――最後の「コネクテッドカー」については、どう考えればよいのでしょうか。

藤原氏:コネクテッドカーそのものは自動車会社が作るとしても、自動車産業は裾野が非常に広い産業です。たとえば自動運転を実現するにもいろいろなしくみが必要です。ドライブレコーダーだけでなく、障害物との距離や位置関係を精密に測るレーダーや、ほかにもさまざまな精密機器、精密部品、ユニットが必要で、その製造や検査を担っておられる中小企業が日本にはたくさんあります。それらの企業さんたちが5Gで底上げされれば、日本の製造業の強みを伸ばせます。

さらにいうと、これは自動車産業に限りません。山形県米沢市に海外PCメーカーのマザー工場がありますが、もともとは日本企業の工場でした。それを買収してマザー工場にして、完成した製品を海外の工場で大量生産しています。

今の日本の製造業に必要なことは、「世界の製造業のマザー工場になる」という意識と、それに向けた国内製造業の再定義だと思います。ここに関しては技術力のある中小企業こそ出番なのです。ぜひ5Gを活用し、自社の付加価値を高めて、大企業の下請け偏重でないビジネスを進めてほしいと考えます。


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